僕と兄弟の進化2
先ほど来たゴミ出しに来たハダカデバネズミを、兄弟たちと影に潜むことでやり過ごした後にそれは起こった。
最近集まったゴミを外に出しに行かないなと思っていたが、今のゴミで絶妙なバランスが崩れたのだろう。
咄嗟に影に潜り直した僕は大丈夫だったが、他の兄弟たちはジェンガが崩れた様に降り落ちてくるゴミに埋もれてしまった。
かなり大きな音だったので、すぐに兵隊役のハダカデバネズミが押し寄せてきたが、部屋の中の状況を見て察したのか、労働役のものを「ギィイイ!」と、叱るように鳴いて去って行った。
労働役は「ヂュッヂッ」と、小さく不満を漏らす様に鳴いたあと、何往復かゴミ出しをしていった。
僕は影から弾き出されると、すぐに兄弟たちを探した。
すると、部屋の端の凹みで隠れていたのか、一匹の兄弟がものすごい速さで現れた。
おお!よかった!しかしすごい身のこなしだ。
目にも止まらぬとはこのことだな。
そう感心しつつ、他の兄弟を手分けして探した。
まだ少し山になっているところで、捨てられた死骸が妙に浮いている事に気づいた。
浮いている死骸を咥えて引っ張る。
とても重たい。そもそもの力としてはゴキブリはそれほど強くないため、脚力でカバーする。
くっ…何とか動いた!
出来た隙間から数匹這い出てくる。
もっとだ!脚に力を込める。
這い出て来たものも協力して下敷きになっていたものを助け出した。
驚くべきことに、何匹かの兄弟が、自らの体を支えにして他の兄弟が潰れない様にしていた様だった。
驚くべきことだ。ヨロイモグラゴキブリなどの例外を除いて、基本的にゴキブリは家族を持たないし、助け合ったりなどせず共食いする生き物なのだ。
異世界だからなのか、そもそもの資質か…そう考えつつ、再会を喜び、皆で触覚を合わせていると、突如足の速い兄弟と、力を合わせていた兄弟たちの体が光り始めた。
これは…!兄弟たちも進化するのか!!
驚き、そして進化した姿が見たいと少しわくわくしつつ、光が収まるのを待った。
そして、光が収まるとそこには一匹のスモールデスローチと、三匹のスモールアーマーローチがいた。
背中の髑髏がより禍々しくリアルな骸骨のデザインになり、体は大きく、脚は長くなったスモールデスローチ。
体の大きさはもうハダカデバネズミと同じくらいにはなろうかという程の巨体となり、硬そうな甲冑の様な装甲を身に纏ったスモールアーマーローチ。
どちらも僕の進化先にもあったものだったため、見た瞬間に理解できた。
これはすごい!戦力の向上だ!
と、喜んだのも束の間、スモールというには大きすぎるのが三匹も居るため、もう隠れるのは無理そうだとすぐに悟った。
まずいな。そろそろここも潮時か?
暫くの間衣食住を提供してくれた部屋を出る時がきたのかもしれない。
今のうちに逃げるか…そう思って、兄弟たちに声をかけ、皆で出口を目指そうとしたところで、ハダカデバネズミの気配がゆっくりとこちらへ向かってきているのを感じたのだった。