マドンナ登場!
「え? ち......違いますよー」
僕は咄嗟に嘘をついた。だってしょうがないじゃないか。こんなまっピンクのスーツ姿、見られたいわけないだろう。
「ほんとにー?」
高木さんは僕の真正面に立ち、顔を近づけてきた。
「あ.....あ......」
僕はパニックになった。高木さんのさらさらとした黒髪。くるりとした大きな目。わずかに感じる吐息。その全てが僕に襲いかかってくる。
「うーん、やっぱり早川くんだ。眼鏡してないけど。私ね、人の顔覚えるの得意なんだ。だから誤魔化してもダメだよ!」
思考停止した僕はコクリと頷いた。
「それにしても驚いたなー。早川くん、運動神経すごくいいんだね!さっきの全部見てたよ」
実はそうなんだ、これは昨日、宇宙人から......そう言いかけて僕は気づいた。
この言い方だと、高木さんはスーツの能力のことに気づいていない。昨日のことを言わなくてすむだけでなく、僕を運動神経抜群のナイスガイだと思ってくれる。
「実はそうなんだ。自分で言うのもあれだけど、けっこう運動神経いいんだよねー」
「うんうん、なるほど!すごいね、早川くん!すごくかっこいい!やっぱり運動できる男の人って素敵だよね!」
クラスのマドンナに褒めちぎられ、僕はだらしのないニヤケ顔になってしまった。
「そ......それほどでも。へへへ」
「あれれ?でもおかしいよね?早川くん、そんな運動神経よかったっけ?体育の授業ではそんなかんじしなかったけど?普段は隠してるの?なんで?なんで?」
あれれ?おかしいよね?全然乗り切れてないね。
僕は高木さんのなんでなんで攻撃をもろにくらい顔をしかめた。だが諦めてはいけない。考えろ、考えるんだ。なにかいい訳を......
その時、高木さんの表情がチラリと視界に入った。彼女の目は笑っていた。口元も笑っていた。
あ.....これバレてるわ
「.....実は......嘘ついてました」
僕のその言葉を聞いた高木さんは満面の笑みになった。
「そっか、そっか。とりあえず詳しい話しはあそこでしようか」
高木さんは奥にあったプレハブ小屋を指差した。




