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僕と近頃の日常

コンカーローチに参加してから早3日ほど。

ほど、と言うのは巣穴の暗がりの中だから正確な日数がわからないからだ。


ここのところ僕は、巣穴付近にシャドウの魔法で落とし穴を作って防衛できる様に備えたり、ネズミの死骸を食べたり、新たな能力について調べたりしていた。


そういえばクロも進化した。

麻痺毒を主に用いての戦闘を好んでいたからか、より一撃離脱…一撃必殺?型のアサシンローチへと進化した。


あのとんでもない黒い塗料を塗りたくったかのように漆黒の体は、僕らでも気配察知が無ければまず気付けないレベルの隠密能力を発揮していた。

また、麻痺だけでなく忍者のまきびしの様な棘を自由にばら撒いて足止めをしたり、毒や麻痺もより強力になっていそうであった。


朧げに感知できるシルエットは完全にクロゴキブリだが、闇魔法で作ったのか、元々なのか、体と同色のマフラーのようなものを頭部と腹の間あたりからヒラヒラとさせていた。


(動きにくくないのかな?)

他の兄弟達はかっこいいと思ったのか、「きゅっきゅ」と鳴きながらクロの周りで触覚をぴこぴこさせてそのマフラーに触れている。


クロはどやぁと聞こえてきそうな、そんな雰囲気で前足を額に当ててポーズを取っている。


(おい…そんなキャラだったのか?)

クロが厨二のナルシストになってしまったのかと一抹の不安を抱えつつ、それでも戦力の増強は嬉しいことだったし、本人が気に入っていそうで何よりだった。


パトロールを終えて、今日も変わりなさそうだなと思いながら巣穴に入ったところ、巣穴より外の、石畳の通路辺りからズリッ……ズリッ………と何か重いものを引きずる様な音と振動が伝わってきた。


(また人間か…それとも…。)

感じる気配は人間大のものだ。まだ少し遠いが、片足か何かを引きずっている…?


ずずっ…ズリッ……ビチャッ!…ズリズリッ……ボタッ…

段々と大きくなる音。

(ううーん…流石に心霊現象だなんてことはないだろうなぁ。)骸骨が人間に襲いかかるホラー映画さながらの場面を見たため、すっかりこっちの世界の頭に切り替わったからか、怖いというよりも危害が及ばないか?兄弟たちに危害を加える様なものではないか?ということが第一になっている。


その見極めは生存のためには必須であったので、巣穴から少し顔を出し、通路の方の気配を探り続ける。


「ぅああ…」なにか呻き声の様なものが聞こえる。

ズズズっ……ずっ……あぁぁ………ズリズリッ…

気配が迫り、音が大きくなってくる。

遂に穴倉の前をその音と気配の主が通る。


僕に見えたのは、どこかでちらっと見たような穴の空いた革のブーツ。

(あれは確か…人間たちの魔法使い?が履いていたのに似ている様な…)

ずずっ…ぅぁあ……ベチャッ!

巣穴の近くの段差に躓いたのか、もう片方の膝が見える。


土色をした肌と、むき出しの骨。そしてぼたぼたと垂れる血が、もう生きていないのであろうことを悟らせた。


(おそらく途轍もなく強いスケルトンとの戦いに敗れて…。)死体が歩くなんていうことは、ゾンビ映画か漫画、あとは異世界だけだ。

ここは異世界。つまりはアンデッドというやつになってしまったのか…。


初めて見た人間たちが無惨に敗れたことを知った僕はなんとも言えない気持ちになった。

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