番外編:エミールの手紙
~ナタリーへ~
君を初めて見たときの印象は、おっかなくてオテンバな子だった。
でもその印象はすぐに解消されたけどね。
小さい頃の僕は、体が小さくて、よくイジメられてたんだ。
だから虫とか動物ばかり追いかけて遊んでた。
だから公園で子犬がイジメられているのを見つけた時は、許せなかったんだ。
守れる強さなんて無かったけど、なんとかしたいという思いで必死だった。
そうしたら、君がイジメっ子たちにやられてる僕を助けてくれた。
年上の三人相手に立ち向かって、あっという間に倒してしまったよね。
あの時の君は勇敢で本当に素敵だった。
君は僕のことをバカにしたりせずに、まっすぐに見つめて手を差し伸べてくれたね。
僕にはそれがとても、とても嬉しいことだった。
君は学校に行ってなかったけど、いろんなことを知っていたね。僕の知らないことをなんでも知っていた。
君の屋敷で地下室を見つけたときは本当に驚いたし、ワクワクしたよ。
そこで見つけた本のおかげで僕は自分の才能に気付くことができたんだから。
君との勉強と修行の積み重ねの日々は、本当に楽しかった。
僕が魔法を使えるようになると、君もいっしょに喜んでくれたよね。それが僕の頑張る動機だったんだ。
君との武術の稽古は、体力が少なかった僕には相当堪えたけどね。
どんどん強く、綺麗になっていく君を見て僕ももっと頑張らないとって思ってた。大人になると子供の頃のようにはいかない。平民の僕が君の隣にずっといられるわけがないから、それなりに立派な仕事に就かないとって思ってた。
だから、君に相応しい男になるために、僕は今日からこの魔法学園に入学します。
しばらく離れ離れになってとても寂しい。けれど、僕はここで頑張るから。
一流の魔術師になるために頑張るから、それまで忘れないでいてほしい。
二年後にまた会える日を楽しみにしてる。
エミールより




