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エミールからの誘い

 一夜明けて、日曜日。


「ナタリー、それにしてもほんっとうに無事でよかったね」

「おおげさよ、サラ。心配してくれてありがとうね」


 私は自室でサラと話していた。

 先ほどサラが扉をノックする音で起きたばかりの私はまだ寝ぼけたままだった。

 

 昨日はあれから学園に戻り教師たちにいろいろ話を聞かれ解放された時にはもう夜だった。


 その後、寮に帰ってきてベッドに入って、気付いたら朝になっていた。どうやら今朝までグッスリ眠ってしまったらしい。


「そりゃ心配するでしょうよ。今回の魔獣は、この前のより3倍くらい大きかったんでしょ? よく無事だったわねあなた!」

「ほんと危なかったんだって」

「あー、見たかったなぁ。あなたの雄姿」

「全然、蹴りも突きも通用しなくて焦ったわよ」

「そりゃそうよ。バカでかかったんでしょ? その魔獣に立ち向かうだけでもすごいわよ」

「まあ間一髪でエミールが助けにきれくれてね」

「きゃあ! すごい、王子様じゃない!」


 サラは自分の事のように照れて喜んでいる。


「そういえばさ。エミール先輩といっしょにいたビクターさんて何者なの?」

「エミールの後輩らしいわ。いつもいっしょにいるんだって」


 サラはビクターに興味があるようだ。


「そうなんだー。聖魔法を操るなんて素敵よねえ。ナタリーは回復魔法かけてもらったんでしょ? 私も癒されたかったなあ」


 サラは何やら妄想しているようだ、


「ねえ、サラ。それよりローラさんはどうなるのかしら」

「あー、ローラさんね。早朝に王国から兵士がやってきて連れていかれたらしいわ。当たり前だけど学園も退学処分ですって」

「そう……、そうよね」


 その時、ドアがノックされた。


「ナタリーさん。いいかしら? 魔法科の男子生徒が来てるけど。あなたを呼んでくれって」

「えっ! 魔法科の男子生徒?」

「きゃー! エミール先輩じゃない?」


 サラが小躍りしている。かくいう私も心のうちはそうだ。


「いや、ビクターっていう先輩だけど」

「えええ! ビクター先輩!」


 サラはそう叫んで、私より先に部屋を出た。




 寮の前へ行くと、ビクターが一人で立っていた。


(ビクターさん、どうしたんだろう。エミールといっしょじゃないんだ)


「やあ、お二人さん、昨日はどうも」


 ビクターは、軽い調子で挨拶してくる。


「こんにちは」

「ビクター先輩! こんにちは」


 私とサラは同時にビクターに挨拶をした。サラの声は上ずって聞こえる。


「ナタリーさん、腕はどう? 痛みはひいた?」

「はい、もう大丈夫です。本当に助かりました」

「そうか。よかった。えっと、お隣はサラさんだっけ? 君たち仲いいんだね」

「はい! ナタリーとは入学した時から仲良くて! 彼女は私の親友です!」

「ちょっとサラ、どうしたの」


 ビクターの前で張り切っているサラを見て、私は少しニヤけてしまった。


「うんうん、仲がいいのはいいこと」

「あの、ビクター先輩、今日はどうしたんですか?」

「そうそう、実は先輩から手紙を預かっててね。君に渡してきてくれって」

「えっ! エミールから!」


 私はビクターから一枚の便箋を受け取った。ほんのわずかにフローラルな香りがする。便箋の表面にジャスミンの香が塗ってあるようだ。


「じゃあ、確かに渡したから、僕はこれで」

「ありがとうございます」

「ビクター先輩、またー!」


 サラはビクターに手を振っている。


(サラって意外と積極的なのね)




 私はサラと自室に戻り、便箋を開けた。緊張して読むのをためらっていたが、サラが早く読めとどうしてもうるさかったので。


 手紙にはこう書いてあった。




              ~ナタリーへ~


入学してからちゃんと話す機会がなくてごめんね。

僕は今まで忙しかったことを言い訳に君のことを(おろそ)かにしていた。

今回の事件が片付いたことで時間が出来たので君と会ってゆっくり話がしたい。


まだ体調が優れないかもしれないが、今日の午後2時に北門へ来てほしい。


                            エミールより




 手紙を読み終えた私の心は踊っていた。さっそく準備に取り掛かることにした。


「サラ! ちょっとお昼からエミールと会ってくる!」


 私はサラにそう伝えてシャワーを浴びるために部屋を出た。


「え! うん、身体はもう大丈夫なのー?」


 後ろからサラの気遣う声が聞こえたが「ぜーんぜん大丈夫ー!」と大きな返事をしてシャワー室へと駆け込んだ。




 そして午後になり、いつもより気合いを入れてメイクをした私は、サラに見送られて寮を出て北門へと向かった。


 せっかくだから、かわいいお洋服でも着ていきたかったけど、あいにく学園内では基本的に制服着用が義務付けられているので制服のまま出かけることにした。




 北門へ着くとエミールが待っていてくれた。


 私の心臓の鼓動は高鳴っていた。


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