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愛されヒロインはモブを選んだ

作者: MAKS⁉︎

♪♪♪


 聖王歴351年カフェイン王国の辺境に位置する男爵家に1人の男の子が生まれた。

 その子はサドリーと名付けられ、優しい両親と二つ上の兄に囲まれ幸せに暮らしていた。

 そこまで裕福でないながらも、領民と畑を耕し、友と語らい、兄の背を追いかける充実した平和な日々だった。


 13歳になった時、転期が訪れる。光属性の魔力を発現したのだ。

 光は初代聖王も使ったとされる希少属性で、これには家族も領民たちも大喜びだった。

 

 カフェイン王国では光属性の魔力を発現させた者は15歳になると王都にあるトボル魔法学校に入学しなければならない。扱いの難しい光属性について学ばせるため、貴賤問わず王都へと集められる。


 トボル魔法学校に通う事ができるというのは大変名誉で、この国に生まれた人ならば誰もが一度は行ってみたいと夢想する事だろう。

 トボルに行って光属性魔法を使いこなせるようになれば一生安泰と言われる程だ。


 ついに15歳となり王都へと向かう馬車の中でサドリーは全てを思い出すのだった。


♪♪♪


「ここってマンガの中の世界じゃねーか!」


 学校の案内書を読んでいて不意に全てを悟った時、サドリーは思わず叫んでいた。

 学校に何処か既視感があると思っていたんだが、俺には前世の記憶というのが残っていたらしい。


 そのマンガのタイトルは……なんか長ったらしいのが付いてたはずなんだが忘れた。でも内容は大方覚えているから大丈夫だろう。


 主人公である平民の女の子が光属性の魔力を発現させてトボル魔法学校に入学して、色々な騒動に巻き込まれながら逆ハー形成していくって感じだ。


 ……うん。おそらく分類としては少女マンガかな。


 いや、女子も少年マンガを読むし男子も少女マンガを読む。オッサンだってニチアサを楽しみにして良いんだし普通普通。

 ま、そんな事はどうでもいいか。


 問題なのは男爵の次男坊と言うサドリーなんてキャラは見たことも聞いたこともないって事だ。

 マンガの中の年号なんて気にした事がないからまず時代が違う可能性だってあるが、それにしたって純血派でも無い貴族の次男なんてモブちからがカンストしてる。


 ちなみに純血派ってのは代々光属性の魔力を発現させている由緒ある家柄の人たちの事で、非常に珍しい平民出身のヒロインと関わるのは大抵コイツらなんだ。


 別に貴くも珍しくもない俺たち普通の貴族に一般生徒役が振られるって訳だ。


 そんなモブに前世の記憶が戻ったとして、一体どうすれば良いんだ?

 ヒロインええ子やんってエセ関西弁こぼしながらニヤニヤ読んでいただけの俺には特に出来る事が思い付かないんだが。

 しかも完結するまで読んだ記憶も無いし。大丈夫?ちゃんとハッピーエンドだよね?



 散々悩んだ結果、しがない貧乏貴族にはどうすることも出来ないと言う結論に至った。

 マンガでもモブには特別大きな問題が起こる事もなく、登場人物を助けてあげたいって意欲も湧かない。


 悪役には悪役たる所以があるし、ヒロインも逆ハー用員もなんやかんや全員楽しそうだと思う。

 俺は多分自分の事で精一杯よ。

 

 こうしてサドリーは何の役にも立たない前世の記憶を携えて1人王都の門を潜るのだった。




$$$





「よろしくお願いしまーす。」


 案内書通りに学生寮に入り、教科書を揃え、制服に着替えて入学式へ向かう。


 我々のような貧乏貴族に専属使用人なんて大層な人が付けられるはずもなく、慣れない王都で1人生活していかなければならない。

 ただまぁ、こういうのはやってみれば意外となんとかなるもんだ。


 生活自体は大丈夫としてだ。やはり問題はヒロイン達と同学年になっていた事だよ。


 もーー、どうするよコレ!


