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魔の発生地点

 エミリが死体のようにグッタリとへばり、皇太子とロイがつきっきりで看病している。

 それをよそに、持って来た魔道具に改良を施してエミリの膨大な魔力で起動させた魔道具を一番魔の濃いポイントを囲むように配置して来た者達の報告と、魔の濃さの変化についての計測結果について、話し合っていた。

「効果が出ておりますな!」

「これで魔は薄くなって、どうにか上手く行きますね」

 言い合う各国の代表者達だったが、ユリウスは山に目を向けて言った。

「薄くなったら近付けますね。やっぱり中心地点に行きたいんですけど」

 セルジュはユリウスに咎めるような目を向け、ユリウスは慌てて言った。

「興味じゃなくて!どうやって魔が濃くなるのかわかっていれば、次にも対処が簡単だし、そもそも、予防もできるかもしれないじゃないか」

 それに、大方は同意はしたが、危ないというのは共通しており、ほとんどの者が行く事を危惧している。

「だから、何人かだけで見て来るよ」

「魔が薄くなっても、魔物は減ってないんだぞ」

「大丈夫。あれがある」

 ユリウスが言うと、セルジュもその強力な結界を思い出した。

「あれか」

「なんです?」

 アラデル以外の者は、それを知らない。

 教えたい気もするが、今後もし戦争などになった時にそれを使われてはアラデルが困る。

「婚約者からのお守り、です」

 セルジュは笑顔で誤魔化した。


 セルジュは流石に危ないからと留守番になり、ユリウスとアラデルの魔術兵とアラデルの兵とでできたグループで、そこを目指した。

 勿論、魔術にも物理にも効果のある結界は、こっそりと携帯していた。

 途中で魔の濃さを計るが、魔道具は効いていた。

「魔を吸い込んで浄化した空気を出すんでしょ?大したものね」

「壊れたら困るな」

「そのためにも、原因を調査しておかないと」

 魔物化した動物を適当に殺して魔石を取りながら進む。

 人に害を及ぼすほどではないくらいに魔は抑えられているところの浄化の魔道具を、さらに奥へと設置し直しながらのものだ。

 一緒に道案内がてら来たケインが、

「この辺、空気が重くて、呼吸する事すら大変だったんだ」

と、周囲を見回しながら言った。

「山から魔が濃くなってきたらしいけど、思い当たる何かはある?」

 ユリウスに訊かれ、ケインは首を傾けた。

「さあ。でも昔から、あそこはほかより魔が濃いから瘴気もあったし、強い魔物もいたから、立ち入る人はいなかったんだ。それについての伝承とかも、聞いた事は無い」

「ふうん。来た時にはすでにそういう状態だったという事かな」

 ユリウスはそう言って、考えながら先に進んだ。

 やがて、山の頂上付近に辿り着き、計測の結果、やはり魔が一番濃いのは、頂上だというのがわかった。

「魔道具を稼働させながらしか、ここには立ち入れないな」

 浄化の魔道具を囲むようにして、ユリウス達はそこにいた。

 頂上は火山の火口のようになっていたが、噴煙などは上がらず、代わりに、瘴気が立ち昇っている。

 その火口の中を覗く。

「あれか!」

 ユリウスはそれを見付け、なるほどと思った。


 セルジュやザーイ達留守番組は、時々山を見上げては、軽く嘆息していた。

(ユリウスのやつ、大丈夫かな。まあ、あの妙に強力な結界も浄化の魔道具も持ってるけど。

 あいつの事だからな。夢中になって、単に足を滑らせて山から落ちるとかいう事もありそうなんだよなあ)

 その点をしっかりと、一緒に行くメンバーには言い含めてあるが、それでも心配だ。

(それにしても、ユリウスの作る物は凄いな)

 ドルトイの移転先周辺は、すっかり魔の濃さが戻り、グッタリしていた魔に弱い者も元気に起き上がり、周辺の魔物は遠征して来た皆で狩って安全になっている。

「セルジュ・ディートリヒ殿。あなた達のおかげです」

 ザーイがセルジュに近寄って来て言った。

「魔道具といい、薬といい、すっかりと助けられました。そちらの大陸でも、特にあなた達アラデルの方には、感謝しています」

「そう言っていただけると、こちらも来た甲斐があります。今後は両国で、国交を開いて上手くお互いに発展していきたいですね」

 にこにことして、握手をかわす。

 その時、誰かが言った。

「帰って来たぞ!」

 皆が、ユリウス達を出迎えた。




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