ハイテンション
吹き抜ける風が和らぎ、春の日差しが感じられるようになった頃。
「合格だーーー!!!」
俺は一枚の紙切れを片手に叫んでいた。握りしめているのは高校の合格通知。内容は勿論、「あなたは合格しました」という趣旨の文言。俺はこの言葉を手に入れるために一年間努力してきたんだ。
「まず誰に報告しよう?!」
携帯を取り出す。家族とは一緒に見たし、となると友達? いや、あいつも今日届くはずだ。もしものことを考えて置くべきだ。じゃあ塾? 俺の塾の先生は俺が悩んでいた時、非常に親身になって考えてくれた。もはや俺にとって親以上の存在だ。よし、行こう。それに塾は近いからわざわざ電話をするまでもない、俺は家を飛び出した。
伝えたい伝えたい伝えたい!!!
この嬉しさを誰かに一刻も早く伝えたい。俺はその一心で自転車にまたがり一気に走り出す。
「ひゃっほーーーーーーーー!!!!」
近所の人々がどこの変態だと驚くが気にしない。今日ぐらい勘弁してくれよ! こっちは天にまで上る気持ちなんだ!!
最高速度のまま路地を飛び出し国道に出ると、一旦停止し俺は一度大きく息を吸い込み、
「キターーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
叫んだ。喉がつぶれるくらい、叫んだ。受験勉強の抑圧された日々から今日解放されたのだと思うと興奮が抑え込めなかった。
再び自転車を漕ぎ出す。面白いように加速していき、風を切る音が心地いい。周りの景色が嘘みたいな速度で流れていく。
世界はすごく美しい、俺はどこまでも行ける気がした。
だから、気づかなかった。交差点に気付かなかった。そして気付いた時には遅かった。
すぐ隣に迫るトラック。圧倒的な力で俺は、宙を舞った。
「ええ、次のニュースです。今日午後二時ごろ、〇〇市の交差点でトラックと自転車の衝突事故が起こりました。自転車に乗っていた被害者は全身を強く打っていて病院で死亡が確認されました。なお、事故直前に現場付近を猛スピードで走る、謎の奇声をあげた自転車が目撃されたことから警察は、被害者が何かしらの病を抱えていたのではないかと調べています……」
※何事も程々にしましょう。