北の奪還作戦
扉を閉め傍で警備に付いている兵士に
「ジョン皇子の体調はかなり悪いので侍女が給仕をしている」
時間がかかるだろう
「一応この城の主だ。そこは気を利かせてあげたまえ」
と言うと敬礼をする姿に笑みを深め
「いやいや、面白い事態になったようだ」
さて敵ばかりの城の中でサザンドラの悪徳令嬢はどうするか
「楽しみだなぁ」
と心で呟きながら立ち去った。
フィオレンティーナはオズワンドの皇子が自分に気付いたことを知らずジョン皇子の元に昼食を置くと
「ジョン皇子…昼食をお召し上がりください」
と告げた。
ジョンはフィオレンティーナを見ると
「…見ない顔だが…食事をするかどうかまで見張ろうというのか」
と苦く笑みを浮かべた。
フィオレンティーナは微笑むと
「いえ、私はカイル皇子の側室でフィオレンティーナと申します」
この様な形での挨拶になり申し訳ありません
とそっと皇子の手を握りしめた。
「ルイス男爵から手紙をいただき貴方様と北と…そしてアイスノーズを守るために参りました」
ジョンは驚いて目を見開いた。
フィオレンティーナは侍女の服の胸元を少し開けて中から握り飯と兵士たちが野宿の際に使う水筒を出すと
「こういうものしか今はご用意できませんが…毒は入っておりません」
侍女長の手製ですので
と笑みを浮かべた。
「今は少しずつ体力を取り戻してください」
ジョンは綺麗に微笑むと
「そうか…皆に感謝する」
と握り飯をゆっくりと口に運び、水筒の水を飲んだ。
フィオレンティーナはそれらを再び服の下に忍ばせると立ち上がり
「貴方を思い生きる人たちの為に」
アイスノーズの為に
「諦めずに時をお待ちください」
と言うと持ってきた昼食をそのままに戸口へと向かった。
ジョンは身体を少し起こしながら
「フィオレンティーナ姫…貴女もくれぐれも気を付けてください」
と告げた。
フィオレンティーナは微笑んで頷き外へと出た。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。




