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第25章 最前線燃ゆ

ビシッ

バシュ、ボ~~ン


アニーの初撃が左側木の上に陣取るゴブリン一体を射落とした。

続いてフローラがバレットでその隣のゴブリンを撃ち落とす。

右側の3体は数的優位な兵士5人が遠巻きに木を取り囲み弓矢での攻防戦になっている


正面から突撃してくる10体ほどのゴブリンがマリナのいる中央を目指して雄叫びを上げる。

まず左脇から飛び出したロークが1体を止めた。その後ろから至近でアニーとフローラが撃つも仕留めるには至らない。


ゴブリンは足を止めずエリア中央へ突撃してくる。

マリナは護衛に守られながら剣を抜いた。

両脇はおとりで本隊は中央突破なのか?・・・俺はそんなことを考えながら、マリナの近くから威力増強の炎弾を先頭を走るゴブリンへ放った。



ボォン、ボォ~~ン



炎弾に倒れる先頭を脇目に足を止めないゴブリン・・・たぶん、変異体からの指示は中央の守られた人物への襲撃なんだろう。

どこを攻めればこちらが動揺しやすいのか判っているかのような動き。

これは厄介な奴が控えてるなぁ~・・・俺は相手の戦法の的確さに顔をしかめた。



アニーとフローラはやり過ごしたゴブリンの背後へと攻撃を仕掛ける。

ロークは止めた1体のゴブリンを正面から両断するように斬り下ろした。


中央を狙われたと察知した左側兵士3、4名が慌ててマリナのいる中央へ駆け寄ろうとした。


「みんな持ち場を離れるな!王女様はこちらで守る!」


「そうじゃ、持ち場を離れるな!少なくなった所から新手が来るぞ!!」


マリナも俺の声に反応するかのように、こちらへ向かおうとする兵士を諫めた。

ゴブリン8体がマリナを取り囲む護衛5人へと取り付いた。


「クロエ、防御力アップ魔法を範囲で行けるかぁ~」


「任せるなり~~」


俺は護衛5人をすり抜けた3体のゴブリンの足を止めるべく攻撃体勢へと移った。

マリナは飛びかかってくるゴブリン1体の顔面から抜刀した剣を斬り下ろした。

俺はそれを脇目に・・・1体を火球でノックバックさせ、そのスキにもう一体をバッシュで斬り裂いた。



「アニーちゃん、フローラ嬢は前方と左右を警戒しくれ~」


ロークは二人にそう言うと、後ろを振り返り、護衛に取り付いているゴブリン目掛けて飛びかかって行った。

アニーとフローラは攻撃体勢を崩さず、その場で待機しながら前方からの新手の出現に警戒の手を緩めなかった。

ロークが離れたのち、遅れた2体のゴブリンが揺さぶるように中央とは逆の脇へと動く。アニーとフローラは、落ち着いて範囲足止めしたその2体を物の見事に撃ちぬいた。


攻防の続く中央のエリアでは・・・

マリナは斬り下ろした勢いで尻餅をついていた。

火球でノックバックされたゴブリンは体勢を立て直し、その尻餅をついたマリナ目掛けて再び突撃を始めた。


ヤバイッ!

