表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
陽は昇るか  作者: 桜音
2/12

第1話

離宮から見える景色はいつもと変わりはない。

ただ今日は一段と風が強く、森がざわざわとしていた。

王女はその様をじっと見つめていた。

背に流した艶やかなダークブラウンの髪が風に攫われるのも気にも留めず。

ほっそりとした体に暗い色のドレスを纏い窓辺に立ち尽くす王女の姿はいやに儚げである。

暫くして、王女は長らく使うことのなかったベルを手に取って、おもむろに鳴らした。

侍女は程なくして現れた。

「お呼びでしょうか?」

「ええ。心してお聞きなさい。この国は隣国の手に落ちようとしています。時間がありません。こちらにもそのうち兵が来るでしょう。あなたは離宮にいる者たちを連れてここを離れなさい。城下まで行けば追手は来ないでしょう。」

「っ」

「今までありがとう。あなた達がいてくれて助かりました。」

「殿下は、どうされるのですか?」

「私はこちらに。」

「なりません!どうかご一緒に…!」

「私には帰る場所などありません。」

「それでも…!」

「私の居場所はここなのです。」

穏やかに微笑む王女の、グリーングレーの目は確固たる意志を宿していて説得は不可能であることを侍女は悟る。

「お行きなさい。」

侍女はじっと王女を見つめていたが、暫くして深々と一礼をするとその場を後にした。



「報告します。国王は既に他界しておりました。王妃は捕縛しておりますが、いかがいたしますか?」

「そうか。王妃は始末しろ。」

「はっ。」


「良かったのですか?」

「ああ。状況的に王妃を生かしておくことは出来まい。」

「まあそうですな。」

「相変わらず食えぬ奴だ。」

「ほっほっ。滅相もございません。さて、こちらも片付きましたし、これで制圧完了ですかな、総指揮官殿。」

「いや、まだだ。」

そう言って、総指揮官と呼ばれた男は、血塗れのマントをはためかせ踵を返した。



「こちらは王宮とはまた少し違う趣がありますな。」

「ああ。」

「しかし、誰も居りませんな。」

「静かなものだな。あれが最後の部屋か。」

「そのようですな。」

男らは部屋の前まで来て立ち止まった。

いつの間にか二人の眼光は鋭くなっている。

総指揮官の男の目配せを合図にもう1人の男が取っ手に手をかけた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