背中の紋章の変化
フィオレンティーナは溜息を零しながら
「私が言いだしたことだけれど」
この状況…理由が分からなかったら引くわね
と心で突っ込んだ。
しかし、彼女はカイルの背中の痣を見ると
「…薄くなっている」
と顔をしかめた。
アルフレッドもカイルの背中を見ながら
「俺は自分の背中を見たことが無いから痣の濃さまでは分からないが」
消えかかっているような薄さだな
と呟いた。
フィオレンティーナは冷静に二人を見ると
「つまり、このアイスノーズが崩壊しようとしていることになるわ」
と告げた。
「それも数日でこれほど薄くなっているってことは事態が急速に進んでいるということね」
アルフレッドもカイルも顔を見合わせた。
一刻の猶予もならないということだ。
フィオレンティーナはカイルを見ると
「私が、北へ行くわ」
と告げた。
「ジョン皇子に会って…真意を確かめるわ」
…人と人の信頼は面と向かい合って分かることですもの…
カイルはそれに
「ダメだ」
危険すぎる
「行かせるなら腕に覚えのあるものに親書を持たせていかせる」
と告げた。
アルフレッドも頷くと
「確かに女性の身でそれは俺もカイル皇子に賛成する」
と告げた。
フィオレンティーナは息を吐き出すと
「恐らくオズワンドの人間が王都の中に潜んでいるはずだわ」
ましてクラーク公爵、いえ他の重臣もジョン皇子を王につけようと思っている可能性が高い
「親書を持っていったものを切り捨てることは十分考えられるわ」
と告げた。
それにカイルもアルフレッドもグッと言葉を飲み込んだ。
フィオレンティーナは綺麗に微笑むと
「女だから…女性だから潜り込むことが出来る方法もあるわ」
と告げた。
「私は既に死んでいるはずの女ですもの」
失敗してもあるべき道に戻ったということよ
それにカイルは彼女の頬を両手で強く包み
「それはリサ・フォン・グリューネワルトの道だ」
だが君はフィオレンティーナ・コルダ
「俺の……側室だ」
と告げた。
フィオレンティーナは驚いてカイルを見つめた
アルフレッドも一瞬驚いたものの静かに笑むと
「そう、カイル皇子の側室である自覚は持っていただきたい」
と言い、上着を着ると
「一つ分かった事はジョン皇子、カイル皇子、そして俺の誰が欠けてもアイスノーズは崩壊するということだけは間違いないということだね」
と告げた。
「どうジョン皇子と会うか」
それにカイルもフィオレンティーナもアルフレッドを見つめた。
その夜、アルフレッドの王城に一人の壮年男性が火急で訪れた。
ジョン皇子の重臣であるルイス男爵であった。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。




