元凶
頂上の穴から覗いたたユリウス達は、そこが魔を生み出している場所だとはっきりと本能でわかった。
それに、いくつもの骨があった。竜だ。
「竜の墓場か」
何億年も前から、竜はここで死んで行ったらしい。竜は生態系の頂点であり、魔素の塊だ。その竜が死んで魔が離れて空気中に帰って行き、世界に散らばって循環する。
そうしてこの世界は成り立っているのだ。
その穴の底に何体も重なる死体や骨に、そっと手を合わせる。
と、穴の周囲の壁に、いくつか穴が開いているのが見えた。その内のいくつかは、特別濃く魔が凝り、瘴気となっていた。
それを見てから、頭を引っ込める。
「還った魔がここから世界中に回り始めるのか」
尊い物を見た、そんな気持ちだ。
が、ユリウスはそこで気付いた。
「あれ?ここからどうやって?もしかして、迷宮はここにつながってる?」
迷宮は魔に満たされている。大きい所ではそこに魔物が生まれ、植物を変化させ、鉱石を産む。その先がどこにつながっているのか、それはこれまで謎とされ、資源としてそれらをとる仕事をしている探索者達の求めるものとなっていたが。
「これ、公開したらがっかりされるかも」
兵がポツンと言って、全員が後ろめたい気分になった。
「じゃあ、国の上の方にだけ、こっそりと報告するとか」
「だな」
すぐにそう決まった。
「で、どうしてだ?魔が溢れたのは」
還って行く魔が幾つかの穴の入り口で濃くなり、穴の縁まで上がって来た魔は、ヘリを越えて外へ流れていく。
「なあ。魔物も出ない、鉱石も出ない、そんな旨味のない迷宮って、このところどんどん塞がれてるよな。
もしかしたら、それが原因かも」
ユリウスの考察に、全員が考え込み、そして、青ざめた。
「本当は迷宮から世界中へ還元される魔が、せき止められて濃くなって、頂上やまだつながっている迷宮から溢れて、それでこういう事態を引き起こした?」
「じゃあ、ある種対処は簡単じゃないか。塞いだ迷宮を、復活させればいいんだよ」
ユリウス達は急いでそれを報告するために山を下りた。
「というわけで、各国で塞いでいる迷宮の入り口を解放すれば、魔が正常に循環されて、元に戻るんじゃないかと思います。
なので、ここの魔道具も最低限稼働させるだけで、早々に止める方がいいですね。魔の全体量が減るとかするかもしれないし、その結果がどうなるのかは不明です。魔術が使えなくなるとかかも知れないし」
ユリウス達の報告は、集められた各国代表者を慌てさせた。
「では、急いで迷宮の入り口を解放するように進言しよう」
「ああ。じゃあ、急いで帰った方がいいな」
そこで遠征隊は急いで各国へ戻る事になり、魔道具はドルトイの避難場所付近のみ稼働させることになった。
それも、頃合いを見て、止める事になる。
「迷宮の入り口を開けたらまた来ます」
そう言いおいて、忙しく皆、国に引き上げて行った。




