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誓いと別れ

 ずっといっしょだと思っていたエミールとの別れの時が突然やってきた。

 彼は明日王都にある寄宿制の魔法学園に行ってしまう。


 あの日から一週間、私たちは会ってなかった。

 そこへ突然彼が訪ねてきた。


「ナタリー、時間あるかな。最後に君に会って話しておきたいことがあってさ。今から少し散歩しない?」

「突然来るなんて……。まあ、少しくらいなら付き合うわ」

「よかった、ありがとう」


 私はなぜか準備万端だったが、彼は茶化さずに喜んでくれた。


「ねえ、ナタリー。僕は今後魔法をまだまだ学んで、将来は一流の魔術師になりたいんだ」

「今でも十分すごいじゃない」

「いやあ、まだまだだよ。いつか世界で活躍するような立派な職業に就きたい」

「へえ、そうなのね。私は家でのんびり紅茶を飲んでいるほうが好きだけど」

「地下室で外国の本をたくさん見たろ? あそこに載ってる動物や植物はほとんどが国外の物ばかりだった。つまり世界はまだまだ広いってことさ」

「そうよね」


「……ナタリー」


「……なに、エミール」


 エミールは私の目をじっと見てきた。

 彼のいつになく力強い眼差しに恥ずかしくなり目をそらしたくなったが、じっと目を合わせた。


「ナタリー! 絶対また戻ってくるから! 僕のこと忘れないでほしい」

「ええ、わかったわ」


(何言われるのかと思ってビックリしたわもう。忘れるわけないじゃない)


「卒業したら、一番にここに戻ってくるよ。」

「いいえ、戻ってこなくてけっこうよ」

「え? どうしてそんなこと言うの?」


 彼は一瞬戸惑った表情を見せた。


「私も行くわ、そっちに」

「え?」

「私も魔法学園に入学するわ。魔法科じゃなくて生活科なら魔法が使えなくても入れるって聞いたわ」

「え? あー、確かにそうだね」

「二年後、私もそっちに行くから待っててよ」


 彼の表情がぱっと明るくなった。


「うん!うん! わかった! 二年後、必ず会おう。僕はその時までにもっと魔法の腕を磨いておくから」

「私も武術をもっと極めておくわ」

「そうだ、サニーの面倒もよろしくね」

「わかってる」


 出会ったばかりの弱弱しい彼はもういない。

 目の前にいる彼は、とても素敵な私の初恋相手だった。




 エミールが去ってからの二年間、私は環境をガラっと変えた。


 基礎的な学問は家庭教師からほとんど学んでいたが、魔法学園の入試に受かるために今までやってこなかった魔法学の勉強を新たに教わった。


 魔法学園は魔力が無くても生活科なら入試に受かれば入れるからだ。もちろん魔力があることに越したことはないのだが、私の場合そっちはもう諦めていたので生活科で必要になるであろう、薬学や工学の本をとにかく読み漁り専門知識を深めた。


 魔法学園では実践的な演習もあるらしい。エミールの魔法を間近で見ていた私は、魔法を使えないことは相当なハンデになることを理解していた。

 そのため、更に厳しい訓練を行い、武術に磨きをかけた。


 彼のことを思い寂しくなった時は彼のいない地下室で一人読書をして過ごした。

 勉強に稽古に大変な二年間だったが、彼も魔法学園で頑張っていることを考えていれば苦ではなかった。サニーも傍にいてくれたしね。


 そして私は15歳になり、無事入試に合格し魔法学園への入学が決まった。


 籠の中の鳥状態だった私が実家を出ることになると思ってなかったので執事やメイドたちはすごく悲しんで涙を見せてくれた。


「うぅ、お嬢様、お元気で」

「長期休暇の時は戻ってくるから、そんなに泣かないで」

「ワンワン!」

「サニーも元気でね。また会いに戻って来るから」


 エミールといっしょに助けた子犬はこの二年ですごく成長し、立派な成犬になっていた。成長していくうちにわかったがサニーは地下室の動物図鑑にも載ってない犬種だった。結局何の犬種かはわからないままだったが。


「じゃあ、行ってきます!」


こうして私は馬車に乗り、はるばる魔法学園に旅立った。


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