北の皇子
『アイスノーズが王を選ぶのです』
…ジョン、貴方は長兄ですがアイスノーズが選ぶ王に従いなさい…
「分かっております、母上」
分かっています
苦しい息の下からジョンは呟き薄く目を開けた。
目の前には重臣の一人であるルイス男爵の心配そうな顔があった。
50代を迎えた壮年の男性でジョンに幼い頃からずっと国の在り方治め方を教えてくれた母親を失った後の心のよりどころである。
「ルイス…この手紙を持ってアルフレッド皇子の元へ行ってくれ」
俺に二心はない
「この手紙は誰にも託さずお前の手でアルフレッド皇子に…渡してほしい」
内乱は避けなければならない
ルイスは「しかし」と言うと
「貴方様と一緒にアルフレッド皇子の元へ救助を求めた方が」
と告げた。
ジョンは首を振ると
「俺が動けたならそれも考えたが…今は無理だ」
頼む
「俺が信じられるのはお前だけだ」
と手を握りしめた。
ルイスはこの年若い主君を見捨てるように城を出ることに抵抗があったのだ。
出来れば身の安全を見守りたいのだ。
しかし、ジョンは部屋の外から聞こえてくる足音に身体を起こし
「行け」
行ってくれ
と戸惑うルイスの背中を押した。
「俺の為に…このアイスノーズの為に」
ルイスは後ろ髪を引かれる思いで振り返ったもののジョンの視線を受け、振り切るように城の抜け道を駆け出した。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。




