プロローグ
偉大な功績の後ろには影の立役者の存在があったりするものだ。
アダン歴96年
魔族及び魔物がアダン国内に出現する。(魔族と魔物に血縁関係はない)
それと同時に、勇者と呼ばれる武術や魔術に特化した人間が現れ始める。
アダン歴198年
首都ミナルの東方に住まう魔族の族長。
第3代勇者とその仲間により討伐。
これにより、アダン国の人々は東方へと可住領域を広げることになる。
アダン歴302年
首都ミナルより遥か北にある魔王城に第4代勇者が単独で到達する。
魔族に行く手を塞がれながらも、勇者はそれを薙ぎ倒し突き進んだ。
と、帰還した勇者は報告している。
今まで、魔族の族長を倒したにもかかわらず、魔族の強大な力に負けている人類は、魔王城の発見を機に、次々と討伐隊を送り出すこととなる。
これは、人類にとって魔族の王、魔王に直接手を下すチャンスを得たということであり、それをもたらした第4代勇者は勇者の中の勇者《英雄》として、崇められた。
アダン歴356年
ついに魔王を倒す。
この魔王は1代目魔王とされた。
この魔王は比較的温厚な性格だったと、捕らえられた魔族が話している。
1代目とされていることからわかるように、魔王は子孫を残しており、2代目、3代目と代々続いていくこととなる。
さすがに、人類も魔族の一族を根絶やしにするような力は持っておらず、この先も魔族と人類の戦いは続くのだった。
しかし、人類が魔王を倒せることを証明したことに変わりはなく、現在(アダン歴372年)人類と魔族の力関係は、均衡していると言える。
しかし、最初に言ったように、偉業の裏には、影の立役者がいるのだ。
まず、人類が初めて倒した1代目魔王だが、アダン国が生まれる前から生きており、せっせと子作りに励んでいた。
そして生まれた2代目魔王だが、これは生まれた時から1代目魔王の実力を遥かに上回るものだった。
髪は黒く短髪、成熟した時には、頭からグニャリと曲がった角が上に向かって生えていた。身長は人が成熟した時と同じくらい100タム(170センチ)ほどで、顔も整っていた。
2代目魔王は、曲者で側近の魔族達に悪戯をしたり、魔王が隠し持っていた財宝を城下に住む、魔族に配り歩いたりしていた。
そして、極めつけの一言がこれだ。
俺、ちょっと勇者してくるわ。
これには、さすがに1代目魔王がキレた。
魔法を数十発打ち込んだが、2代目魔王はビクともせず、ケロっとしていた。
しぶしぶ1代目魔王も、魔族を滅ぼさないことを条件に了承した。
2代目魔王がしたこと、まず魔族の族長を叱る。
これは、当時の族長が嫌な奴で、部下を酷使していたからだ。
2代目は族長の住んでいる村まで行き、死なない程度にボコった。
族長も反省した様子だったので、解放してやったが、そこに勇者一行が乱入、弱っている族長を苦戦しながらも、倒した。
これが、アダン歴198年の偉業の裏側だ。
その後、勇者一行が他の魔族にも手を出そうとしたので、ある程度痛めつけて返してやった。
少しやりすぎたと、反省した2代目だったが、100年ほど過ぎた頃、また勇者になりたくなり、外の世界へ。
そこで、偶然出会った青年と仲良くなり、飲んだり遊んだり、とにかく仲良くなった。
ちなみに角は消そうと思えば消せる。
ある日、青年に家はどこか、と聞かれたので、城を見せてやると、とても驚いてなぜか急いでどこかへ馬で走って行った。
これが、アダン歴302年の魔王城発見の裏側である。
2代目はなにか、裏切られた気分になって、また城に引きこもってしまった。
アダン歴356年、城が騒がしいと思って部屋から出ると、鎧を身にまとった人間がいっぱいいた。それに紛れ込んでついていくと、1代目の部屋(王の間)にたどり着き、そこで1代目が人間と戦っている姿を目撃。気づいた時には1代目が倒されていた。
なんで父上が殺されなきゃいけないんだ?
父上は人間に何もしてないだろ?
族長が殺された時にも似た感情が、2代目の中に生まれた。
正義とはなんだ。
悪とはなんだ。
魔族は悪か?
人間は正義か?
2代目の頭の中に疑問符が浮かび、廻りだす。2代目は頭を抱えたまま部屋に戻ると、1週間ほど悩んだ。
そして決意する。
《本当》の勇者になろう。
王の間に出向くと、1代目の側近たちに告げた。
2代目は弟に譲るから〜
俺、ちょっと勇者してくるわ
今までとは、違う覇気のこもった声で。
しかし、2代目は気づいていなかった。
1代目魔王討伐のことの発端は自分であることに。そう、2代目は馬鹿だったのだ。
行き当たりばったりで書いてます。
途中、行き詰まることがあると思いますが、悪しからず。