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僕と下剋上

ゴミ捨て場の部屋まで戻り、スモールアーマーローチ3体と、その他の兄弟たちと合流した。


作戦時に頭の中で整理するために、スモールデスローチはクロゴキブリに似ているから〝クロ”。

スモールアーマーローチはヨロイモグラゴキブリに似ているから〝モ”と〝グ”と〝ラ”にした。

タイニーデスローチたちには、タイニー1から3までの番号を振った。


クロを先頭に、斥候として放ち、僕が残りの一同を引き連れて歩く。

モとグは前後でラはタイニー達をその身の近くに置きつつ、皆でなるべく生存率を上げる為の陣形を組んで進むことにした。


タイニー達の中でも、体力のあるもの、力の強いもの、足の速いものと差があったので、それらの特性も考慮した。


暫く進んだところ、兵隊ネズミの詰所付近で気配をじっくりと探る。

中に5いや、6匹は居る。部屋の端の壁際に数匹。

中央に大きな気配があった。


「ヂー!ヂッヂ!」

「チチチチ!」

笑い声の様な鳴き声が通路まで響いている。

ネズミが何か弄んでいる…これは!!

「キュゥ…キッ」間違いなく僕らの兄弟の声だった。

酷く弱々しく、絞り出す様な鳴き声に、僕は触覚が震えて、脚の毛が逆立つのを感じた。


背後から、「キィイイイ…!」小さく押し殺した声がする。兄弟たちも、恐怖ではなく怒りで震えているようだった。


アイツらはなんだ。

食うためでも生きるためでもなく、命を弄んでいる!

しかも僕の、僕らの兄弟を、だ。


真っ赤に染まる視界の中、兄弟たちを振り返り、「チキッ」と、短く小さく鳴いたあと、影に潜り込んだ。


素早く部屋の奥に移動する。

ネズミどもは気付かず、ゲラゲラと笑っている。

片方の触覚をもぎ取られた兄弟が力なく地に落ちるところで、影を伸ばして受け止めた。


そのまま影の中から、シャドウバインド!ダークボール!と心の中で唱える。


かなりの倦怠感と共に、伸ばした影から触手のような影が無数に伸びて、ネズミ共を拘束した。

そして、触手の先から現れた黒い闇があつまり球体になると、音も立てず回転して土手っ腹に風穴を開けた。



進化して暫くした頃に、シャドウやダークの使い道を考えていた時に見つけた新しい魔法だ。


とにかくネズミ共を早く始末するんだ。


「チキキッ!」僕は素早く鳴いて兄弟を招き入れた。


待ってましたと言わんばかりに、凄まじい勢いで攻めたてるクロの麻痺毒と噛みつき、モ、グ、ラが麻痺したところに押し潰す様にぶつかる。

ネズミ共は苦しむ声をあげる間もなく息絶えた。

タイニー達は僕の影の中にとぷんと潜り込み、どうやらやられた兄弟を気遣うかの様に触覚をさわさわと当てている。


部屋の中央、ただ1匹だけダークボールと、皆の激しい攻撃を受けてもまだ耐えているネズミがいた。

図体が他より一回りほど大きく、全身から血を流し、前歯を血が滲むほど噛み締めながら、触手に口を塞がれつつもこちらに怒気を放っている。


シャドウバインドがミチミチと音を立てて緩み始めた。

まずい!残った触手を絡めたが、口元が完全に緩んでしまった。

焦ってモとグが突進するが間に合わない。


全てがスローモーションになる一瞬、ネズミがこちらを嘲笑った様に見えた。

「ヂィイイイイイーー!!!!」咆哮と言えるほどの絶叫。穴の壁や天井が揺れる。

奥からドタドタと大量の足音と気配が近付いてくる。


やられた!!叫び終えた兵隊…隊長ネズミは、モとグの強烈な突撃に挟まれて、バキバキと全身を砕かれて沈んだ。


なんとか迎え撃たないと…。

「チチ!キキキッ!」兄弟に素早く指示を出す。

まだ進化していないタイニーたちと、ボロボロになった兄弟はそのまま影に隠して、皆で入り口を固めた。


先ほど死んだネズミどもの死体を詰んで出入り口を半分ほど塞ぎ、空いている側の天井と壁に、クロと僕がスタンバイした。

モ、グ、ラは3匹で壁となり、影の中の兄弟を守りきる布陣をとった。


守りながらの多対少の戦いでジリ貧になるよりも、入り口付近で向こうの数的有利を無くしてやる事にしたのだ。


ハダカデバネズミのコロニーは恐ろしく大きい。

その中のたった一部屋にとんでもない量のネズミが押し寄せてきている。

その質量で巣穴を揺らしながら迫り来る足音、「ギィイ!ギキギギギ!」激しく聞こえる威嚇の声。


怖い。逃げ場はない。失敗すれば確実に死ぬ。

でも…ここが正念場だ!皆んなで絶対に生き延びてやる!


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