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エミールとの再会

 ローラという嫌味な先輩に絡まれていたところに、エミールが現れた。

 彼は私を見て名前を呼んでくれた。


 私も彼に対して「エミール!」と叫んだが、ローラの声に掻き消されてしまった。


「あら、エミール! ごきげんよう!」

「や、やあ、ローラか。あれ、ナタリーと知り合いなのかい?」


「今ちょうど彼女が魔法科の敷地に迷い込んできたみたいで、案内してあげようと思っているところなの。彼女のこと知ってるの?」


 ローラは私のことを喋ってるのに私のほうを全く見ていない。ピンク色のゆるふわウェーブの髪をイジりながら彼女はエミールの顔しか見てなかった。


「あ、ああ。そうなんだ。どうもありがとう。実はナタリーは僕の幼馴染でね」

「あら、そうだったのー! じゃあ私も是非ナタリーさんと仲良くなりたいわー!」

「ナタリー、今時間ある? つもる話もあるし僕が案内しようか?」

「いえ、私がナタリーさんを案内しますわ。女同士で仲良くね! エミールは課題で忙しいでしょう?」


 と、エミールがしゃべるといちいちこのゆるふわウェーブが割り込んで入ってくるせいで私は口を挟めない。


「いや、今週の課題は終わったところだから大丈夫だよ」


 彼はローラへの視線を切って、私の方を見てくれた。


「ナタリー、髪伸ばしたんだね。入学式で見たとき最初わからなかったよ。ごめん」


 彼は低く落ち着いた声でそう話しかけてきた。久しぶりに間近で彼の声を聞いた。


(なんだ、髪型変わってたから気付かなかっただけなんだ。よかった。エミール、近くで改めて見たら、かっこよくなってるわね)


 その時、ローラの顔を見ると、彼女は悪魔のような形相になっていた。エミールは彼女の方を見ていないので気付いていないようだが。


(や、何あの顔、無視しよう。ところでエミールとどう話せばいいかなあ)


 エミールと会うのは久しぶり過ぎて何を話したらいいかわからない。というよりローラがいるこの状況では思いっきり感情を表現するのもなんだか恥ずかしいし、話しづらい。


「エミール、今時間あるの?」

「大丈夫、いやあ、本当に久しぶりだ」

「ごめんねなんか」

「ナタリー、ここじゃなんだから、ちょっと中庭の方まで行かない?」


 エミールも場所を移したがっているようだ。まあ当たり前だ。私も他の人が見てる前で彼と話すのは落ち着かない。


(よかった。これでエミールとゆっくり話せる)


 その時、校舎の方から「魔獣が出たぞー! 北の森に魔獣が出たー!」と叫びながら教師が走って来た。


「北の森の付近に複数の魔獣が現れたらしい。三年生は実践演習も兼ねて一緒に来るんだ! そっちの君は魔法科じゃないよね? 新入生ならすぐに寮へ避難するように」


 教師はエミールとローラにいっしょに来るように指示して、北門の方へ走り出した。

 私は何が起こったのかわからずに、エミールを見た。すると彼は私の顔を見てこう言った。


「ナタリー、久しぶりに会えて嬉しいよ。でも僕たちは行かなければいけない。魔法科の上級生は学園内の平和を維持する役目もあるんだ! また今度ゆっくり話そう!」


 彼はそう言って駆け出していった。


(せっかくエミールと話せそうだったのに……それにしても魔獣なんて出るんだ。学園の敷地なのに、けっこう物騒なのね)


「残念だったわね。ナタリーさん。タイミング良く魔獣が出てきちゃって、エミールは行っちゃったわ。さ、戦力にならない生活科の新入生はおとなしく寮に戻ってなさい」


 ローラはそう言って、教師とエミールの後を追って駆けていった。


(タイミング良くってどういうこと……)


 残された私は仕方なく自分の寮に戻ることにした。



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