第56章 レイドクエスト
『白き牝鹿亭』の今夜の集まりは、いつもと異なるメンバーの構成になっていた。
ロークの希望を取り入れ、うちのパーティーもC級クラスではあるが『レイドボス』にチャレンジしてみることにした。
今夜は、それに参加する各パーティーからの代表3名が顔合わせと打ち合わせに席を囲んでいた。
年の頃を見る限り、みんな似たような者ばかり・・・一番冒険に熱が入っている年代なんだろう。
うちからは、リーダーのロークと女性リーダーのフローラ、そして俺の3名が出席していた。
『牛頭人身の怪物と番犬』C級限定【レイドクエスト】
レイドボス:ミノタウロス
出現魔物:ケルベロス(中ボス)、ファングドッグ、ウォーウルフ、コボルト
参加人員:レイド(連結)パーティーは4組(24人)までとする。
今夜ここに集まったのは同じくC級クラスの4組だった。
先日来の「冒険者ギルドの改編」により、この手のクエストは相当クラスしか請けられなくなっている。
以前なら下位クラスも請けられていたが、被害続出の為ギルド側の危惧により現在は不可になっているようだ。勿論、遊びではなく『命のやりとり』な分けで、被害も甚大になると『死』に直結してしまう。
それを裏返せば、我々もこの手のB級クエストは請けられなくなったとうことではあるが・・・
「デュロイさん、ボス部屋まではこのレイドなら難なく行けると思うが・・・最後どうするんだぁ~?」
ロークは今夜の打ち合わせを取り仕切るデュロイという男性に訊ねた。
デュロイはロークの問いに資料をアイテムBOXから取り出し席を囲む全員に提示した。
「このクエストは以前死者も出ている危険なクエストだが、B級昇格にはやっておかなければいけない必須クエストである。今回参加してくれるパーティーの職業を資料にしているので参考にして欲しいのだが・・・」
前衛職:6名
中衛職:14名
後衛職:4名
「大まかではあるが、職業を基に別けるとこういう形になる。勿論、前衛としているのは盾持ちのだけの人数だと思って欲しい。あと後衛職はヒーラー主体の人数になっている。他の攻撃職はここでは中衛と見なしている」
デュロイの説明に、大柄なフレッドという他パーティーのリーダー格的な男性が言葉を挿んできた。
「・・・ということは各個パーティーで戦闘を仕掛けるのではなく、職業考慮の上でレイドパーティーとして組み直すってことか?」
「死者も出ているクエだし、そうするのが良いでのはないか?」
フレッドのその言葉に、もうひと組のパーティーのリーダー格らしきダリオというエルフの男性が口を開いた。
「うむ~~そんな急造で連携が取れるのか?・・・みんなC級だし戦闘は馴れているだろうけどさぁ~その辺りどうなん?」
「うん。みんなに今夜集まってもらったのは、その辺りの話を詰めておきたかった分けなんだ!」
「う~~~ん・・・」
ローク、デュロイ、フレッド、ダリオ・・・各パーティーのリーダーは唸りながら腕組みし、眉間に皺を寄せた。
そんなリーダーに同行した代表の面々もそれぞれに思案しているように見受けられた。
「これさぁ~過去の例なんてないのか?それにギルド受付によくある攻略手引きみたいなのは参考にしないの?」
俺は静まり返ったそんな空気の中、リーダーたちの顔を見回しながら口にした。
「そうなんだけどなぁ~~それが有効なのはボス部屋までなんだ!ボス部屋内はどうもランダムで何かしら変化しているようで絞ってしまうと危険もあるわけよ!」
「なるほど・・・でもある程度は知識として持っていないとヤバイだろ?それにどうパーティーを編成して臨んでいたのとかさ・・・」
「ショーヘイさんの言うことも最もだと思う!・・・まずは各個仕掛けかレイドとして組み直すかを先に決めてから攻略を考えましょう!」
デュロイがどうやら今回のレイドクエストの企画者のようだ。
「スイッチを前提に考えるなら、2パーティーが攻撃中に残り2パーティーが補給とかでもイイんじゃない?」
