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僕が一国一城の主

縦穴は思いの外浅かった。


途中から滑り台のように斜めになっていたため、光が届かず深く見えただけだった。

女王ネズミの倍ほどある緩やかな下り坂。

降りていくとすぐに部屋があった。中から2匹分、ネズミの気配がしている。


挨拶がわりのダークボールを打ち込むと、「「ヂィイ!?」」直撃したらしく悲鳴が聞こえる。

それを合図に、後ろから来ている兄弟たちと共に雪崩れ込む。


目の前でこちらを女王よりも一回り小さな、王冠を頭につけたような新女王ネズミと、同じくらいの大きさの…ずいぶん痩せている王ネズミが居た。


(なるほどな…女王は、個としての自分よりも、種族が生き残るのに賭けていたわけか。)

執拗に部屋の中央から動かなかったのは、女王ネズミが自身の身を犠牲にしても次の再起の時に賭けていたのだとわかった。


ギリギリと歯軋りしながら迫り来る王ネズミ。

モが正面から体当たりで受け止める。

着込んだ鎧の重さで、王ネズミを吹き飛ばすと、追撃の頭突きを突進と共に繰り出す。


石の壁が出てきて阻止しようとするのを、グが加わった当て身の勢いでぶち抜いて更に加速する。

暴走機関車の様に、土埃を巻き上げながら壁際の王ネズミにぶつかり轟音を響かせる。

ーーーガゴォオン!!!

衝撃と共に部屋が揺れ、王ネズミは壁にめり込み絶命した。


その間に、壁を出すことに集中していた女王にクロとスモールソードローチ、僕で畳み掛ける。


咄嗟に石の槍が飛んでくるが、ダークボールで打ち消し、ラが身を挺して受け止めた所で、ラの影から飛び出して攻撃を仕掛ける。


毒に侵され、袈裟斬りにされ、胴体に穴が開き、息も絶え絶えになったところへ、最後はラが、少し甲殻を凹ませながらもタックルを決める形でトドメをさした。


完全に沈黙した王と新女王。

僕らは皆で顔を見合わせながら、お互いの無事を確認した。

(…完全勝利だ!!!)

「キュゥウ!!」思わず漏れ出る雄叫び。ゴキブリの限界で擦れるような音を出すのが精一杯なのがもどかしい。

「「「「キュウウ!!!!」」」」兄弟たちも、触覚をブンブンと振りながら叫んでいる。



こうして僕らは恐怖と、死が形になったかと思うほど恐ろしかった兄弟たちの敵、ハダカデバネズミの巣を壊滅させた。

生き延びたんだ!


モ、グがクロを胴上げのようにして、ホワイトたちが皆を癒す為にあとを必死について行っている。

ラが、凹んだ甲殻を前脚で器用にさすりながら、スモールソードと共に僕の方に寄ってくる。

僕は軽く前脚を挙げながら、2匹に向かって歩いていく。



生態系ではたまにこう言ったことが起こる。

窮鼠猫を噛むの最上位とも言えるようなこと。滅多に無いことではあるが、それを引き起こしたのが自分であり、今はとにかくこの高揚感と、生の実感に身を任せていたい気持ちだった。

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