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辺境の村の幻獣保護官  作者: 和花
第二章 見習い保護官と鍛冶職人
61/82

2-8

 あの青年の言葉は、何だったのだろう。白昼夢が見せた幻か、それとも……。気にはなったが、今はそれよりもするべきことがある。

 人里を去った火精霊との和解、姿を消した子供たちの捜索。

 二つの事件に関連性があるとは限らないが、どちらも解決すべき事件だ。子供たちのは言うまでもなく、火精霊のも祭りがつつがなく開かれるように、早急に解決すべきであった。

 今日はフィアとエコーが帰ってくる予定の日。

 鍛冶場の一室で金星とレインが待っていると、開いていた窓から小さな精霊が飛び込んできた。

「よぉ、久しぶりだな!」

 無邪気な声を上げる樹精霊は、金星の前を旋回する。

 金星は笑みを返した。

「エコーさん、お元気でしたか?」

「おうよ。おれはいつでも万全だぜ!」

「それはよかったです。ところで、あの、火精霊の方とは会えました?」

 エコーが目をそらして苦い顔をする。

 パタン、と扉が閉まって、部屋に入ってきたフィアも無表情なまま面白くなさそうに口を開く。

「情報は、という意味ではないな。世間話にはのってくるが、人里から離れた理由については口を割ろうとしない。やつらは、ただ、人間を信じたのが馬鹿だったのかもしれない、と言うだけだ」

 どうやら火精霊との接触に成功したようだが、そこから先がまだらしい。

「長期戦だぜ!」

 エコーの言葉に頷き、金星はフィアへと真剣な目をやった。

「……なにか、あったのは間違いありませんね」

「当たり前だろう。今更わかりきったことを言うな」

 すげなく切って捨てられ、金星は肩を落とした。言われてみれば、その通りだ。

「すみません」

 二人の報告を聞いていたレインが、口を開く。

「そちらでは、何も変わったことはなかったんだな?」

「ああ。その口ぶりでは、そちらではそうではない、ということか」

 エコーが目を丸くする。

「どういうことだ?」

 不思議そうな瞳がこちらを向いたので、金星は慌てて説明する。

「えっと、こっちも火精霊の件とは関係あるかないかわかりませんが、事件が起きていました」

「ほう」

 フィアが興味深そうな視線を向け、エコーは頭に疑問符を浮かべる。

「山に子供が? 見なかったぞ??」

「見ませんでしたか? 誰も?」

「少なくとも、火精霊のそばには来ていない」

 フィアが断言するからには、間違いないだろう。レインは彼女に向けて言葉を継げる。

「だが、山に向かったのは間違いない。悪いが、もうしばらく調べておいてくれ」

「仕方あるまいな」

「了解、だぜ!」

 不承不承とやる気満々、正反対の口調の答えが返ってきて、金星は少しだけ内心でほほ笑んだ。相変わらずのフロスベルの仲間がいれば、訳が分からない状況でも不思議と大丈夫な気がするのだ。

 そんな金星の心情を知ってか知らずか、フィアが面白そうに窓の外へと目をやった。

「人の子が姿を消した、か。火精霊と関連つけて考える人間が出なければいいがな」

 意味が分からず首をかしげた金星の傍で、レインは難しい顔をしてフィアと同じ窓の外を――グレイブレストの街並みへと視線を向けていた。

 窓の外は薄暗い暗雲が立ち込め、雨の気配が漂っていた。

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