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敵の正体

 私はローラといっしょに西の森をさまよっていた。


 西門に行くと門はもちろんしまっていたが、横にある通用口から外に出ることができた。立ち入りが制限されているはずだから、普通鍵が閉まっているはずじゃないのだろうか。


 サラはどうやってここを開けて外へ出たんだろう。わずかな疑問があったが今は彼女を追いかけることが先だった。


「ナタリーさん、この前魔獣と出会ったところは覚えてるかしら?」

「ええ、確かここから10分くらい歩いたところでしたけど」

「そこにいるんじゃないかしら、走ればすぐに着くわ。行ってみましょう」

「わかりました」


 私たちは走って森の奥へと向かった。


 辺りはやけに静かで鳥の声一つ聞こえてこない。なんだか不穏な空気を感じた。


「確かこの辺りでした。この前魔獣と会ったのは」

「そう、それにしても魔獣を蹴りで倒すなんてすごいわね。噂は聞いたわよ」

「いえ、そんなに邪気の強い魔獣じゃなかったのかも。小さかったし」


 少し間をおいて、ローラは急に声色を変えて怒鳴るように喋りだした。


「ふん、まあそうよね。あれくらいの魔獣は魔法科の上級生なら簡単に倒せるわ。あんなたった1メートルほどの魔獣倒したくらいでいい気にならないでくれる?」


(急にどうしたんだろう。この人またケンカ腰になったわ)


「あの、魔獣の大きさ誰かから聞きましたか?」

「え? あー誰だったかしら、みんな噂してたから耳に入って来たのよ」


 1メートルの魔獣は魔法科の上級生にとっては雑魚かもしれないが、生活科の新入生にとっては脅威な存在でしかない。そんなのが学園の敷地内にいたと知ったら、みんな怖がってしまうだろう。

 だから話に尾ひれがつくことも考え、みんなには小型犬くらいと言っておいて大きさはぼかしていたのだが。


(気にしてもしょうがない。とりあえずサラを探そう)


「サラー! どこにいるのー!」


 私は大声で叫んだ。


「彼女はここにはいないわよ」

「え?」

「ここには誰も来ないわ。あなたの大好きなエミールもね」

「ローラさん、一体どういうことですか……」


 ローラは私から少し離れて、何やら詠唱を始めた。手には邪悪なオーラが出てるのが見える。


「こういうことよ。あなたにはここで消えてもらうわ」


 彼女が手を振りかざすと、後ろの繁みから巨大な生物が出てきた。


 3メートルはあろうかという巨大な熊のような体格で、全身に邪悪なオーラを纏っている。


 魔獣だ! それもこの前のとは比べ物にならないくらい巨大で邪悪な。


「え! え! ローラさん! これは!」

「素晴らしい出来でしょう? この子は私が呪いをかけて作り上げた魔獣よ。あなたにはこの子のエサになってもらうわ。あなたがいなくなればエミールは私のものよ」


(エミールですって? そのためにこんなことを……この女、絶対に許さない!)


「ふざけないでください! これは呪いの闇魔法ですよね! こんな闇魔法を使うことは違法ですよ? 罪もない動物にこんな呪いをかけるなんてひどい!」

「おだまり! 邪魔者には容赦しないわ! さあ、彼女を食べておしまい!」


 大熊のような魔獣はその巨体を震わせ、私の方へ近づいてくる。


 ズンッ! ズンッ!


(魔獣に罪はない。でもこの魔獣を倒さないとどうしようもない)


 私にはこんな巨大な生物と戦った経験はない。だがやられるわけにはいかない。


(エミールとまだまともに喋ってないのに、学園生活が終わってたまるもんですか)


 私が身構えると同時に、魔獣は地面を蹴り私の方へ突っ込んできた。


(巨体なのに早い!)


 魔獣は大きな右腕を向かって振り下ろしてきた。


 私は後ろに飛び、魔獣の一撃をかわした。


 魔獣の一撃によって地面は深く抉れている。あの一撃を食らったら終わりだ。


 この前の魔獣とは、各段に強さが違う。カウンターで蹴りを入れるなんてマネはとてもできない。


(この子もなんとか浄化してあげたいけど、この大きさだと手加減するのは無理ね)


 腕を振り回しながら、突っ込んでくる魔獣の攻撃をかわしながら、どうにかして止める方法を考えていた。


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