僕と下剋上2
「ギュウウウ!!!」迫り来るネズミの首に向けてダークボールを放つ。
ズドォッ!!仲間を呼んだあの厄介なネズミと同じくらいの巨大が横たわる。
戦い始めて数時間ほどしたか…?
暗い穴の中では時間もわからない。
戦略のおかげで、僕らはなんとか耐え凌いでいた。
むしろ、この状況を維持できるなら優勢と言ってもいい。
ーーーが、しかし
ガリガリガリガリ!!!
ネズミの死体が積み重なり、ラに何往復か部屋の奥へとそれを運ばせた頃、ネズミどもが、部屋に新たに穴を開けて侵入しようとしているのか壁が音を立てて揺れ始めた。
(このままだとまずい!!!どうする!!考えろ…考えろ!)
生きたい!という純粋な欲求を原動力に、脳みそをフル回転させる。
戦略だ!アイツらと違うところを武器にしろ!
入れないから穴を開けるのはネズミにとって当たり前だ。
(どうして今までそうしなかった…?そうか!!)
きっと、ネズミにとっても労力が惜しいのだ。
歩いて行けるならその方がいい。
猛禽類はじめ鳥たちだって飛ばなくていいなら飛ばないという。ネズミもきっとそうなんだ!
(なら、歩いて行けるようにしてやればいい。)
「キュ!!ッキュ!!!」モとグに少し下がって敵を引きつけるよう指示を出す。
退けたといってもずいぶん積み重なった死体の隙間から、壁をガリガリとやりだしたネズミ達が見えた。
こちらが陣形を引いた所に気付き、壁を削るのを辞めてドッと距離を詰めてくる。
(よし、上手く行った!!)一か八か捻り出したけど、合っていたらしいな。
雪崩れ込んで来る数匹をクロの麻痺毒が襲う。
姿を消して頭上から不可避の牙を突き立てるのだ。
逃れようもない。
ピクピクと痙攣しだした先頭にぶつかり、躓く形で後続も滑り込んでくる。
纏めてシャドウバインドで固める。
モ、グのボディープレスで、バキボキと骨の砕ける音を響かせてネズミどもが肉塊となる。
「ヂュァアア!!」
ネズミどもの断末魔と、血走った目と青筋をビキビキと立てた恐ろしい顔で迫る後続のネズミの鳴き声が木霊する。
ビリビリと肌を痺れさせるような空気の振動。
少し怯んだ所に、遂にネズミ共の先頭が部屋の中央まで進んできてしまった。
後続は咄嗟にシャドウで影に飲み込むようにした。
最初からこの方法を思い付いていれば!!
…いや、きっと影のキャパを超えてしまっていただろう。
「ヂュヂチヂチチチ!」かなりの大きさと、歴戦の雰囲気を醸し出しているそのネズミは、複雑な声をあげると、仲間を呼んだネズミの様にニヤリとこちらを一瞥する。
すると、ネズミの目の前に鋭く尖った土の杭が現れて回転しだした。
(魔法だと!?)
いや、ゴキブリが使えるのだ。ネズミが使えてもおかしくない。こうなったら魔法対決だ!!
土の杭と同じだけダークボールを出す。
「チギィ!?」ネズミは一瞬戸惑うような表情を見せたが、自分の優位を信じたのだろう。
すぐに元の表情に戻り、土の杭を飛ばしてきた。
ダークボールで迎撃する。どうやら魔法の練度が上がったのか、こちらのダークボールと相殺する形になった。
「ギギィイ!」馬鹿にされたと思ったのだろう。怒りを露わにしながら飛びかかってくる。
ボゴッ!!!ーーードゴォン!!
ぐらぐらと揺れる部屋。横からモの突進をまともに喰らい、壁に挟まれてくの字に崩れるネズミ。
入り口を守りながら、トドメにダークボールで魔法兵ネズミを仕留める。迫り来るダークボールに、最後は信じられないという顔で、目を見開いて絶命した。
「キュウイイイ!!」モが思わず雄叫びのような鳴き声を上がる。
僕も、無い口角が上がるような感覚がある。
(このまま押し切るぞ!!!)
ふらつく体に鞭を打ち、ネズミ共に飛びかかった。