表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/24

僕と初めての魔法

こんちには。羽山蛍です。

僕は今、ゴキブリとして異世界を生きています。


突然ですが、僕は初めて魔法を見ました!

すごいです!興奮です!


それが自分に向かって来る様なものでなければ言うこと無しなのですが…。


飛来する火球ーーーそして轟音

あっ!ぶない!

消毒だーなんてもんじゃない!触覚が片方縮れた!

とにかく速く離脱しないと!




穴蔵を抜けるとそこは異世界でした。

石畳とレンガ造りの通路に、等間隔で謎の原理で光る照明があり、片側には牢屋の鉄格子。


そして、鉄格子の中でカチャカチャと骨の擦れる音を鳴らして揺れている骸骨。


骸骨!空洞になっている眼窩には薄らと弱く赤黒い火が灯っている。


見たところ軟骨も腱も筋肉もないのに、骨がバラバラになる事なく動いている。


アンデッド…スケルトンとでも言うのだろうか?


漫画やアニメやゲームの世界でもお馴染みの、魔法や魔力といった不思議な力があるのだろう。


合計三体ほどのスケルトンを見かけつつ、通路を進むと、上下それぞれに続く階段があった。


現状どこのどういった所に居るのか分からないが、もしもダンジョンというやつなら下に降りるほど危険度が上がるのがセオリー。


もしも人の居住区に近いのであれば、上に行く程遭遇率が上がるだろう。

スケルトンが放置されているあたり、かなり管理されていないのか、危険なのか…何にせよそれでも遭遇する確率が高いだろう。


生態系の下層にいるであろうゴキブリの自分には荷が重い。


さて…行くも戻るもリスクがあるな。

どうするか…。


ふと振り返ると、悩む僕の後ろからついて来ていたはずの兄弟達が、いつの間にかスケルトンの体に登り、気付かれないのを良いことにカリカリと齧り始めていた。


いやいや、それはきっとまずい!

食物連鎖がとかではなく、圧倒的に質量が違いすぎる!

プチっと潰されて終わりだ!


なんとか兄弟たちを助けないと…階段の近くから牢屋の方へ向かう所で、背後から足音が複数聞こえた。


再び生存本能が強烈にアラートを鳴らし始める。

脚の毛が全て逆立つ様だ。

人か、モンスターか、どちらにしても姿を隠さないといけない!


「キュッ!!」

兄弟たちに向けて叫ぶ。


その声に僅かにスケルトンがこちらを一瞥するが、小さすぎて見えなかったのか、それとも取るに足らないと判断されたのか、すぐにカタカタと揺れる動作に戻った。


兄弟たちは静かに、素早くこちらへ戻ってくる。

ハダカデバネズミの危機を乗り切っただけあってか、その速度はよく知るゴキブリの成虫と同じくらいには見える。

異世界だけあって色々と違うところがあるのだろう。

気になりはするが今は後回しだ。


通路の壁際に窪みを見つけて、そこに皆で駆け込む。


それと同時に足音の主たちが遂に現れた。


人間だ!

先頭には黒いフードを被り、目元を黒い布で覆った男。

シーフや斥候なのだろう。見えないのではないかと思うが、スケルトンに気付いた様子だった。


その警戒する声に身構える戦士風の強面の大男と、モンク風の優男。

後ろにはいかにも魔法使いな少女と、グラマラスな神官風のお姉さんがいた。


大きい…じゃなかった、凄い!

この世界にも人間はいるんだ!


でも、つまりは自分達に敵対するであろう生き物がまた一ついることが確認できたということだなぁ…。


そんな風に観察しつつ思っていると、

スケルトンたちが瞳の炎を強めながら、骨なのに表情を般若の様に変えて、牢の柵を吹き飛ばして出てきた。


魔法使いが「ファイヤボール」と言うと、

構えた杖の先端からメラメラと燃える火の玉がスケルトンの一体に向けて飛んで行った。


凄い!魔法だ!本物だ!

と、驚き興奮したのも束の間、


火球はゴゴゴッと音を立てて、空気を裂きながら真っ直ぐにスケルトンにぶつかる。

火の粉が降り注ぎ、目の前の地面が焼ける。


あっつい!触覚が片方焦げた!

魔法怖い!!

兄弟たちも息を殺しながら震えている。

何とか機を見て脱出しないと…!


そのまま骨を焼き溶かされたスケルトンは動きを止めるが、煙と炎の脇をすり抜けて人間たちに迫る。


シーフが小さなナイフを投げつけるが、あまり効いていなさそうに見える。


そのまま突撃されるかというところで、「オオオ!」という雄叫びと共に、戦士が大きな剣を天井スレスレの高さから振り降ろし、スケルトンをすり潰す様に叩き切った。


最後の一体をモンクが、「あはっ、君だけだね!」と、狂気的な笑みで殴りつけて粉々にしていく。


その拳が白く光っており、神官が同じ光を纏っている事から、何らかの支援魔法を掛けているのだろう。


そうしてスケルトン二体が消えたところに、見たことのない複雑な模様が浮かんでは消えていく宝石が現れ、シーフがその品質を調べていた。


目の前の火もようやく消えて、このまま人間が立ち去ってくれればーーー

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