12話 部屋の中身は別メニューです
しばらく出来上がった城を見上げたあと、
中はどうなってるんだろう?と思い城へと足を踏み入れることにした。
これだけ綺麗な外観だ。中もきっと豪華に違いない。
そう思いながらドアを開けた俺は…愕然とした。
何故かって?
あれだけの時間を使って復元した城の外観は完璧だった。
でも、どうやらそれは外観だけだったらしい。
「嘘だろ?まさか、内装は別枠?!オプション?!
マジか…。また復元作業じゃん!」
城の中は、最初に見た朽ち果てたままの状態。
剥がれ落ちた壁、割れた額縁、穴の開いた床…何ひとつ変わっていない。
さすがにこの中で寝るのは無理だ。
「分かりました…。分かりましたよ。ちゃんと復元しますよ。
でも、その前に、やっぱり触れた方がいいのか?」
ここまで来て中身が壊れたままだなんて。そんな中途半端なことはできない。
そう思い直して、俺はもう一度壁へと手を伸ばした。
「お、今度は頭痛なしだ。良かった。」
また痛みに襲われるかと思っていたけど、今度は何の違和感もない。
すると、頭の中、瞳の奥にこの家の家主だった人物が見ていた映像が再び浮かび上がった。
そこに映し出されたのは、うっとりするほど美しい内装。
ドアを開けるとすぐに現れる床には、紋章か魔法陣のような模様。
正面奥の両サイドには螺旋階段、その先に広がるいくつもの部屋。
来客をもてなすための空間が、そこにあった。
更にこの城には地下室があり、無数の魔導書が収められていた。
きっとこの場所で、魔法の研究をしていたんだろうな。
「・・・よし。じゃあ、いくよ。
・・・・・・・クレオッ!」
映像から受け取った思い出の温度が残るうちに、俺は詠唱の言葉を唱える。
すると、先ほどと同じようにジワリ、ジワリと復元作業が始まった。
と、思ったらやけに速度が速い気がして声に出た。
「何かさっきより早くない?」
【レベル1とレベル100では、そのスピードは歴然です。もうすぐ完了します。】
「へぇー。そういうもんなのか。
でもステータス値は、あんまり変わってなかったけどな。
まぁ、別にいいけどさ。」
【復元が完了しました。】
今回も数時間は覚悟していた。
寝るのは深夜だろうと思っていたけど、AIから「レベル100では作業が速い」と教えられた通り、
開始からわずか5分程度で復元が完了した。
ステータス値はそれほど上がっていない気がするけど、
レベルが高いとこんなに違うもんなんだな。
そう感心しながら、俺はその場に大の字に寝転んで、
完成した城の中で、しばし一人の祝福を噛みしめていた。