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外伝1話 仲間たちとの出会い


日めくりを千切る度に、甘い香りを漂わせた春の風から初夏を匂わせる薫風舞う季節へと移り変わってきた。

季節の移ろいゆく様は、どうやらこの世界も元の世界も違いはないように感じられる。


そんな違わぬ季節感とは打って変わり、この世界に転移してきてからは、見る物触れる物全てに理解し難いことが多すぎ、湧き出る疑問は到底尽きそうにもない。

しかし『郷に入れば郷に従え』ではないが、慣れぬ環境であってもそれに順応していかねばならぬし、その上、元の世界では経験したことも無い飛び切りの美人との同居生活・・・リズムは狂うわ緊張は解けないわで『しどろもどろ』しているのが現状だった。

だが、それが嫌な訳でもなく逆に嬉しい自分がいることが妙に可笑しく思えた。


そんな生活を始めて1ヶ月が過ぎようとしている。


冒険者ギルドに登録して間もない俺とアニーは掲示板の前で依頼書を眺めていた。

オールスキルMAXのハイヒューマンと言えど、何せスキルの発動の仕方から内容まで手探り状態であったが為、実質はその辺りの新人冒険者と何ら変わりはないわけで・・・『宝の持ち腐れ』状態は一向に解消されていなかった。

まぁ、厳密にはいなかったと言うより使う機会が無かった為、その努力と研究を正直怠っていただけなのだが。



「依頼こなして稼がないとだねぇ~・・・うぅ」


「そうですね~家賃代ぐらいは稼ぎたいですねぇ~あはっ」


「何か情けないけどさ、これが俺たちの現状だし・・・手頃なクエストを請けてみようか?」


「はい!」


そろそろ家賃代ぐらいは稼いでおかないと、伝家の宝刀『転移パック』も底を尽きかけたし、あとは自分の甲斐性で生活していかねばならぬ時期が迫って来ていた。

そんな中、為さねば為らぬ事は分かってはいたが、ただふたりして掲示板と睨めっこするだけで時間を無駄に流し続けた。



「なぁ~そこのおふたりさん!君たち駆け出しの冒険者なの?」


突然背中越しに声を掛けられ、俺はその声の主へと振り返った。

そこには同年代とおぼしき男性が笑顔で立っていた。


「あぁ!登録したてで、まだE級の駆け出しなんですよぉ~ははっ」


「そっかぁ~・・・実は俺も同じくE級なんだよ~~がはっ」


「そうなんだぁ~!依頼掲示板見ていたんだけど、適当なのが無くてさ・・・ふたりで思案していたところなんだ」


「よかったらさ~一緒にクエスト請けてみないか?」


彼はにこやかな笑顔を振り撒きながら俺たちふたりを見つめた。


「パーティークエストを?・・・」


「そうそう!実はさ~今3人なんだけど、あと2人パーティーに入ってくれそうな冒険者を探していたんだぁ~~ほら、あっちにふたり女性いるだろ?」


「うん・・・」


そう言葉にし、顔を待合ベンチに腰掛けている二人の女性に向けた。

その視線を辿るように俺もベンチの方を見つめた。

ふたりの女性は俺たちの視線に気付いたのか軽く会釈をする。


「彼女たちも掲示板眺めていたから誘ってみたんだ。良かったら一緒にやってみないか?・・・どうだろ?」


俺はアニーの顔を覗った。

何を請けようかと迷いに迷っていた俺にすれば『渡りに船』なのだが、アニーがこの申し出を受けたくないなら止めようと思っていた。


「アニーどうする?」


「ご主人さまにお任せします!」


「う~~~ん・・・」


「是非一緒にやろうやぁ~~みんな似た者同士だし、遠慮も気遣いも無しでやれそうだしさ!」


「そうだなぁ~何事も経験だし・・・やってみるかぁ~!ははっ」


「そうこなくっちゃ!!がはっ」


彼はとても嬉しそうに拳を握ったまま右腕を俺の方へと突き出した。

それに応えるかのように俺も右腕を伸ばしその拳に合わせた。



・・・・・・・・



それぞれが初顔合わせになった。

各々に笑顔で自己紹介をしていく。


《フローラ・バシュラール》

ダークエルフ:18歳♀(ウィザード)

ダークエルフ特有の褐色がかった肌に白っぽい髪が非常に似合っている彼女は、身長も男性並みに高く、その上肉感的なスタイルの良さは好色な男性の目を惹き着けそうな美人だった。

魔法使いと言えばローブ姿を想像するが、彼女はタイトな黒いロングブーツにスカートのように見える腰巻を装着しアクティヴな女性らしい格好をしていた。



《ローク・カートライト》

ヒューマン:21歳♂(騎士)

金髪に茶色の瞳。駆け出しの騎士らしく、厚くはないがそれなりの鉄素材でできた胸当てや肘当て、脛当てなど部分的に固めた装備をし、背中には中ぐらいの盾を背負っていた。

ひと懐っこいその顔は誰にでも好かれそうな感じを漂わせている。中肉中背でありながら前面でガード役の騎士を職業選択するぐらいなので責任感は強いのだろうと思えた。



《クロエ・ラウティオラ》

ヒューマン:18歳♀(神官)

