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ナタリーの評判

 魔獣に襲われた薬学演習の翌日。

 私とサラは放課後、寮の部屋でずっと昨日の事を話していた。


「あの魔獣って外部から侵入したんじゃないよね。だって正体は森に住んでるウサギだったんだもん。ナタリーもそう思うでしょ?」

「うん、森には強力な結界が張ってあったみたいだしね」

「そうなのよ。だから魔獣が入ってこれるはずがないのよ」

「うーん。生物に呪いをかけて魔獣化させるみたいな闇魔法あったよねえ?」

「えーっ! そんなの知らないけど。何の本で見たの? 昔の本?」


(そうか。あの地下室にある本は一般的に知られてない物も多かったんだ。話さないほうがよかったなあ)


「なんだったか忘れたけど、昔本で読んだ気がするのよ」

「でもそういうのって禁術になってるんじゃないの?」

「まあ、そうよね」


 結局、魔獣発生の原因は考えてもわからず、学校側は今後調査していくと言っていたのでそこは任せるしかないのだろう。




 何やら、ざわざわと寮の中が騒がしくなった。気になってサラと二人で廊下に出てみると、何人かの生徒が騒いでいる。


「魔法科の上級生が学園内を見回りしてるんだって!」

「頼もしいわ! 魔法科の先輩たちが見回ってくれるなら安心ね」


 私とサラは寮の外へ出てみた。寮の外にはウワサを聞きつけた他の女子生徒たちが十数人いた。


 生活科の校舎から寮の方へ魔法科の上級生たちが歩いてくるのが見えた。


「ナタリー、先頭の人エミール先輩じゃない?」


 サラは私にそう言って、明らかにテンションがあがっている。


「うん、エミールね。どうしたんだろう」

「昨日のことがあったから心配してくれてるんじゃない? ナタリーに会いに来たのかも!」

「まさか、だって他の人もいっしょじゃん」


 エミールの隣には、あのピンク色の髪のローラという女子生徒がいる。


(またローラって人が隣にいる。いつもいっしょにいるのかなあ)




 エミールたちはこちらの方へ近づいて来た。そして他の女子生徒が大勢いる中で、私とサラの前まできた。


(やだ、こっちに来るのね)


「ナタリー。話は聞いたよ。大丈夫だった? ケガはなかった? 本当に無事でよかった」


 開口一番、エミールは私の心配をしてくれてとても嬉しかった。ただ他の女子生徒たちが大勢いる中で話しかけてきたので、少し周りの目が気になった。


「やだ、エミールさんがナタリーさんの体調を気遣ってるわ」

「ナタリーさんてエミール先輩と仲いいのかしら?」


 周囲の声が嫌でも聞こえてくる中、私はどう返事をしたらいいか迷った。


「あ、えーっと、エミール。私は大丈夫よ。ケガもないわ。心配してくれてありがとね」

「昨日からずっと気になってたんだ。けど魔獣を倒すなんてすごいじゃないか。さすがナタリーだよ」

「あはは、たまたまよ。たまたま」


 その時、エミールの後ろからお馴染みのピンクのゆるふわウェーブが出てきて、エミールと私の間に割り込んできた。


「ごめんなさいね! 私たちは見回りの途中だから悠長に話してる時間はないの。そろそろ魔法科の校舎へ移動する時間だからその辺にしてくださる?」


 ローラは私の顔を睨みにつけながらそう怒鳴って来た。


「ええ、見回り頑張ってください」


 私は真顔でそう告げると、エミールにアイコンタクトをした。

 エミールもこちらを見て、ごめんね、という表情をしてくれた気がした。




 その後、私は寮の他の女子生徒たちから質問攻めを受けたのは言うまでもない。

 こうして、私がエミールの幼馴染であることや、ここへ入学した動機が瞬く間に広まってしまった。


(はあ、本当に恥ずかしい。もう、みんなの前で話しかけてくるなんて。それにしてもあのローラって先輩は本当に気が強いわね。なんだかエミールが気の毒だわ)


 エミールは人がいいから、あのローラとかいう先輩に振り回されているのかもしれない。

 なんとかしてあげたいけど、新入生の私が出しゃばると話がややこしくなるだろうし、とりあえずエミールと落ち着いて話す機会がくるといいと思った。


読んでいただきありがとうございます。


ご意見、ご感想などもいただけると嬉しく思います。



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