フレッドのパーティーの如何にも魔術師という風体のエミリアという女性が意見を述べた。
馴れたメンバー主体でやって行こうというのも最もな気がする。
敢えて組み直しをしても連携が上手く取れるかと言えば急拵えでは余計に混乱する怖れがある。
「過去の例をみるに・・・レイド組み直しも各個撃破でも相応クラスならクリアできているようだ。ただ下位クラスの挑戦は悲惨な結果を招いているみたいだけど!」
「どちらにせよ、相手を舐めるとヤバイってことだなぁ~」
「そうだな~そういう事なんでしょう!」
エミリアの提案にデュロイ、ローク、ダリオがそれぞれに反応した。
「俺は・・・今回のレイドボス戦は、うちのエミリアの言う通り各個パーティーで仕掛けるのが連携を考えたらイイと思うぞ!」
「まぁ~急造で上手く連携が取れるかってのも疑問だし・・・今回はみんな初めてだし、各個仕掛けでいいかも知れんなぁ~」
「ただ確定している事項だけは確認しておこう!ボス部屋はミノタウロスと取り巻きのケルベロスが2体・・・これは揺るがないが、何がランダムなのかは予想できない!!」
「では定石通りと想定して、ボス部屋に突入する前に状況を見ながら再度確認はするが、とりあえずミノタウロスにはデュロイ隊、フレッド隊が最初取り掛かり、ケルベロス処理をローク隊とダリオ隊でお願いすることでどうだろう?」
デュロイはみんなの意見を取りまとめ、攻略の手順を説明していく。
ダリオもその意見に頷いていた。
「今回はそれでやってみましょうか・・・」
「よっしゃーーーー!今回は各個仕掛からスイッチしていくことで攻略しようやぁーー!」
そんな脇で、ロークはスクッと立ち上がり、参加代表全員の顔を見回しながら締め括った。
「了解!!!」
俺とすれば一番心配なのがアニーの異常『覚醒』だった。
できれば組み直しするよりも身近でアニーを視界に捉えておきたいってのが正直な気持ちであったから、今回の各個仕掛けに決まったことはどちらかと言えば申し分なかった。
・・・・・・・・
『白き牝鹿亭』で打ち合わせをした3日後、ミノタウロスの鎮座する『迷宮神殿』に向けて出発した。
冬とはいえ、南方に位置するダンジョンであったお陰で雪に悩まされることなく移動はできたが、さすがに吹き荒ぶ風は冷たかった。
「それでは今から神殿内へ突入する。攻略開始だぁ~!」
「よし、みんな気抜くなよー!行くぞぉーーー!!」
デュロイの言葉にロークは気勢を重ねた。
冒険者ギルドとすれば『安全マージン』を十二分に考慮した改編だったのだろうと思う。
俺たちは神殿内に出没する無数の魔物を相手にパーティースイッチを繰り返しながら難なくボス部屋前まで辿り着いた。
ここまでは順調過ぎるぐらい順調に来れた。
ボス部屋前の安全地帯に全員が集まった。
負傷らしい負傷もなく、誰も彼もが安堵感とともに笑みを零していた。
「ここからが真の正念場だ!各自補給を済ませたらボス部屋に突入するぞぉ~!!」
「その前に最終確認しておこうか?・・・」
「そうですねぇ~・・・」
デュロイとフレッド、ダリオにロークが最終打ち合わせに膝を付き合わせた。
「これまでの資料を見るに・・・ミノタウロスは奥に鎮座。ケルベロス2体は番犬として手前左右に位置しているもの思われる」
「なら打ち合わせ通り、ボスに最初に取り付くのはデュロイ隊とフレッド隊、右のケルベロスにローク隊、左にダリオ隊の段取りでお願いする!」
「こんなこと考えたくないけどさぁ~~~もしランダムにケルベロスが3体いたらどうする?」
「うむ・・・絶対に無いとは言い切れぬな!」
「その場合はデュロイ隊が対処する。フレッド隊はミノタウロスのタゲを取って欲しい。できるだけ早急にケルベロスを各個撃破するしかない!」
いろんな事態は想定しておかねばならない。
だが、扉を開けてしまわない限り中の状況を知り得ることはできない。
『扉を開けるぞ!みんな臨戦態勢で宜しく~~!!』




