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SS ドラゴンに乗りたい

「なぁ、そろそろ一か月経つよな?」


ヒデがそわそわしながら聞いてくる。この一月、ずっとこんな調子だ。

よく飽きないものだと感心するわ。


「一か月まで、あと三日あるけどな」


「三日ぐらい誤差だろっ!?」


こういった事に誤差があるのかどうかは知らないが、言いたい事は分からないでもない。


「なんだよー、ゼンはドラゴンに乗りたくないのかよー、一人で大人ぶるなよー」


「ぶってないわっ!」


失礼な!

いつもならここで話は終わるのだが、今日は続きがあるようだ。


「この一か月で確かにアップルは成長したけどさ、あと三日で乗れるようになるとはとても思えないんだけど」


ヒデの言葉は事実だ。

迷宮で初めて会った時、手乗りサイズだったアップルは、今ではネコほどの大きさになっている。だが、これで乗れると思える奴は鬼畜以外の何者でもないだろう。

しかし、それには理由があるのだった。


「それな? ドラゴンの上位種は体の大きさを自由に変えられるんだよ」


小さい方向限定だけどな。

だから乗るにはまだ待たなければならない。


ついでに言えば宝石種は知能が高いから、城の中で大きいままだと俺達に迷惑かける事を知っているアップルが敢えて小さくなっているのだ。


「な?」


「キュイ!」


話を振ると、その通りだとヒデの頭の上でアップルが元気よく返事をする。


「そ、そうだったのか」


「そういう事だ。あとな、乗れるようになったら、アップルは自分から教えてくれるぞ」


「キュイイ!」


再び肯定の意を返すアップル。


「そうかぁ、本当に賢いんだな、アップルは」


「無理させて乗って、それで後遺症でも残ったらお互いに不幸だろ」


「そうだな…その通りだ。分かった、それまで我慢するよ」


「それがいい」


「アップルも、ごめんな」


「キュア!」


元気よく返事をするアップルは、本当に素直でいい子だ。

とても人身御供としてやって来たとは思えない。

普通なら捻くれてもおかしくない身の上なのだ。




そう、アップルはL(ラージ)S(サファイア)D(ドラゴン)によって、俺達に売られた身の上だった。


(素直にまっすぐ育っているようで安心したよ)


そんな感想を持ちながら、俺はあの日の事を振り返る。







あの日、使徒との戦いを終わらせた俺は、上級迷宮に戻ると使徒によって浸食された迷宮の中枢を更に俺の魔力で()()()した。

そうする事によって、俺が上級迷宮を掌握したのだ。


次にしたのがL(ラージ)S(サファイア)D(ドラゴン)――シュルヴィの洗脳を解除する事だった。

洗脳の解けたシュルヴィは、その巨体を起こすと俺を視認して、これまでの事情を察したようだった。


《御身が新たなる迷宮の主じ――》


「”魔力相滅ペアリッシュ・ウィズ・イーチアザー”!」


どおん…


シュルヴィは魔力を枯渇させ、気を失って倒れた。


(このバカドラゴンは何を口走る気だった!?)


この迷宮が俺の支配下にある事が世間に知れたら大事だろうが。

だからこそ仲間達にも真実を教えず、この迷宮は浸食を()()()()正常に戻したことにしていると言うのに。


(いきなり秘密をバラされてたまるか)


目覚めてすぐに気絶させることになったが、事情を説明する暇もなかったので仕方がない。

訝しむ仲間達は口先で煙に巻こう。


「なあ? 何だったんだ、今の」


「きっと、まだ本調子じゃなかったんだろ」


「洗脳って怖いわね」


「ほんとだね~」


皆の反応は“洗脳が怖い”であって、“L(ラージ)S(サファイア)D(ドラゴン)が怖い”ではなかった。まぁ、割とあっさり倒していたしな。

でも本当は、あんなに簡単にはいかない。

洗脳されて本能のままに襲ってくるようなのは、いかにドラゴンと言えども恐ろしくはないのだ。


本来宝石種や成竜は、ただでさえ高い知能を持つドラゴンを、更にランクアップさせた存在だ。脅威なのは、その知能だった。

況してやL(ラージ)S(サファイア)D(ドラゴン)は宝石種で成竜だ。

本来なら、全身全霊を掛けても勝てるかどうか分からない強敵だった筈。

ヒデの重力操作を以てしても一筋縄ではいかない相手。それが宝石種の成竜だ。







「――と言う訳だから、余計な事口走んなよ」


《わ、分かりましたぁ》


翌日、皆が起きる前――魔力枯渇した相手に魔力譲渡すると半日で目が覚める――にシュルヴィと口裏合わせをする。


「で、代わりのドラゴンを寄越すのはいいけど、そいつはどうやってここまで来るんだ?」


《えっちらおっちら飛んで来ますよぉ》


「待てるかっ!」


舐めてるのか、この野郎。また気絶させんぞ。


《ひいぃ。でも他に方法が――》


「飛べ」


《えぅ?》


「お前が飛んで迎えに行け」


《ええええぇ!?》


「丁度いいから俺も乗せてけ。で、迷宮の帰還(リターン)で帰って来よう」


《う…それくらいならいい、のかなぁ》


「四の五の言わんでさっさとやれ」


《はぁい》







数分後、俺はシュルヴィの背に乗って大空を飛んでいた。


「おー、中々快適だな」


《お気に召したようで何よりです、ご主人様ぁ》


「お前…絶対に、みんなの前でそれを口にするなよ」


《それ?》


「鳥頭かお前はっ! その“ご主人様”だよっ!」


《わ、分かっていますよぅ》


何故だろう、こいつからそこはかとなくポンコツ臭を感じるのは。


「――急げよ」


《はぁい》


半日前のLSD(コイツ)への評価が本当に正しかったのか疑問に思わずにはいられない俺だった。








年内にあと一回更新できるかどうか…

 

※追記

 全知全霊 ⇒ 全身全霊に修正。

 

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