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第57章 見立て違い


扉を開けて中に入ったレイドパーティー4組24名。

薄暗い広間に明かりが灯ったと同時に後方のドアは堅く閉ざされた。


「ヤバイ!!」


デュロイがいち早く声を上げた。

全員の視界へと『ケルベロス4体』が飛び込んで来た。

想定外の取り巻き数に半パニックになる者もいた。

生死を賭けた『命のやりとり』だ。安全マージンが一変して危険度が倍増した状況に陥ってしまった。

2匹が4匹・・・焦っても不思議ではない。


「焦るなぁ~!ボスに触らぬように遠距離からケルベロスに各隊タゲ取りして引き付けよう~!」


俺は半パニックになってる全員に指示を流した。

茫然と立ち竦む各隊を横目にうちのパーティーは素早く行動に移る。


「こっちは一番右端を倒すぞ。アニー~~初撃でタゲ取ってくれるかぁー!」


「アニー了解しました!」


その声に正気を取り戻した各隊も動き始めた。


「フレッド隊もケルベロス処理頼みます~!」


「もちろん、了解だ!」


デュロイとフレッドが頷き合う。

全員が臨戦態勢に入ったものの、鎮座するミノタウロスが気になる。刺激しなければ動かない・・・そうであることを俺は祈った。


アニーの放ったアローショットが3つの首を持つ異様な大型犬に見事に当たった。

その異様な大型犬はその攻撃に釣られるようこちらへと突進してきた。


「よ~~し、俺が止めるから~~パウラとショーヘイ続いてくれ!」


「パウラ了解なのです~!」


「フローラ範囲は撃つな。バーニングバレット撃てる準備しておいてくれ~クロエ防御力増加支援を~!」


俺はそう声を掛けるとロークに続いた。


「フローラ了解!」


「クロエ了解なり~」


クロエは即座に短縮詠唱で杖をロークへ振る。

俺たちは突撃してくるケルベロスを迎え撃つための態勢を整えながら走りだした。


デュロイ隊もフレッド隊もダリオ隊も・・・それぞれが各個撃破に向け攻撃を開始した。


「唾液は猛毒があるぞぉー!振り掛けられると麻痺するから注意ーーー!!」


フレッドが叫んだ。

全員がその忠告を耳にし頷いた。


攻防は続く。さすがに『冥界の番犬』と称される魔物だ・・・簡単には倒れてくれない。

だが、この手の魔物に関しては・・・うちのパーティーメンバーには経験があった。レルネール村の『ヒュドラ』である。

猛毒ガスか唾液毒の差はあるが、複数の首を持つ魔物の対処方法は何となく呑み込めている。


ロークが正面からバッシュを発動しながら大型犬を受け止めた。

左右の首が受け止めたロークに噛みつこうと牙を剥いている。

パウラが高速で左側のその首に斬りかかると同時に俺は右側の牙を剥く首へとスラッシュを叩き込んだ。

ケルベロスの足が止まった瞬間3人は一旦下がる。


フローラがバーニングバレットを足の止まった大型犬へと撃つ。

アニーも同時に同じく弓を引き絞りマグナムショットを放つ。


俺はその攻撃の間に他パーティーの攻撃状況を見た。

さすがにCクラスだ抜け目なく対応しているようだ。

ふとボスを見た時、鎮座した椅子から立ち上がろうとしているのが目に入った。


ヤバイ!取り巻き処理を早くしないとボスが絡んでくる・・・


ケルベロスはフローラとアニーの攻撃に怯んだ。少し下がりだしたところに再びロークが斬りかかりながらバッシュを浴びせる。

俺とパウラは躊躇ちゅうちょなく先程斬りかかった首へと再度攻撃を重ねた。

そしてまた3人は一旦引く。

クロエの攻撃力増加支援を受けたフローラとアニーのショットが撃ちこまれる。

異様な大型犬は完全にその場に釘づけになった。


手際の良さは4組の中でもピカイチだと思える。

クラスはC級と言えど中身はハイヒューマンと隠れハイエルフ、そしてクラス以上に実力のある仲間たちだ。


「次で決めよう~~!」


俺はのっそりと立ち上がったボスを横目にみんなにラストアタックを指示した。

その時、中央で戦っていたフレッド隊とその両隣りのデュロイ隊、ダリオ隊のケルベロスがよろけて距離が狭まった。

