第30話「帰り道の小さな寄り道」第三部
キーンコーンカーンコーン。
最後のチャイムの甲高い音が、授業の終わりを冷酷に告げた。
即座に、ガタガタッと椅子を引きずる音が床を引っ掻き、立ち上がる生徒たちの無秩序な動きと混ざり合う。休み前の試験について語る教師の必死な声は、クラス全体の無関心に飲み込まれ、喧騒の中に消えていった。
ザワザワ……
会話が反響し、互いに重なり合いながら、最初の生徒たちがすでに教室から逃げ出していく。廊下の磨かれた床を叩く足音のコツコツという鋭い響きが、教室の中にまで侵入してくる。
その混沌の中で、三浦竜斗の注意は、より微かな何かに囚われていた。
前方の窓際の席に座る二人の男子生徒が、素早く共犯めいた視線を交わしている。振り返った彼らの目は、重苦しい期待と懇願が入り混じった光を宿し、その唇は興奮で歪んでいた。
竜斗は視線を逸らした。体が拒絶反応を示すのを感じる。
ズキズキ……
背骨の付け根で、鈍い痛みが脈打っていた。何時間も維持された悪い姿勢の代償だ。シャープペンシルを握り続けた親指の筋肉も、強張ったまま悲鳴を上げている。その身体的な不快感は常にそこにある錨のようなもので、ここから逃げ出して、自宅という聖域に戻りたいという渇望を増幅させるだけだった。
だが、あの二対の視線の重さを感じると、身体の不快感など二の次になった。冷たい不安が、背中の痛みが残した隙間を埋め尽くしていく。
結局、これ以上先延ばしにはできないのだ。
森田先生に、返事をする時が来た。
◇
ズル……ズル……
その足取りは重く、引きずるようで、何の意志も感じられなかった。竜斗は処刑台に向かう罪人のように、職員室へと歩を進めていた。いつものように、最後の瞬間まで自分の席に座り続け、廊下の騒々しい群衆との接触を避けるために人の波が引くのを待っていたのだ。
そして、あの夜以来いつものように、彼女のイメージが脳裏に侵入してきた。
別れ際、秋山真琴は彼に話しかけた。彼女の笑顔、「また明日ね、三浦くん」と軽く言ったその声、何気ない手振り。時々、彼女は駅まで一緒に帰ると言い張るのだが、今日はその話題に触れなかった。
(僕が先生と話さなきゃいけないと言ったからだろうか?)
彼は自問した。
即座に、脳内で警報が鳴り響く。
(待て。待て。待て。)
(なんで僕は、クソみたいにそんなことを考えてるんだ?!)
竜斗は乱暴に口元を手で押さえた。物理的に思考を封じ込めようとするかのように、眉間に深い皺を寄せる。フゥーッと強く息を吐き出し、混乱を追い出そうとした。頬を染めようとした微かな赤みは、自分自身への苛立ちによって強引に抑え込まれた。
幸いなことに、彼の注意はその思考の螺旋から引き剥がされた。
廊下の窓越しに外を見る。学校の裏手にある広大なグラウンド、そしてその向こうには、威圧的で静まり返った山の緑が斜面を登り始めていた。
だが、その風景の静寂は、眼下からの叫び声によって破られていた。
竜斗は視線を落とし、サッカー部の連中がグラウンドを周回し、ウォーミングアップのルーチンをこなしているのを眺めた。コーチの怒声とキャプテンの指示で、空気はビリビリと震えている。彼は目を細め、動くユニフォームの集団を走査し――パターンの中にある欠落に気づいた。
二つの人影が欠けている。
三浦武と山本颯太。彼のクラスメイトであり――現在彼が置かれている理不尽な状況の、直接的な原因である二人だ。
竜斗の目が細まり、疲労の色が濃くなる。武と颯太がどこに消えたのか想像するよりは、無知でいる方がマシだった。知らないでいることは、今の彼にとって一種の防御手段なのだ。
クルッ。
踵を返して進もうとしたその瞬間、誰かと衝突しそうになった。見覚えのある顔が目の前に現れ、行く手を塞ぐ。
佐藤健太。
