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フェレットと茶色いタンス
春の少し肌寒い朝、鳥のさえずる静かな時に破壊音が響きわたる。まだ薄暗い部屋のベッドに横たわるフェレット。
「……おい、これでいくつ目だよ………」
ため息混じりにそう言う――フェレット
「……わからない」
「ちょうど20個達成。目標じゃないけどおめでとう
目覚ましに謝って」
ごめん、と部屋の中央の――タンスが言った
茶色の年季の入った縦長のタンスである
その前には無惨にくだけ散った黄色の目覚まし時計
「ほら蒼太、もうそろそろ起きないと」
フェレットはそろりとベッドを降りてタンスへ近づき扉を引っ掻く
返事はない フェレットはイラつきはじめた
「ねぇ、フェレットの歯はね、結構鋭いんだ」
タンスは勢いよく開いた そして芋虫が倒れ出てきた
黒の寝袋である チャックから青年がひょっこり顔を出した
「やあ、鬼畜フェレット」
「やあ、寝袋芋虫」
モソモソと寝袋から這い出している芋虫―蒼太を横目で見るとフェレットは壁に空いた穴から出ていった