効率を考えたのかフレッド隊の魔術師のエミリアが広範囲魔法を撃ってしまった。

その範囲に・・・動きかけたミノタウロスが入っていた。


刺激を受けたミノタウロスがフレッド隊目掛けて突進しだした。

俺たちはその状況に気付かず、目の前の1匹を倒すのに必死になっていた。


「ローク、パウラ離れろぉ~~~!」


「うっしゃーー!」


「ショーヘイさん頼むのです~!」


俺はアイテムBOXから両手剣を呼び出し『バーサーカーストライク』叩き込む準備をした。

取り付いていたロークとパウラが両サイドに離れた。


俺は助走を付けながら足の止まったケルベロス目掛けて飛びかかった。

真ん中の首から胴体へと斬り抜く。


ズガッ、ズゴズゴ~~ズゴォーー


地面に剣が刺さるぐらいキレイに一刀両断できた。

ケルベロスはその場で両側に斬り裂かれた体を横倒しにし・・・そして爆発するかのように消えた。


ドゴォ~~~ン ボンッボカン



「よっしゃーーー!ショーヘイ~~ナイスだぁー!」


ロークの歓喜の声もその瞬間だけだった。

フローラもアニーもクロエも他のパーティーの状況に、唖然とした顔つきで釘づけになっていた。



・・・・・・・・



中央から左サイドは悲惨な状況になりつつあった。

ミノタウロスに気を取られた面々は削り切ったケルベロスまでにも唾液攻撃され麻痺者が数人出ている。

パニック状態に輪を掛けるようにミノタウロスは足の止まった者から怪力で薙ぎ倒していく。


「ローク、これヤバいぞ!完全に体制が崩れている!!」


「クロエ~~~~負傷者にヒールを頼む!アニーちゃんとフローラは瀕死のケルベロスに攻撃を!」


ロークは俺の言葉に状況を振り返り、みんなに指示を飛ばした。


「了解!!!」


「パウラ~~俺と隣のダリオ隊のケルベロスに仕掛けよう~!」


「パウラ了解なのです!」


俺とパウラは手と足の止まったダリオ隊担当のケルベロスに斬りかかった。

ダリオ隊の面々もそれを見て、少し正気に戻ったかのように攻撃体勢を取った。


「すまない~ショーヘイさん!」


「お互いさまですから~!それより麻痺した方を後方へ!!」


頭を下げるダリオに俺は足を止めることなく大型犬に飛びかかっていった。

パウラが右端の首に斬り込む、それを見て俺も同じ首へとスラッシュを掛ける。首が1本落ちた。

それを見たダリオが凍結魔法を掛ける。俺とパウラは折り返し、そしてダリオ隊の盾士ヴァイツが正面から凍ったケルベロスに斬りかかった。

ケルベロスは為す術なくその場で氷が弾けるように飛散して消滅した。

残るは・・・ミノタウロスとケルベロス2体。


デュロイ隊とフレッド隊はミノタウロスとケルベロスの攻撃を受け、ものの見事なまでに体制を崩していた。


「アニー~~、フローラ~~ケルベロスのタゲを取ってもらえるかぁーー!」


「アニー了解です!」


「フローラ了解!」


「ローク~~ミノタウロスのタゲを!このままじゃ壊滅するぞ!!」


「合点任せろ!!」


アニーは弓を引き絞りアローショットをデュロイ隊のケロベロスへ、フローラはバーニングバレットをフレッド隊のケルベロスへピンポイントで攻撃を仕掛けた。

2匹のケルベロスは威力ある攻撃を受け、視点を攻撃が飛んできた方向へと移した。

怪力で薙ぎ飛ばしているミノタウロスの正面へとロークとダリオ隊のヴァイツが取り付いた。

2人ともバッシュで押し戻そうとする。倒れていたフレッドもそれを見て起き上がりミノタウロスへ向かっていった。


俺とパウラはケルベロスのタゲをアニーとフローラから受け継ぐ為にすかさず走り出す。

ダリオは中間地点に立ち魔法攻撃の準備をする。


麻痺して倒れた者たちを動けるデュロイ隊とフレッド隊、ダリオ隊の面々が後方へと引き摺り下げる。

クロエは忙しそうにヒーラーから解毒呪文を掛けていた。

ロークはミノタウロスを盾で押し戻しながら吠えた。





『ここは何が何でも耐えろぉーーー!』

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