 入学式で生徒会長見たことあるなぁって思ったら新入生代表はこの国の王子様だったよ。名前はカイニス・オルデラン。カイニス様とお呼び。

 そしてヒロインは遅れて式場に入ってくる所だったんだろうね。モブにはそんな気配何も感じ取れなかったけど。


 そんなドッキドキの入学式の後にクラス発表がある。メンバーを見て軽く目眩がした。

 ヒロイン達と同じクラスだったんだから。


 流石マンガのキャラだね。男子も女子も顔面偏差値が高いわー。そんな中にも何食わぬ顔で入っていける俺氏、モブの面目躍如と言っても良いのでは?


 席が近くのモブ友を確保した俺は、「カイニス様と同じクラスかー」とか「勉強ついていけるかなー」とかなんとか言って時間を潰していた。


 担任が来てからは自己紹介して、クラス委員はカイニス様とその婚約者のシトリー様に決められと、どこかで見たような流れで進んでいた。


 次々に委員が決められていく中、俺は静かに喜びを噛み締めていた。


 マンガのキャラが動いて喋っている所を間近で見られるなんてヤッベェ!

 このクラス自体美男美女揃いで雰囲気が華やかだし、ちょっとした問題が起こりそうな浮ついた感じもするしでマジやばくね。

 学生生活が始まった感がある。


 ちなみに自己紹介で無事人見知りを爆発させた俺にいきなり遊びに行こうと言ってくるような奴はおらず、金欠だしこれ幸いと自宅警備員への道を模索し始めた。


 悪目立ちもせずひっそりと生きる、なんてモブっぽいんだ。



「おいサドリー、おまえ帰るの早すぎるぞ。」と翌日モブ友に言われた。解せぬ。






$$$






 日々の生活を送るのに懸命で気が付けばもう1年が経とうとしている。

 外に遊びに行く事もできない俺は図書館に入り浸るようになっていた。


 王都に来てモブ力がより一層強くなったのか、クラス内でも影の薄さは1、2を争う。


 そしてヒロイン、イーリス・ロジェの周りはいつも華やかで騒がしくなってきた。

 王子様とその婚約者、宰相の息子と騎士団長の娘。その他にも成金貴族やスラム上がりの乱暴者など濃いキャラがどんどん集まっていた。

 あっという間にトップカーストに上り詰めたなと内心驚いている。


 噂話に疎い事に定評のある俺にもイーリスの周りで何かが起こったということぐらいは伝わってくる。


 あれは春のこと。純血派による平民いびりの標的はヒロインであるイーリスに目掛けて行われていた。


 実際俺も見た事がある。3人に囲まれて壁に追い詰められている所に出会ってしまった。


 モブとしてそういう事には関わらないようにしようと慌てて引き返そうとしたんだが、その前にイーリスと目が合った。合ってしまったんだ。


 ヒロインってやばい。

 助けを求めるような目をされると助けたくなっちまう。きっと誰もがそう思ってしまうだろう。

 庇護欲をそそられたんだろうな。可哀想でめちゃくちゃ可愛かった。


 それでもなんとか目線を引き剥がすと、回れ右して逃げ出せた。あれは危なかったと今でも夢に見る。


 そんな事があってからしばらくすると平民いびりをしていた連中は退学したと噂になっていた。

 それで俺は原作通りに話が進んでいると判断した。


 風の噂で王子様がプールに現れたとか犯罪組織が壊滅したとか聞こえてきたが、多分ヒロイン達がモブには見えない場所で頑張ってるんだと思う。


 興味がない訳では無いんだけど、大人になると同じ話を何度も読む事って少なくなるよねって話。

 とりあえず物語に飢えた俺には図書館の方が面白かった。


 そんなクラスは元より学校中でも注目を集めているイーリスだが、本当に皆に好かれている。同じクラスにいるとよくわかるんだが、ありゃ生粋の人たらしだね。


 純血派の貴族を上回るほど光属性の魔力を持ちながらも謙虚に練習を怠らない姿勢が皆から好かれる要因の一つだと思われる。

 そしてひたすら親切。どんな相手にも親切丁寧で心の美しさが溢れている。この一年で何度「ええ子や〜」って思った事か。

