帰り道
何も変わらない学校生活だった。
けっきょく高木さんと会話をすることはなかった。何度か会話を試みてみようと思ったが、彼女の周りには常に友達がついている。彼女が1人きりになることは絶対にない。そんな状態で喋りかけることはできないし、向こうからも特に喋りかけてくる素振りはなかった。
そして放課後、僕は足早に学校を出た。
一瞬、またあそこに行けば高木さんに会えるかもしれないと思ったがやめておいた。もし高木さんがいなければよけい傷が深まるだけだ。
帰り道、カブト虫がひっくり返ってじたばたと蠢いていた。僕はその様子を3分ほど見ていたが、あきたので元に戻してやった。するとカブト虫は羽を広げどこかに飛んで行った。
見つけたのが僕でよかったな。もし小学生にでも見つかったら虫カゴ行きだったぞ。
そういえば、牛乳と食パンがきれていたなぁ。晩御飯の食材もなかった。
僕は家の近くのスーパーに寄った。今日は野菜炒めにしようか。
レジで会計を済ませると、くじをやっているので引くようにと言われた。くじの会場でレシートを渡し、ガラガラを回した。
出たのは赤い球だった。
「おめでとうございます! 1等のゆめランドペアチケットです!」
どうでもいいところで運を使ってしまった。遊園地のチケット、しかもペアチケットなんていらない。残念賞のポケットティッシュのほうが絶対によかった。
だめだなー、なんか卑屈になってるなー。
とりあえずはやく家に帰ろう。帰ってさっさとご飯を食べて、風呂に入って寝よう。寝ればなんとかなる。なんでかって?そんなの知らないよ。
チケットはしまうのも面倒だったのでそのまま手で握りしめた。
そして家に向かって歩き始めたときだった。
「早川くん!」
幻聴だろうか?いや、でもたしかに.....
振り返ると高木さんが立っていた。
「もー、放課後声かけようと思ったのにさっさと行っちゃうし、後追いかけても、すごい深刻そうな顔してるからなんか話しかけずらかったし......ねえ、聞いてる?」
僕は口をパクパクさせた。なんか話さなきゃ、なんか話さなきゃ!
「えっと.....あっと......これ!ゆめランド!」
僕は手にもったクシャクシャのチケットを差し出した。
高木さんはきょとんとしている。
やってしまった。無意識に自分でも理解不能なことをしてしまった。
「えっ?なに?一緒に行きたいってこと?」
やってしまったものはしょうがない。
「うん!さっき!そこの!クジで当たったんだ!!
よかったら!一緒に!行こう!!」
「ちょっと.....声大きすぎ」
高木さんはすごく恥ずかしそうだった。
ダメだったか。やはりやけくそで行動してはいけないな。この経験を糧に来世は頑張ろう。どうせ来世はミジンコだろうけど......と自分のことを卑下しまくったその時!
「......別にいいけど」
お聞きいただけただろうか?僕は聞き逃さなかった。高木さんがボソッと言ったこの一言を。
「ありがとうございます!よろしくお願いします!」
僕は感謝の意を込めて深々とお辞儀をした。
「こんなのでお辞儀するやつがあるか!ほんとに面白いなー、君は」
高木さんはケタケタと笑った。
僕も一緒になってケタケタ笑った。




