婚約破棄してみたら……
きっかけは……
近年流行り出した傍迷惑な婚約破棄文化。
「公爵令嬢ミスリル・ポッテムバー、貴様との婚約を破棄する!!」
紳士淑女が輝く夜会で、婚約破棄が行われた。
叫んだのはウマシカ王国の王太子バーカ。
傍らには魅力的な肉体の美女。
正面にいる婚約者ミレバは、無表情で佇んでいた。
「婚約破棄なんて馬鹿な事をなさる国だとは思いもしなかったな」
そこへ、美しい男装の麗人が現れた。
大国ターラミカ王国の麗しきキララ女王で、ミレバの従姉妹だ。
ミレバの母は、ターラミカ王国の元第一王女で、キララの母の姉でもある。
「確か王太子殿下は、ターラミカ王国の後ろ楯で王太子の地位になれた筈。……でなければ側室の子が王太子になどなれないですからね」
キララ女王は、薄く笑って首を傾ける。
「キララ、殿下は真実の愛を手に入れたらしいわ。きっと身分にも囚われない愛をね」
溜め息を付いてミレバは目を細めた。
「ほう?それはそれは……。あぁ、王太子殿下。その傍らに居るのは真実の愛の令嬢かな?」
「そっそうだが?」
キララに聞かれバーカは慌て答える。
「ならば良い。だが……モストー男爵家なんて貴族は我が国にも、貴殿の国にも存在しなかったよ。代わりに面白い情報を手に入れた」
「高級娼婦館のとある人気娼婦が、妄言や空想が大好きで客を良く騙して懐に入るのを得意としてるらしいわ」
キララとミレバが笑って言う。
「名は、ダーマサスカ。半年前に行方不明になったから店も探していたらしいよ」
キララはバーカの隣に立つ美女に言い放つ。
「なっなに言ってんのよ!?私は男爵令嬢よ!!」
美女は明らかに慌てていた。
「殿下の婚約破棄は承りました。それではごきげんよう」
優雅なカーテシーを披露すると、キララに手を引かれミレバは夜会から退席した。
その後、バーカとダーマサスカがどうなったかは知らない。
王国の森で、人間の骨の一部が見付かったらしい。
それが誰のかは誰も知らない。




