10話 家主の記憶が見えました
「よし、さっそく城を直しますかな。
…これ、強い揺れが来たらすぐに崩れそうだな。
まずは、ちょっと触れてみようか。材質も気になるし。」
やる気を出した俺は、城を修復するべく外壁に手を伸ばした。
一体いつからこの場所に建てられていたんだろう。
偉大な魔法使いって言ってたけど、どんな人だったんだろうな。
なんて考えていた、その瞬間だった。
「…いてっ!」
突然、ズキンッと頭に痛みが走り、思わず外壁から手を離す。
片頭痛か?そう思いながら、もう一度外壁に触れるとまたズキンッと痛みが走った。
「…なんなんだこれ。
でも、今何かが見えたような?」
この手の頭痛は地味に嫌だ。
けど、痛みの奥にふっと何かが映った気がした。
気になった俺は、もう一度ゆっくり外壁に手を伸ばした。
ズキンッとした痛みに眉をひそめながらも、深呼吸。
すると不思議と痛みは引いていった。
そして、頭の中、瞳の奥に、映像のようなものが浮かび上がってきた。
「これは・・・この城か?すごく綺麗だな。」
俺の中に流れ込んできた映像は、まだ綺麗だった頃の城の姿だった。
いまは見る影もなく朽ち果てているけど…。
そのとき見えた城は、漆黒の外壁に、優しい灯りが漏れる窓。
塔は空へ向かってまっすぐそびえ立ち、堂々と構えている。
雨上がりだったのか、雫がキラキラと光り、城全体が幻想的に輝いていた。
「これがお前の元の姿なんだな。…分かった。
俺にどこまでできるか分からないが、やってみるよ。」
「・・・・・・クレオッ!!」
頭の中で見た城のイメージを忘れないうちに唱えなければ。
そう思った俺は、あの美しい景色を思い描きながら、
俺は女神の言葉を胸に、魔法の詠唱を唱えた。
すると、体中から熱のようなものが湧き上がり、掌から、星の粒のような光が舞い始める。
ゆっくり、ゆっくりと、朽ちた城が蘇っていく。
舞い散る粒子たちは、まるで城の目覚めを祝うように踊っていて。
その光景は、まるで奇跡そのものだった。
「すげぇな、魔法って。こんなに綺麗なんだな。」
人生で初めて使った魔法。
それは、俺がまだ知らない世界への扉を、一気に開いてくれた。
漫画やアニメ、実写映画では何度も目にしてきた。
でも、自分自身がその“特別な力”を使う日が来るなんてな。
人生って、何があるか分からないもんだな。
そう思いながら、俺は静かに、復元されていく城を見つめていた。