北の奪還作戦
ジョン皇子の拠点となる北の王城に通じる隠し通路の出入口は王都から少し離れた極々普通の一軒家の中にあった。
その家に一人の美しい女性が住んでおり、ルイス男爵の手紙を見せると
「どうか、ジョン皇子をお願いいたします」
と頭を下げた。
「ジョン皇子は決してアイスノーズの崩壊を考えたりいたしません」
長兄であってもアイスノーズの王に従います
「そのように育てられました」
フィオレンティーナはその女性を見て
「…」
まさか、と思いつつ
「そのために参りました」
ご安心ください
と告げた。
そして、ロッシュを見ると
「城へは私だけが行くわ」
万一の時はこの道を走ってくるから
「この方を守っていて頂戴」
と告げた。
「女の新参者は意外と監視の目がゆるいから」
男の新参者がいるよりは有利なのよ
ロッシュは一瞬「ん?」と思ったが
「かしこまりました」
と答えた。
フィオレンティーナは微笑んで
「今、ルイス男爵とカイル皇子がジョン皇子救出のために動いています」
必ず救います
と女性に言って隠し通路を駆け出した。
女性は涙を落とすと深く頭を下げた。
朝の陽光が昇るとカイルはルイスと共に数名の部下を連れてアルフレッドの北防衛線の部隊と共に王城を出発した。
北の領地からは少人数で隠れるように行動しなければならない。
どこにクラーク公爵とヒューズ子爵の手のものがいるか分からないからである。
ただ、北で味方を手に入れた後は堂々と動き回らなくては単独で城へ乗り込んでいるフィオレンティーナの身に危険が迫るかもしれない。
難しいかじ取りであった。
己たちの身を守りつつも目を引き付けることも忘れてはならないのだ。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。




