戦場
「ムーヴ!(行け!)」
その言葉と同時にトラックのなかから飛び出し、土嚢で作られた壁の下に入りこむ。
銃撃の音は止まず、こちらを狙って撃ってくる。
頭の上を何発もの弾が通過していく、それを感じながら自分はヘルメットをかぶり直し、銃の安全装置のスイッチをいれる。
セミオートに切り替え、飛び出す瞬間を狙う。
「がっ」
隣で銃を撃っていた男が倒れる、それを横目にみながら自分は一気に銃弾の飛び交う中に飛び出す。
「あぐっ」
「っ」
目の前で二人撃たれる、それを無視して次の土嚢の下に再び飛び込む。死体が一つあったがそれを退け、土嚢を背にして座り込む。
自分の息は荒い、走ったせいなのか、それとも戦場の空気に飲まれたのか、自分でもわからない。
あいからわず周りからはおびただしい程の銃撃音が聞こえる。
自分は少し深呼吸し―
土嚢から銃をだし構え、相手を一人狙い撃つ。
相手は倒れ、近くにいたもう一人が撃ちまくってくる。
銃弾が飛んでくるがそれを無視、相手の頭を狙い撃つ。
着弾―
相手の眉間に穴が空き、銃を乱射しながら倒れる。
それを見たあと直ぐに土嚢の下に隠れる。
直ぐ様自分の土嚢に銃弾がまた飛んでくる。
銃をフルオートに切り替え、銃弾が飛んでくる方向を探る。
斜め左―それを見、後ろ手で体と頭を出さず、銃と左手だけだして全弾乱射する。
カチッと音が聞こえ弾が切れる。
銃を引っ込め腰のポーチから弾倉をとりだす。
左手で空の弾倉をとり、新しく弾倉をつける。
突如爆発音が響き渡る、敵のだれかが手榴弾を投げたらしい。
右側から砂がまい、自分の頭にかかる、うめき声が少し聞こえたが、すぐに銃弾の音にかき消される。
すると一人の仲間が左側からこちらに駆け込んでくる。
自分の隣に飛び込み、すぐに土嚢を背にする。
「はぁっはぁっ、くそっ、弾切れだ。」
撃ちまくっていたせいか、男の銃からは引き金をひいてもカチカチとしか音がならない。
自分は近くにあった死体からポーチを引き寄せ、中を探る。
男は空になった弾倉をすて、こちらを見る。
中にあった3つの弾倉うち二つを渡す。
男は一つをポーチにいれ、もう一つを銃につける。
「ありがとよ、生き残れたら一杯奢るぜ!」
男はそういって銃弾の雨の中を右側の土嚢に向かって走っていった。
自分はそれを見たあと、銃をセミオートに戻す。
敵は正面からこちらを狙って滅多撃ちをしている。
腰についている手榴弾を取り、土嚢の横から少し様子をみる。
瞬間、自分の近くの地面に銃弾が当たり、すぐに土嚢の後ろに隠れる。
だがさっき見えた位置は覚えており、手榴弾のピンを引き抜く。
直ぐ様土嚢から飛び出し手榴弾を投げる。
後ろで爆発音がする、自分はそれを振り返らず、近くの土嚢に入りこむ。
入り込んだとたん大量の銃弾が土嚢に撃ち込まれる。
荒い息を抑えつつ、見るとポールのついた支援火器の機関銃が倒れている。
誰かが使っていたのか弾の薬莢があちこちにある。
銃弾の雨を避けつつ機関銃をもう一度立て直す。
銃弾が飛んできて、自分の手を掠める。
思わず手を引っ込める、みると手の甲に無理矢理抉られたような一本の線状の傷ができている。
痛みに顔をしかめつつ、右手でポーチの中の麻酔薬を取り出す。
注射にセットし、自分の左腕に打ち込む。
筆舌し難い痛みが一瞬襲うが、それを耐える。
包帯を取りだし左手に巻き付ける。
銃弾が自分の頭を掠めるようにして飛んでいく。
銃をまたフルオートに切り替え、左手と銃だけを出して乱射する。
一瞬だけ敵の弾幕が止まり、その瞬間を狙って機関銃を構える。
そうして土嚢から出てきた敵をひたすら撃ちまくる。
機関銃の反動が体に直に伝わり、少しだけ銃身がぶれる。
いつのまにか自分は叫びながらひたすら機関銃を撃ちまくっていた。
だが、急に敵の後ろ側から何本もの白い煙が上がる。
雲一つない空に上がったそれは、こちらに向かって落ちてくる。
爆発音と光が視界を覆い、自分は吹き飛ばされた。
ゆっくりと目を開ける。
目の前に青空が見える、倒れているようだ。
だが、自分の視界は赤色に染まっていく。
目に血がはいったようだ。
意識も朦朧としてきた、そのまま自分は目を閉じ―
勇者の影の更新ほっぽらかしてなにやってるんだ自分は。
急に書きたくなって書いた、後悔も反省も懺悔もしない。
死を意識して書いてみた、少しでも何かをかんじてほしい。