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18話 主にも食べてもらいたかったのに

「ほら、主!ここだぞ!湖があるんだ。その周りに果実がたくさん…

って、あれ?!全部枯れてる…そんなぁ…」


「クロ…ここ、どうしてこんなに空気が悪いんだ?」


「知らない…俺が眠ってる間に、全部枯れちゃったみたいだ…。」


楽しそうに果実のある場所を紹介しようとしていたクロ。

けれど、目的地が近づくにつれて、クロの表情はみるみる不安げに変わっていった。

そして、目の前に広がった光景に、愕然としていた。


どうやらこの湖の周りには、かつて果実が豊かに実っていたらしい。

でも今は、樹木はすべて枯れ果て、まるで除草剤でも撒かれたかのようにカラカラだ。

明らかに異常な様子に、エマが静かに教えてくれた。


【数百年の間に、この湖は醜い争いによって水が穢れてしまいました。

この湖の水は、聖水のため一度穢れると元に戻すのは困難です。

そして、この湖を復活させるには、大量の魔力と願いの心を捧げる必要があります。

願いの心とは、純粋に救いたい・護りたいという気持ちを持つ、穢れなき心のことです。】


「・・・」


「主、どうにかならない?俺、ここの果実が大好きなんだ。

だから、主にも食べてもらいたかったのに…。」


「クロ…」


エマの話によれば、この湖はかつて聖水が湧いていた場所。

争いによって穢れ、周囲の植物まで枯れてしまったらしい。

こういうのはよくある話だ。


穢れが広がれば、周囲にも影響が出る。それは自然の摂理かもしれない。

そして、この湖の復活には大量の魔力と願いの心が必要だという。

魔力は問題ない。

でも、俺に願いの心と呼べるものがあるのか?


「主…やっぱり、難しいのか?」


悩んでいると、隣でクロが悲しそうに俯いていた。

その姿を見ていると、どうにかしてやりたいという気持ちが自然と芽生える。

できるかどうかなんて、やってみてから考えればいい。

そう思いながら、クロの頭をそっと撫でて、湖の前に膝をついた。


「えーっと…?どうすればいいか分かんないけど、こういうのって何か言えばいいのか?

…湖の穢れを祓い、その命の鼓動を復活させよ!」


「おおっ?!」


ひとまず掌を湖に向けて、穢れが消えて、命が戻ってくれたら。

そんな思いを込めて言葉を紡いだ。

すると、体中が熱くなり、掌から眩しい光が放たれた。

その光は、水面を這うように広がり、瞬く間に湖全体を覆っていく。


ここからが長いのだろう。

浄化って、すぐに終わるものじゃないってイメージがある。

でも、クロのためだ。頑張るしかない。

そう思いながら、光に包まれた湖をじっと見つめていた。


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