3話 この世界
「ねーねー。ソウル君」
「何ですか?」
俺たちは、学園を離れギルドへと向かっていた。
ギルドへ向かう道中、ファズさんが話しかけてきた。
「ファズ君はこの世界のことどこまで知ってる?」
「どこまでっ、と言われても義務教育程度ですよ」
この世界の成り立ちは学園でいやというほど聞かされている。
まず、この世界は大きいアルスマインという大陸がある。
俺は、というかここはその中にある第7女神結界都市だ。
昔は、結界都市などなくアルスマインには自由に人々が暮らしていた。
この世界に生きる人々は、人と人との心をつなげることができる。
握手を交わした人とならどこに至って連絡を取ることができるのだ。
なので、人と人とのつながりが強い世界だった。
人々はみんな楽しく暮らしていた。
しかし、今から1000年前悲劇は起こった。
突如として、空が赤く染まり鉄の塊が襲来した。その鉄の塊が放つ電磁波のようなものによってつながっていた人の心はばらばらに。さらに船のようにも思える形をした鉄の塊が放つレーザーによって、一面が火の海へと変えれれていく。そこでこの世界を見守っていた10女神たちは判断を下した。世界の各地にそれぞれの女神が結界を用い10か所の安全地帯を作成。そこへ人々を非難させた。安全地帯内では、つなぎなおすことで通信は再び可能となったが、ほかの結界都市の人々との交信は不可能となった。
機械文明は結界都市の結界は破ることはできなかった。しかし、やつらは結界が完成する前に種をまいていたのだ。それも10個の結界都市にひとつづつ。種の位置は直径100メートルほどが霧に囲まれ汚染領域となってしまった。汚染領域からは、多くの鉄の塊のような魔物が現れた。
これがのちの機魔である。
機魔は汚染領域から大量に現れ、結界内の人々を襲った。
たくさんの人々が死んでいく中で、女神たちは再び策を練った。
しかし、結論が出るより早く機械文明によって力を封じられ、神機域とよばれる場所へ拘束されてしまう。女神たちは最後の抵抗とし、それぞれの結界へ光を残した。その光は結界内の人々へと注がれ、人々の体へとしみ込んだ。ここで、人々には女神の力が宿ったことになるのだが特別な変化は起こることはなかった。しかし、人類の希望は女神たちの手によって確かに残っていた。各結界内に1人ずつ体から輝きを放つものが現れたのだ。
これがのちの英雄である。
英雄たちはこの時では考えられなかった様々な現象を引き起こし、機魔たちと戦ったのだ。
このとき、英雄たちが使ったものが後々魔法とよばれている。
英雄たちの手によって、各結界内では一時的にとはいえ機魔の進行を止めることができた。
しかし、汚染領域からは未だ人々の体へと悪影響を与える電磁波が出続け、機魔も現れ続けている。機魔を倒すことで電磁波は少しずつだが弱まってきてはいる。だがその変化も微弱なものだ。
人々は最初に侵攻を止めた英雄の名を用い、ギルドを設立。
人々に降り注いだ光は英雄だけでなく全員に宿っていた。光の総量は適合値によって変化し、適合値が高いほど光の総量が増える。光は魔法を使うために必要なものである。今では、魔法を使えるものも増えギルドを通し、汚染領域の探索が行われ続けていた。
今代にも英雄は10人存在し、それぞれが凄まじい魔法を使うらしい。
「といった感じですかね」
俺は、一通りこの世界の成り立ちを話した。
そうすると、ファズは満足そうに笑いこういった。
「うんうん、しっかり勉強しているね。ソウル君は優秀だね。」
「俺が優秀? はは、そんなわけないですよ」
俺は、ファズさんの誉め言葉を素直に受け止めることができなかった。
だって俺は、落ちこぼれなのだから。
俺は顔を曇らせ下を向いた。
そんな俺に、少し困ったような顔をしながらファズさんは聞いてくる。
「どうしたの?大丈夫?」
ああ、やはりこの人は優しい。俺は、暗い表情をしたことを反省し、罪悪感を覚えながら次の言葉をつなげる。
「俺はですね。魔法が使えないんですよ」
「えっ」
ファズさんは驚いた顔をする。
それは、そうだろう。今では、ほとんどの人が魔法を使えるのだから。
俺には魔法がない。そのせいで、学園で行われる模擬戦などでもそれはそれはコテンパンにされた。
この世界では、魔法を使えないものは人類に貢献できないとみなされ、生きていくことさえが困難になる。だから、俺は世界に絶望し、ただ日々流れる時間に流れるまま身を任せていたのだ。
受け止めているつもりでも、思い出すだけで吐き気がする。あきれた教師の顔、さげすむ学園生徒、そのすべてが不快だった。
俺は、またもうつむいてしまう。さっき反省したばかりなのにまたこれだ。
自分の情けなさにも嫌気がさしていた。
そんな時俺は、あたたかなぬくもりに包まれた。
「え?」
「大丈夫、大丈夫だよ。つらかったんだね」
ファズさんは優しく俺の背をたたく。
おれは、ただされるがままになる。
少しすると、地面に水が落ちている。
気づくと俺は涙を流していた。これは、果たして今までのつらさから来ているのか、先ほどまでの死を身近に感じた状況から解放されたものなのか何なのかはわからない。
それでも、涙は流れ続けた。俺はもう止まることができなかった。
久々に感情をこんなにも爆発させた。
その間もファズさんはただゆっくりと背を優しくたたいてくれた。
「その、すいません」
「い、いやあ。元気になったならよかったよ」
一瞬にも、何時間にも感じる時間そうしていたが、どちらからともなく離れた。
お互い少し、気恥ずかしくなったがファズさんが口を開いた。
「と、とりあえず、ギルドに向かおっか」
「は、はい」
そして、俺たちは再び歩み始めた。
しかし、ファズさんはすぐに振り返り、
「あっ、忘れてた。 握手しとこっか」
握手をする。つまり心をつなぐということだ。
心をつなぐというのは、連絡手段の交換のようなものだがこれには欠点もある。
どうゆう条件下かは、わからないが稀に相手の感情なども読み取れてしまうことがあるのだ。
俺は、実際少し迷った。
だが、あって間もないがもうすでに今俺はこの人のことを信用してしまっている。
俺は覚悟を決め手を差し出した。
そして、握手を交わす。
その瞬間、俺は光に包まれたのだ。