 こんな吹けば飛ぶようなモブに構う必要は無いのに、トップカーストになっても俺たちみたいなのにだって優しいんだ。


「サドリー様、今日はどんな物語をお読みになっているのですか?」


 そうそうこんな風に声を掛けてくれることが多い。


「サドリー様、ちょっとこっち向いてくださいよ。ふうっ。」

「ひょわぁぁぁっ!」


 耳元に息を吹きかけられてようやく気が付いた。図書館の中でも隅の席に座っていたサドリーにイーリス・ロジェその人が話しかけてくれていた。


「あっ、ああ。なんだロジェさんか。」

「もう、私はちゃーんと声掛けましたからね。それで今日はどんな物語ですか?」

「き、今日はドラゴンに連れ攫われて幸せにさせられちゃう女の子の話だよ。」

「へー、凄い集中してましたけど面白いのですか?」

「まぁ個人的には好みではなかったけど、そこそこ楽しめ……ましたね。」


「ふふっ、サドリー様ってやっぱり面白い方ですね。」

「え、ええそうですか。……あー、それでロジェさんは読みたい本でもありましたか?それであれば探すの手伝いますが。」

「もう、いつも私の事はイーリスと呼んで欲しいと言ってますのに。まあ良いです。

 今日もクッキーを作りすぎたのでそのお裾分けに来たんです。いつもの事ですけど。」

「おおこれはこれは、いつもありがとうございます。」

「今日はこれだけ渡しに来ました。もう、次はちゃんとイーリスって呼んでくださいね。でないとクッキーはあげれませんから。」

「あははっ、美味しいクッキーが食べれないのは悲しいですね。あの善処するという方向で。」

「本当にお願いしますよ?ではまた明日です。」

「ええ、また明日。」


 そう言って彼女は去っていった。


 あーー緊張した。

 ただのクラスメイトモブにもこの対応ですよ。こんなん好かれるに決まってるじゃないですか。これがヒロインの風格かといつもひしひしと感じている。


 な、ええ子やろ?





$$$






 そうこうしているうちに3年が経とうとしている。もう卒業生なんだぁ。


 勉強は面倒だったし、テストも面倒だったけどこの3年間は良い思い出ばっかりだ。

 学校祭は周りに釣られてテンション上がったし、武術大会にも出たし旅行にも行ったし。2年の後半からはマンガのストーリーも分からないから純粋に楽しむ事ができた。


 後は卒業してから家に帰る準備を始めないとなぁと考えるだけのはずだったのにどうして!

 俺、卒業出来ないかもしれん。


 問題が発覚したのは昨日。休憩時間にモブ友と話していたときの事だ。


「なぁサドリー、お前卒業パーティーは誰と行くか決まってるのか?」


 最後のテストが終わってから1週間後、卒業式の後にパーティーがあるというのは把握していた。ヒロイン達の周りもいつもより騒がしくなっていたし。でもなぁ……。


「いや、もう面倒だし行くのやめようかなって。」

「はぁ⁉︎卒業しないつもりかよ!」

「えっ?どういう事?」


「卒業パーティーは全員参加だぜ。」


 聞けば卒業パーティーで社交会にデビューというか、出ていないとトボル魔法学校を卒業したと認められないらしい。卒業式にまで出たのに中退扱いになるそうだ。

 これは……行かなきゃマズい。


 配られていた資料をよく見てみると小さな文字でパーティーには全員参加って書いてありましたよクソが。

 その下に同学年である必要は無いと書いてあったのは救いだった。


 でも誘える人がいる訳ないんだよなぁ。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ!いやだああぁぁぁああ!」


 勧誘合戦はだいぶ前に始まっているから大体の人が相手を見つけているし。綺麗どころに人が集まっていてぎりぎりまでアピールをする人達は最悪兄弟とかに頼むよう手筈を整えているらしい。

 図書館の司書さんに頼もうかとも思ったけど、あの人美人だから結構人気あるんだよね。ちょっと前に男達が群がっていたのを見た覚えがある。


 適当に後輩でも見繕ってくる?関わりが皆無だから絶対無理だよ!


