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強いひと  作者: 捺魅
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 麻萌鈴子あさもえ すずこ十六歳。旧旧姓、森山鈴子もりやま すずこ。旧姓、高橋鈴子たかはし すずこ、二年前、両親の離婚により、母親に親権がわたった私は、森山という姓から、高橋という姓に変わった。 

 

 そして、現在。母親は、私を連れて再婚、麻萌という姓に変わった。結婚にあたって、私たちは十年以上も慣れ親しんだ我が家を捨てた。新しい家は、近くもないがそれほど遠くもない、元自宅から電車で一時間ぐらいの、豪邸。洋風のお城みたいな、ではなく、和風建築のお屋敷。高くも低くもないが、ちょっと頭を使えば侵入できるような高さの塀に囲まれた中は、一つの町のよう。


 立派な門扉を開くと、柔らかな草のじゅうたんに、細い石畳の道、庭には鯉の泳ぐ大きな池があって、小さな川を作っている。その川にかかる赤い橋。川で区切られ、通行手段は赤い橋ただ一つ。


 そこは、けっしてわたってはいけないと、言われている。これほどの立派な屋敷だ。なにか秘蔵の宝でも隠してあるのかとは、思いながらも至って興味はない。そんなお金持ちの中の暮らしは、決して満足のいくものではなく、息がつまりそうなほど。華道の名家でもある、麻萌家。


 由緒ある家の主である、私の新しい父親。それが、子連れで一般家庭の離婚歴のある十も歳の離れた女との結婚。そんなこと、麻萌家の人間が嬉しいはずもない。結婚の相談は、もう既に遠方に嫁いでいる姉妹、そして体調が思わしくない、両親までもが総出で集まり、会議が開かれたほど。私は出席していなかったため、どのような話がされていたのかは知らないが、この結婚は、駆け落ちも同然とのこと。現在、この家には、私と母親、新しい父親、そして、この家を仕切るお局たちが住んでいる。


 



   ◆◆◆





 私は、転校した。私立鈴蘭華高等学校しりつすずらんかこうとうがっこう


 察しの通り、上流階級のお嬢様やお坊ちゃまが行くような、お金持ちの高等学校。今は、金持ちの家に暮らしているとはいえ、鈴子は生粋の一般市民。鈴蘭華高校に転校する前は、極普通の一般高校に通っていた為、このお金持ちの学校は、未知の世界だ。


 「ごきげんよう、麻萌さん」


ほらね。私たちの挨拶といったら、「おはよう」で決まっている。“ごきげんよう”だなんて、ドラマや漫画の中の世界であって、まさか、実際に使う日が来るとは思ってもみなかった。学校は学校で、居心地悪く窮屈だし、家に帰ったら帰ったで、お勉強。花を毎日、生けなくてはならないという、私にとっては過酷な試練。母は母で、父の手伝いをしているため、家には中々帰ってこない。


 毎日、口のうるさいお局さまと一緒。前の生活に戻りたい。本気で家出でもしてやろうかと考えたが、幸せそうなお母さんの顔を見ると、そうはいかない。ちょっと我慢したらいいだけ。お母さんのために。






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