共同作戦
セルジュはすぐにほかのチームに「集まれ」という合図の狼煙を上げさせ、他国から遠征して来たチームを集めた。
最初は魔人に対して身構えていたが、ザーイの話す昔話と同じ伝承が残っている国もあるのと、現実的にドルトイが濃い魔に脅かされている事で、納得した。
そして、セルジュが中心となって、作戦を説明し、協力を呼び掛けた。多いのは、「そんな事ができるのか」「できるのならば協力しよう」だったが、やはり教会から来た神兵がいい顔をしなかった。恐れ多くも聖女様を魔力タンク代わりにするとは罰当たりな、というわけだ。
そもそも、彼らが専売特許にしていた浄化の魔術を、聖魔術として魔術のひとつだとしてしまった事にも、彼らは怒っているのだ。
「だったら自分達でさっさと浄化しに魔大陸へ遠征しておけばよかったのに」
誰かが小声で思わず呟いた言葉が意外と響き、神兵は真っ赤になって目を剥いて怒り、聖女は詰まらなさそうにしながら、
「暑いー。もう嫌ー。帰りたいー。でもクーラーないからなあ」
とぼやいている。
そこでユリウスが囁いた。
「やってくれれば、そのクーラーというカデンを作りますよ」
エミリはガバリとユリウスの方へ振り返った。
「マジ!?」
「まじ?あ、本当、マジ、マジ」
「やる!」
「聖女様!!」
「あたしがやるって言ってんだからいいでしょ、もう。
大体、やらないと皆困るじゃない。解決できないんでしょ?」
神兵達は悔しそうに俯いて口を閉じた。
そしてエミリは自分で自分の首を絞める契約書にサインしたのだった。
必要な材料を遠征して来た皆で集めたが、各国共精鋭を送って来ていたので、驚く程スムーズに集まって来る事にユリウスは驚いた。
そしてそれを錬成しながら魔式を刻みつけ、出来上がったそれらを組み立ててまた違う魔式を刻み込む。
そうしていくつもの魔道具を作り上げた。
「まず1つを起動させて、置く。それから少しマシになって来たら、もう少し奥へやる。この繰り返しだな」
ユリウスは軽く言って、
「さ!聖女様、お願いします」
と魔道具の山を指した。
40個はあるそれに、エミリの顔はひきつった。
「想像より多いんだけど……?」
「大丈夫。弱めにして数を多くする作戦だから、根こそぎ吸い尽くす勢いはないです」
「あんた、あたしの事恨んでるでしょ!?」
「いいえ、別に?でも、聖女様が遺憾なく力を発揮できるように僕は手を尽くして来たつもりですよ?ドライヤーとかレンジとか――」
「ああ、わかったわよ、もう!」
指を折って数え始めるユリウスに、エミリは癇癪を起こし、皇太子とロイはおろおろとエミリをなだめようとしたり、ユリウスを睨んだりを繰り返した。
「貴様!」
「いいんですか?各国が共同で召喚の為にと溜めていた魔石を勝手に使用して聖女を召喚しておいて、その聖女が贅沢してただけで何もしないまま終息してしまって。せめてこのくらいは役に立ったと形を付けた方が得策でしょう?」
セルジュがにこにこしながら皇太子に言い、各国からの代表者は、厳しい顔で同意するように頷いている。
そういう空気の中、エミリは魔道具の山に向かって、ふとユリウスに顔を向けた。
「こういう方法がとれるんなら、何であんたは中途半端とか能無しとか言われてたのよ」
それにユリウスは苦笑した。
「ベルルギウスの貴族家では、攻撃魔術以外は価値が認められていないんです。僕は魔式の解析や構築は得意ですが、攻撃魔術は魔力がそう多くないので苦手なんですよ」
「ふうん。家電を作ったりできたのはあんただけだし、あんたは凄いと思うけどな。まあ、こっちの価値観はわからないしね」
そう言って、手近な1つを手にした。
エミリの洩らした予想外の言葉にユリウスは呆然としていたが、慌ててエミリに言う。
「魔力を注入して下さい。起動して安定したらそこのランプが点きますから、注入は止めていいです。後は勝手に周囲の魔を吸い込んで行きますから。
稼働を始めたら、設置班は順に出発してください」
エミリは魔力を込め――こめてもこめてもランプが点かないので焦り出した頃にやっと点いた。
「はああ、はあはあ。意外と魔力がいるのね」
「ははは!聖女様なら大丈夫!さあ、次行きましょう!」
こうして作戦はスタートしたのだった。
そしてザーイとケインは、
「あの2人は、敵に回したら怖いかもしれない」
「向こうの大陸の人って怖いな、父上」
と小声で話していた。