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ!も゛う゛無゛理゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛。」


「サドリー様、図書館で叫ぶのは良くないと思います。」


 後ろから耳触りの良い声が聞こえた。


「あ、ロジェさん。他に誰もいないし許して貰えないかな。」

「まぁ良いですけど。でもその様子だと卒業パーティーのお相手はまだ見つかっていないのですか?」

「そうだけど。まぁまだ時間あるし何とかなるよ。ちなみにロジェさんのお相手は誰になったの?」

「私もまだ決まってないんですよ。誘いたい人はいるんですけど、やっぱり誘って欲しいなって。」

「そうかぁ。それは大変だね。」

「そうですよ!本当に大変なんです!」


 大変という言葉に凄い食い付いたイーリスに思わず苦笑が漏れる。

 ヒロインってそんなに大変なのかと思ったが、卒業パーティーの前なんて物語的にはクライマックスも良い所だ。このパーティーの仕様からしてイーリスが誰かを選んでエンディングってのがありそうな気がする。


「私の事は良いとして、サドリー様。何とかなるって言ってましたけど、あてはあるんですか?」

「うん?まぁ最悪実家に頼めばパーティーに出てくれる子1人くらい連れてきてくれるよ。トボル魔法学校のパーティーなら流石に大丈夫だと思うけど。

 もし駄目だったら兄さんに頼んでお義姉さんを貸してもらうから。」

「そんなのダメ!」

「だ、駄目なの?」


 イーリスの思わぬ迫力にたじろぐサドリー。


「ええっと、どんな子にだって生活があるんですから勝手に選んで連れてくるなんて。しかもお義姉さんを貸してもらうなんて表現、お義姉様に失礼ですよ!」

「それは、まぁ……。」

「そもそも、誰かを誘ってみたりしたんですか?」

「いや、誰も。」

「それなら少しは自分で頑張ってみるべきだと思います!」

「でも誘える人がいないんじゃ頑張りようがないでしょう。この時期に相手が決まっていない人なんてそうそう見つかるとも思えないしさ。」

「まだフリーの人はいますよ。ほらちょっと探してみてください。」

「えぇ、そこら辺の後輩引っかけてこいって言ってます?無理だよそんなの。」

「そんな訳ないじゃないですか!もっと身近な所でですよ。」

「司書さんはもう相手いそうだけど。」

「もっと近くに、ほら分かりませんか?」


 彼女のジェスチャーを見てようやく言わんとする事が分かった。でもなぁ……。


「あの、無理だと分かっていて玉砕する趣味は無いんだけど。」

「いいじゃないですか、練習だと思えば。チャレンジしないとどうにもなりませんよ。」

「はぁ、実績作りにはなるかぁ。」


 一つ咳払いをすると、サドリーは片膝を付いて手を差し出す。この時ばかりは貴族としての所作が身に付いている事に感謝していた。


「イーリス、私と卒業パーティーに行って頂けませんか?」

「へ?は、はいよろこんで!」

「よーしこれで……え?」


 予想外の言葉に立ち上がりかけた体勢で固まる。


「あれ、急に耳が悪くなったのかな?返事が良く聞こえなかったんだけど。今なんて言った?」

「もう一回!もう一回最初からやり直して確かめてみましょう!」

「いやだから今……。」

「ほらもう一回お願いします!」

「ああもう仕方ないな。」


 彼女の笑顔が眩し過ぎて心臓が早鐘のように打ち続ける。


「イーリス。「はいイーリスです!」……その、私と卒業パーティーに行って頂けませんか?」


「はい、喜んで。」


イーリスは満面の笑みを浮かべてそう言うとサドリーの手を取った。


