扉
誰もいない部屋で蝋燭に明かりがフッと灯る
ギィ…と蝶番が音を立て、一つしかない扉がゆっくりと開かれる
現れたのは大きな布を被り、顔を隠した人物
空気が変わり、緊張が走った気がした
その人物は片手に火の付いた蝋燭を持ち、片方の手で布を持ち、燃えないようにしていた
ミシッと音を立ててその人物は椅子に座り蝋燭を燭台に置いた
部屋に静寂が戻るとその人物はまるで誰かに話しかけるように語り始めた
男とも女ともとれる声で
「語りましょう、事の始まりを、遠い昔の物語を…」
「それは、遠い昔の物語。今はもう存在しない国の出来事」
「その国では、沢山の奴隷が虐げられていました」
「とある日に、一人の王族がこう述べました」
「『なぜ、私たちは同じ人を家畜と同じ扱いするのだ!』と」
「それを聞いた他の王族や貴族は指を指してゲラゲラと下品な笑いを浮かべました」
「その話はあっという間に国へ広まり、その王族は秘密裏に処刑されました」
「そして、その王族へ仕えていた使用人や奴隷も同じように処刑されました」
「ある使用人は指を一本ずつ折られ、激痛に歪んだ顔をしながら死にゆきました」
「また、ある使用人は首に縄をかけて城内を引き摺られ、晒し者にされました」
「また、奴隷達は他の奴隷よりも良い扱いだったため、王族の気に触ったのか、ある者は生きたまま竈へ入 れられ、またある者は花を散らした挙げ句、腹を裂かれて死に絶えました」
「それから何年経ったことでしょう。国には疫病が蔓延したのです」
「王族達は疫病に罹ることを恐れ沢山の奴隷や使用人を殺し、その血を神へと捧げたのです」
「しかし、効果はありませんでした」
「頭を悩ませた王族達は貴族達にまで手を出しました」
「ある者は鉄の処女に入れられ苦しみ」
「また、ある者は断頭台で右脚、左脚、右腕、左腕の順に切り落とされ、苦しみながら首を切り落とされま した」
「国の半分が死に絶えた所で王族達は正気を取り戻しました」
「そして、自分達のしたことの大きさに気が狂ってしまいました」
「ある王族は自分の指を噛みきり」
「また、ある王族は首を括ってしまいました」
「そうして王族も半分まで数を減らしてしまいました」
「ある日、国王はかつて処刑した一人の王族のことを思い出しました」
「『もしかすると、その王族が疫病を蔓延させたのでは?』と考えたのです」
「そして、国王はその者が眠る部屋へと入り供養することで国の混乱を収めることにしました」
「『では、あのモノのいる部屋へ行ってくる』そう告げたまま、国王はかえっては来ませんでした」
「違和感を覚えた貴族と王族達は全員であの愚者の、いいえ、愚者であったものが眠る部屋へと入りました」
「ギィ……と軋む音を立て扉が開かれました」
「そして、その場にいた全員が息を飲みました」
「ある者は吐き気を催し、またある者は気を失いかけました」
「その場には、異常な光景が広がっていたのです」
「愚者であったものは肉が腐り、所々骨が見えます。瞳は腐り落ち、周囲に異臭を放っていました」
「しかし、それ以上に恐ろしかったものは、たった数日前に行方不明となっていた国王でありました」
「ふくよかだった筈の手は痩せこけ、苦しみに満ちた表情をしていたのです」
「あまりの異常さに一人の貴族が部屋へと足を踏み入れると、数人の貴族と王族が足を踏み入れました」
「するといきなり部屋の扉が閉じられ、中にいた数人が閉じ込められました」
「………………………」
「暫くの沈黙のうち、ギィ………と音を立ててまたもや扉が開かれました」
「其処にあったのは見るも無惨な死体のみ」
「見たものには不快感と吐き気を催させる姿をしていました」
「しかも、それはさっきまでは生きていたモノ…いいえ、生きていた人間でした」
「その光景を見て、気を失った者もいました」
「その光景を見て、気を失わなかった者達は全員で、うぅっ…と、口元を抑え、胃のなかの物が戻ってきそ うになったのを抑えていました」
「生き残った王族と貴族はその部屋を後にしました」
「…さて?其処には一体何があったのでしょうか?」
「ただの死体なのか、それとも別の何かだったのか…」
「それは、誰にも知ることは出来ません…」
「何故ならば、その国は生き残っていた筈の王族と貴族も全員死んでしまったから」
「ある王族は突然死」
「また、ある王族は暗殺」
「とある貴族は毒殺」
「ある貴族は銃殺」
「死に方は違うけれど、あの場にいた全員が死に絶え、その一族も滅亡してしまいました」
「きっと、視てはいけないモノを視てしまったのでしょうね」
「今となっては、その国はおろか城も残ってはおりません」
「けれども、その城跡にはきっとその視てはいけないモノがいるのかもしれません」
「決してあってはいけない扉が視える時は、あなたも気を付けて下さいね」
「もしかすると、あの者達と同じ運命を一族が辿ることになるかもしれません」
「…おや?彼処に扉なんてありましたっけ?」
ギィ…
その人物が語り終わると
フッと蝋燭の明かりが一つ、消えてしまいました
すると、壁に語りかけていた筈なのに、壁だった所から人形が出てきました
人形の種類はフランス人形、操り人形、くるみ割り人形…そして、人間の頭部…
あまりの異常さに、窓を覗いていた私たちは音を出してしまった
その瞬間、その人物は布だけを残して消えてしまいました
部屋に残ったのは『鉄の処女』ただ、一つのみ
他の物はなくなり、人形達もなくなってしまいました
不思議に思っていると、後ろから声をかけられた
『こっちにおいでよ、視たんでしょ、君も』
終
どうだったでしょうか?まぁ、矛盾だらけだろうし、現実的では無いですね。(そもそも二次元ですし)
周りからは『グロい』『こわい』と言われたので、一応ホラーやスプラッタは入れておきました。(こんなもんじゃねぇと言われても困ります…)
楽しんで頂けたら幸いです