俺は近くいるマリナをかばうように抱きしめ、そのまま横へ転がりながら回避した。


「クロエ、王女さまにバリア頼む!その後補給を忘れるなぁ~!!」


「クロエ、了解!」


ゴブリン1体を処理した護衛の一人が、王女が避けた方向へ突撃先を変えたゴブリンの正面へと回り、身を挺するように立ちはだかった。



ズブッ



護衛は左わき腹へともろに剣を突き刺された。

顔を歪めながら崩れるように膝をつく・・・


「クロエ~~~ハイヒール行けるかぁ~?」


「大丈夫、まだイケるなり~!護衛さんは任せて!!」


俺は短時間バリアの掛かった王女をその場に残して、そのゴブリンへと駆け、『バーサーカーストライク』で有無を言わさず一刀両断した。




・・・・・・・




「これ、けっこうキツイなぁ~・・・」


「そうだなぁ~~休ませてくれそうにないなぁ~」


索敵には前方50Mメルカに20体の新手のゴブリンが確認された。

今度も狙いは中央突破のようだが、囮の2~3体が両サイドへ動いている。


チッ・・・


したたかな敵に俺は舌打ちをした。



「どうもわらわをターゲットにしておるようじゃ・・・」


「そんな風に見えますね~・・・」


「頭の切れる変異体が指揮していると見といた方がいいなぁ~!」


「そうだなぁ~」


王女を狙うのは、我々が森に入った時点から護衛に守られて歩く姿を斥侯より情報入手していたんだろう。

エリアに散開する兵士を数体で釘づけし、本隊はピンポイントで中央へ攻撃を仕掛けてくる・・・誰を倒せば混乱するかをわかった上での行動だろう。

かなり知恵の回る変異体がいることは確かだ。

俺たちはすぐさまポーション補給をし、新手の襲撃に備え立ち上がった。



正に動きかけたその時、幸運なことにCエリアの後詰であるJ隊が後ろから追いついて来てくれた。


「姫殿下、ご無事でしたか?」


「何とか生きておる~・・・」



王女から簡単な状況を説明されたJ隊の隊長は、俺たちと入れ替わるように前面から進軍してくるゴブリンへと向かって行った。

王女は中央突破を図ろうとする敵に、先ほど無傷だった左手の兵士をJ隊に追従するように命じた。

そしてケガをした者も含めC隊にしばしの休憩を促した。



「ショーヘイ殿と申されたな・・・かばって戴きかたじけない」


「それを言われるなら、身を挺された護衛の方かと思いますよ~」


「そうじゃった。だが・・・ありがとうと言わせて欲しい・・・」



前方にいたアニーとフローラがJ隊と入れ替わるように休憩場所へと戻ってきた。


「フローラもアニーもご苦労さま~!」


「ご主人さまもお疲れさまでした~あはっ」


「まだ終わったわけじゃないから~それはちょっと早いかな?ははっ」


俺たちのやり取りを見ていた王女が急に口を開いた。


「ご主人さまと?・・・アニーさんはショーヘイ殿とどのような関係なのじゃ??」


「姫様~それを語ると長話になります故、この掃討戦が終わった後にお聞きになられた方が宜しいかと思われますが!」


フローラは笑みを浮かべながら興味を抱くマリナへと忠告した。


「そうであったな・・・すまない」




その後、俺たちはJ隊と合流して小競り合いを繰り返しながら集結地点を目指した。




・・・・・・・・




全部隊が「ゴブリン巣窟」前に集合できたのは昼過ぎとなった。

今回、相手もどれだけ動員しているのか判らないが、朝から戦い詰めで前進してきた部隊は疲弊が凄まじかった。


我々のCエリアは、後詰のJ隊との合流が早かったため難を逃れたが・・・

同じ前線として出撃したAエリアとBエリアは、後詰隊との連携が遅れた為かなりの被害が出たようで、治癒専門として参加している神官系やプリースト系の救護班は大忙しだった。




「皆の者、ここまでご苦労であった。あと残すは完全勝利のみである!皆の忠誠と勇敢なる働きに祝福を!!」


「おおーーー!!」


本作戦の最高司令官として参戦している第二王子のアルフレッドが全員の前に姿を現しげきを飛ばした。

王子の檄は効果絶大だ。兵士はみんな疲労の中にあっても、檄に応えるかのよう自分自身を奮い立たせた。

王子と入れ替わるように傍らに立つ参謀が続いて作戦指示を与えた。


「最前線で戦ったA,B,C隊は後詰として待機!巣窟への突入は被害が極少であるF,G,H,I隊を以って行うものとする!」


「D,E,J隊は2番手として準備しておくように!しばし交代で休憩とする!!」


F,G,H,I隊はどうも戦功が稼げなかったようで、巣窟突入を自ら志願したようだ。

やはり、王子や王女の目の前で点数稼ぎがしておきたいのだろう・・・どこの世界も同じなんだと思ったら急に可笑しくなった。








不味まずいが仕方ねぇ~し・・・携帯食でも食っておくかぁ~!」

ロークは仲間の顔を見回しながら苦笑いを浮かべた。



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