二人の間には決定的な違いがあった。竜斗の瞳が無気力な虚無を宿しているのに対し、健太の瞳は通常、激しい意志――しばしば怒りによって燃え上がっていた。だが今日、その炎は消え失せているように見えた。そこに残っていたのは、疲労と罪悪感が濁りきった混合物だった。
「佐藤くん……」
竜斗は呟いた。その声はほとんど聞き取れないほど小さい。
健太は一瞬だけ彼を見つめた。その視線は竜斗の上に重くのしかかったが、耐えきれずに床へと崩れ落ちた。
「おう……」
健太は呻くように言い、彼を避けて廊下を歩き出し、竜斗を背後に置き去りにした。
竜斗は立ち尽くした。背筋をゾクッと悪寒が駆け上がる。
(この感覚……前にも感じたことがある。このパターンは……)
佐藤は通り過ぎたが、竜斗は目で彼を追うために振り返らなかった。必要なかった。次に何が来るか、正確に分かっていたからだ。
そして予想通り、廊下の角を曲がったところで、奴らが現れた。
二人の男子生徒が行く手を阻んでいる。一人は目に痛いほどの脱色した金髪、もう一人は明るい茶髪の短髪。二人が竜斗に焦点を合わせた瞬間、空気が一変した。彼らの眼差しは捕食者のそれとなり、共感などというものから最も遠い場所に堕ちた。
(ああ、やっぱり……)
記憶が、拳のように彼を殴りつけた。あの日のフラッシュバック。挑発。あの時と同じ、追い詰められた感覚が胸を締め付ける。
竜斗は歩き続けようとした。視線を虚空に、廊下の突き当たりにある存在しない一点に固定し、自分自身を透明にしようと試みる。だが、無駄だった。
ガシッ!
重たい腕が肩に落ちてきて、彼の歩みを強制的に止めた。
「よう、三浦ぁ!」
金髪の男――涼平の声が耳元で弾けた。大きく、強制的で嘲笑的な親しみが込められている。
「元気かよ、俺たちの三浦クンはよぉ! 調子はどうなんだ?!」
もう一人が反対側から近づき、包囲網を完成させる。
「まあ……たぶん」
望まぬ接触の下で体を硬直させながら、竜斗は答えた。
「『たぶん』だぁ?……」
涼平がケッと乾いた笑い声を漏らす。
「こいつ、マジで傑作だな」
「もっと気合入れろよ、三浦ぁ」
「おい、健太!」
涼平が突然叫び、竜斗は無理やり体を捻らされた。涼平は肩越しに、ゆっくりと遠ざかっていた佐藤健太を呼び止める。
「お前のクラスメイト、マジで笑えると思わねぇか?」
一瞬、廊下に静寂が落ちた。
「……そいつを放っといてやれ、涼平」
健太は振り返りもせず、引きずるような声で呟いた。
その反応は、二人の攻撃者の不意を突いた。涼平は瞬きし、信じられないという顔で男と視線を交わす。竜斗の肩から腕を滑り落とし、完全に健太の背中へと向き直った。
「行こうぜ、そいつは捨て置け……」
健太は繰り返し、歩き続ける。
「あぁん?」
涼平が眉をひそめ、声に攻撃的な色が濃くなる。
「お前何言ってんだ? このイカレ野郎がお前の好きな女とつるんでんだぞ? なのにそんな弱気なこと言ってんのかよ?」
「僕と秋山さんは……」
竜斗は割って入ろうとした。誤解だと説明しようとしたが、彼の声は踏み躙られた。
「うっせぇんだよ、クソがッ!」
男が怒鳴り、暴力的な勢いで彼の方へ向き直る。
グイッ!
素早い動きで、男は竜斗の制服の襟首を掴み、乱暴に引き寄せた。生地が喉に食い込み、呼吸を圧迫する。突然のストレスに襲われ、竜斗の片眉がピクリと跳ねた――それは彼の無意識の神経質な癖だった。
だが男にとって、それは挑発以外の何物でもなかった。
「やる気か、テメェ?」
男の拳が固く握りしめられる。
「放せ、浩」
健太の声が空気を切り裂いた。さっきよりも鋭く、重い。
三人は凍りつき、音のした方を見た。健太は足を止めていた。そして今、読めない表情を浮かべたまま、彼らの方へと歩き戻ってくる。
カツ……カツ……
「やめとけ。価値がねぇ」
健太は数メートル手前で立ち止まり、そう告げた。
その場に重苦しい沈黙が降りる。涼平と浩は、何が起きているのか理解できていない。
だが、誰よりも混乱していたのは――他ならぬ、三浦竜斗だった。