栗色の髪に白をベースにした神官風ローブを纏っている彼女は、ヒューマンの女性らしく小柄ではあるが、愛くるしい笑顔を浮かべるその顔はとてもチャーミングで可愛い。

見た目どこか良家のお嬢様っぽい匂いを醸し出し、たぶんフローラとは別の意味で・・・ロリ系の男性にモテ囃されそうな感じがする。ローブに杖に神官帽がとてもマッチングしていた。



《アニー・ベルハート》

エルフ:17歳♀(狩人)

金髪蒼眼・・・背は高くもなく低くもなく、俺と横並びするのに丁度合う身長。さすがに美形揃いのエルフ族ではあるが、その中でも飛び抜けているのではないかと思わせるほど美しい。

特に嬉しいと耳をピクピク動かす仕草が俺の心を鷲掴みにしてしまう。白い肌を覗かせる手足はすらっと長く美しく、見た目華奢に感じられるスタイルは全く以って俺好みであった。

後ろで束ねた長い髪もステキだ。

まぁ~彼女のことは・・・まるごと全部大好きというのが正解なんだが。



そして・・・

《ショーヘイ・クガ》

ヒューマン(ハイヒューマン):20歳♂(魔法剣士)

黒髪黒眼・・・日本人そのものである。

30歳が時空の歪みの中でタイムスリップして容姿は20歳にはなっているが、脳内思考は30歳のままである。

その上、ハイヒューマンでありながらMAXスキルを使いこなせないド素人冒険者ではあるが、身体能力だけは上限値を超越しているので、戦闘に関しては何とか対応できるような気もする・・・するが、未経験である為、不安満載であることには変わりない。



「よぉ~し!みんなよろしくなぁ~!!がはっ」


「よろしくなり~♪うひっ」


「よろしくお願いします」


「よろしくです~」


「宜しくです!・・・それでさ、どんなクエストをこのメンバーでやるの?」


「バサラッド近郊の森でイノシシ狩りをやろうかと・・・『ワイルドボアー20頭狩り』クエストなんだけどどうかな?」


「それって、狩るとその肉もギルドが買い取ってくれるから二重に美味しいクエストだよね?・・・それイイかもぉ~きゃは」


フローラはどこかで聞き齧ったのか、そんな情報をみんなに流す。

確かに旨いクエストだとは思えたが、そんなに大量に一度に出没するものかと疑問も浮かぶ。


「そうなんだぁ~~でも20頭も狩れるのかな?」


「いや1日では無理だろうけど、クエスト期限は7日あるから・・・何とかなりそうじゃねぇ?」


「なるほど・・・了解した!」


期限内猶予クエストであることに納得できた。1週間あればこなせそうな数かも知れない。


「みんなの準備がイイなら今日からでもスタートしたいんだけど・・・どうかな?」


「了解!!!」


みんなはロークに一斉に返事をした。



・・・・・・・・



みんな勇んで森の中をワイルドボアーを追いかけ回すも、新人冒険者にはなかなか手強い。

さすがに猪突猛進してくる猪ほど怖いものはない。クロエもアニーも怯んで逃げ惑う・・・その姿を見ると笑みが零れる。


ロークはまともに突進を受け止めて、あべこべに踏み倒されていく始末・・・フローラは賢く木を盾に火弾を打ち込む。

それでも低Lvの新人冒険者の攻撃程度では簡単に倒れてくれない。


俺は身体能力を活かして、アニーの影縫いで足の止まったボアに横から飛びかかる。

少しスキルを試してみようかと剣に魔法を付与してみるも、斬りつけた途端・・・猪どころか剣が木っ端微塵に砕け散って面食らった。

そんな本人たちの必死さも、他人から見れば滑稽にしか映らないお笑いのドタバタが続いた。


「痛てぇよぉ~~~!クロエさんヒールを~~」


「もう剣のストック無いんだけど・・・うぅ」


「素手で殴りなさいよぉ~きゃはは」


「あぅ・・・」


「今日はこの辺で許してやるなり~・・・ププップ」


みんなボロボロの姿で初日を終えた。

予備知識も持たずに臨んだものだから倒せたのは3頭だけだったが、こういう気持ちの良い汗は掻いてみるもんだ。



その後、2日目、3日目、4日目・・・四苦八苦しながらも徐々に慣れてきたのか狩れる頭数も順調に増えてきた。

そして期限2日残しの5日目に、ようやくクエストを達成することできた。


「みんなお疲れさま~ふぅ~~~ぅ」


悪戦苦闘したことは事実だが、やり遂げたという達成感はそれなりに味わえた。

そして・・・全員がこのクエストをやったことで学習したことがある。






『イノシシ舐め過ぎてたぁ~~~!』


この仲間となら次回も一緒にやってみたいと思う・・・


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