「……ええ?夢でも見てるのかな。」


 そう口には出したがドキドキとうるさい胸の鼓動と手に伝わってくる柔らかく温かい感覚が夢じゃないのだと激しく主張してくる。


「サドリー様は夢見てくださっていたんですか?」

「あっ、いや違う違う。現実味がないなーって事だからね。本当に。」

「ふーん、そうですか。でも一緒にパーティーに行くのですから、よろしくお願いしますね。」

「えっ本当に本当?冗談じゃなくて?」

「失礼な、私がそんな事をするように見えているんですか。」

「ごめんごめん。でもやっぱり信じられなくて。ロジェさんって選ぶがわでしょ?」


 この世界がマンガの中だと知っている身からすれば全く出番がなかったモブがヒロインと卒業パーティーに出るなんて、そんなバカな話があって良いはずがないと思う。

 どんな形であれ卒業パーティーの相方を選んで一区切り付くだろう?それを選ばないだなんて引き伸ばしかよって思わない人がいるだろうか。


「何ですか選ぶ側って。もしかして私が相手では不服でしたでしょうか?」

「いやいや、嫌じゃない嫌じゃない。ただ相手のいない可哀想な俺みたいなのに付き合わせるのが申し訳ないだけで。」

「何ですかそれ。」

「影の薄い貧乏貴族が相手では不釣り合いって事。」


 ヒロイン様の相手をモブがする訳にはいかないでしょう?

 俺なんかのためにイーリスのチャンスを潰してしまうのは本意ではない。


「だから周りを見て俺よりも条件が……」

「そういう所!他人からの視線に無頓着なのは長所でもありますけど、人の話を聞かずに自分を卑下する所は大っ嫌いです。」

「そ、そうか。まぁ良いんじゃない、ロジェさんがちゃんと相手を選べば良いんだし。わざわざ俺に付き合ってくれなくても良いんだから。」


 顔だけは微笑んでいられたが、何故だか胸の奥がツキツキと痛んだ。


「ほらまた言った。……じゃなくてですね、影の薄い貧乏貴族が相手では不釣り合いでしたっけ。私は平民ですけどそこの所どうお考えなのですか?」

「トボル魔法学校の卒業生なら身分なんて大差ない。それに実際は平民出身の方が歓迎されるし。

 そもそも生きている次元が違うんだよ。本来は俺と一緒にいるべきじゃない。」

「サドリー様が何を考えているのか分かりません。私には一緒にいる資格がないのですか?」


 どんなに悲しそうな顔をされたって言える訳無いじゃないか。あなたはヒロインだからモブには構わないでくださいなんて。


「違う違う。問題があるのは俺の方だから。なんて言うか……そう、気持ちの問題。」


 イーリスが手を握り締めながら深呼吸していた。もしかして俺、殴られる?


「正直に答えてください。私の事、好きですか?嫌いですか?」

「えっ?そりゃどっちかって言われたら、……その、好き……だけど。」

「では、私とパーティーに行けると嬉しいですか?嬉しくないですか?」

「それは……、嬉しいに決まってる。」

「なら良いではないですか!一緒にパーティーに行くのは決定事項です。覚悟しておいてくださいね!」


 そう強引に言い残すとイーリスは反論を許さぬようすぐに去っていった。

 ……小さくスキップしているように見えたのは目の錯覚に違いない。


「ああどうしよう。持ってくれよ俺の心臓。」


 深刻な声を出してみたが口元がニヤけるのは抑えられなかった。





$$$




 翌日モブ友に「俺って影薄いよな?」と聞いてみたら


「いや、頑なにロジェさんと呼び続ける図書館の主って割と有名だぞ。」と言われた。解せぬ。










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