北の奪還作戦
その後、桶とモップを手にすると他の侍女と同じように城の廊下のモップ掛けを行った。
カーミラは気を使って給仕だけでと言ったがフィオレンティーナは怪しまれないようにするためにも…そして、城の内情を知るためにもモップ掛けをしたのである。
城の造りは確かに南や中央に似ているのは城の構内図を見た時に理解したが二つの城と違うのは幾つかの戸が閉じられたままの部屋があることである。
南や中央ならば兵士が控えたりただの飾り部屋なのだが…北はどうも違うようである。
フィオレンティーナはその前の廊下の掃除をしながら
「…南と中央は取れるものの違いがあったわね」
南は農作物
中央は鉱物資源
「それによる違いはあったわ」
それと同じで北もその違いがこの閉じられた幾つかの部屋の中にあるのかしら
と呟いた。
そして、気になるのはオズワンドのあの男であった。
一介の兵士ではない。
オズワンドの王族の臣下…と言うにはジョン皇子と対等に対しているのを考えると疑問が湧く。
だがオズワンドの王族だとすればこの侵略戦争を阻止しようとしている自分の動きを察知しながら見逃すような真似や、ましてや手助けをしようとするはずがない。
フィオレンティーナはモップを掛けながら
「…何者なのかしら」
と心の中で呟いていた。
その日の夜、夜食の給仕を行い昼食同様に服の下に隠し持っていた握り飯と水筒を渡した。
ジョンは少し身体が楽になっているようで数冊の本を枕元に置き、それらを口に運んだ。
昼よりは顔色が良くなっていたのだ。
フィオレンティーナはそれを見ると
「ジョン皇子は読書がお好きなのですか?」
と聞いた。
ジョンは静かに笑むと
「まあ、それもある」
と答え
「けれど、それだけじゃない」
元々は私が良かれと思って考えたことだが…こんな事態を招くとは
「浅はかだったということだな」
と呟いた。
フィオレンティーナは少し首を傾げ
「ジョン皇子が北のためにですか?」
と聞いた。
ジョンは彼女に目を向けると
「ああ」
と答え
「興味があるか?」
と聞いた。
フィオレンティーナは微笑むと
「差支えが無ければ」
と答えた。
ジョンは本を一冊手にしてフィオレンティーナに渡した。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。




