僕と新天地
巣穴を出て早3日。
僕は今、森の中の比較的高い木の中に巣を、せっせと作り始めている。
巣穴を出て、ゾンビ(女魔法使い)の居た廊下を過ぎて階段を登った先。
随分と年季の入った扉の隙間を、持ち前の扁平な体を活かして潜り抜けると、目の前に広がったのは太陽と、空と、森だった。
空気がとてつもなく美味しい気がする…。
思わず気門から吸い込む息の量も増えたように感じる。
兄弟たちも羽を広げたり、明るい外が不思議そうに触覚をひくつかせたり、反応は様々だ。
まずは眼前の森に潜ってみることにした。
(いつまでもこんな目立つ所に居たら、捕食者にサクッとやられかねないし…。)
森の中は生き物の多様性に満ちていた。
リオックを人の前腕程度まで大きくしたようなバッタの仲間、明らかに毒を持っているであろう8つの角をもつカブトムシらしい甲虫。
羽ばたきで木々を揺らすほどの、オオムラサキの様な蝶類。
先ほどのバッタをサクッと捕食している、明らかに金属製の鎌をもつカマキリなど、多種多様な虫達で溢れていた。
もちろん肩から腕にかけて鎧のようなものを纏った熊や、立派な角と…その角を加工したのか槍のようなものを持った二足歩行のうさぎ、土の中に隠れて上を通る生き物をなんでも捕食する大きな蛙など、虫以外の生き物も多数いた。
そうしてよくわかったことがある。
(明らかに野生の動物強くない…?)ということである。