2人のマリアとクーデター26~族長の最後~
「母さん!!服を」
完全回復し、全裸状態と気付いた聖は母親に服を要求した。
「はいはい。これで良いでしょう?」
パチンと指を鳴らすと、ビキニ姿になった。これは神界でモデルになった時の姿だった。
「これは辞めろ!!そして、直ぐに鼻血を流すな!!」
「だって、この格好は私のお気に入りですからね」
鼻血を拭きながら王妃は言う。
「母さんのお気に入りは良いから!普通の服をくれ!!」
「仕方ないわね!これで良いでしょう?」
再度、パチンと指を鳴らして、ビキニから普通服になる。
「初めからこうしてくれ!!」
と、聖は言うが、王妃は「チッ」と舌打ちをして残念がっている。
「お姉ちゃんのママって面白い人だね?」
「そうかな?滅茶苦茶で破天荒だけどね?で、母さん達の方は終わったの?」
「「「「「あっ!?」」」」」
「まだだったわ!」
「まだ元凶が残っていたわ!」
リリカ達が慌てていた。
「どうするの?」
聖は呆れかえっていたが、それは仕方ない事だ。リリカ達にとっては族長よりも聖達の方が優先度が高いからだ。
一方、その元凶は神聖王を祀る社にいた。
「おのれ!あの小娘を介して、アトランティス神を召喚をするつもりじゃったが………こうなれば仕方ない!」
族長は禁忌とされている道具類を用いて、神聖王を召喚をしようとした。
そして、族長は、道具類を所定の位置に置き呪を唱えて、神聖王を召喚に成功した。
と、思っている。
実際にはそうではない。妻に呼ばれたから神聖王が自ら来たのだった。またまた出て来たのがここだっただけの話だった。
しかし、そうとは知らない族長は、神聖王を召喚したのは自分の力だと信じていた。
そして、族長は、『悪しき輩達が居る。その者共を討ち果たして欲しい』と言った。
神聖王は、それを無視して外に出る。そして、妻と娘の所に行く。
族長は、呆然としていたが、我に返り、神聖王の後を慌ててついて行く。
族長は王妃達を見つけ。
「フハハハッ!アトランティス神様が復活した!これでお前達は終わりだ!!」
と、1人で勝手に盛り上がっていた。
「アイツは誰だ?」
「私の父上です………」
「えっ?あれがリクの父親?そして、元凶?」
「はい………」
リクは恥ずかしいのか顔を真っ赤にして聖に言った。
「アトランティス神様。どうぞ」
神聖王に対し頭を下げたが、神聖王はまた無視して。
「よー。母さんに聖」
手を上げて、近寄った。
「来たわね」
「ああ」
「結局、父さんも呼んだか………ま、そんな予感はしたがな?神界以来だね?」
「そうだな?こんなに早くお前に再会するとは俺も思ってもいなかったぞ」
「俺もだよ」
「こ、これは…………い、一体?」
族長は理解が出来ない。アトランティス神が親しげに自分の敵と話しているからだ。それに。
「ま、マリア女王様もどうして敵と仲良くしているのだ!?マリア女王様!こちらに!!」
「あんた誰よ?」
マリアは、族長を知らないから無理もない。
「えっ?」
またもや呆然としたが、呆けている場合ではなかった。
「どうやら、小娘は、違う人格になったようだな!まあ良い!!アトランティス神様が復活したからには、こんな小娘は不要だ!アトランティス神様!この者共に神罰を!!」
「さっきからアイツは何を言っているだ?」
「どうやら、父さんの降臨を自分の力と勘違いしているようよ?」
「なるほどな?オイ!そこの人間!お前はなにが望みだ!」
神聖王が族長に話しかける。
「はい、ワシの望みは、アトランティス帝国を作り、この世界を支配する事です!!アトランティス神様のお力をもってすればたやすいかと!!」
族長は満面の笑みで答えた。
「ち、父上………そんな事を言ったら……」
「もうこいつは手遅れだ!諦めろ!」
ファルコンが言った。
「ほう?この世界の支配か?」
神聖王の言葉に怒気が含まれていたが、族長はそうとは知らずに。
「はい!そして、ワシがアトランティス帝国の初代帝国の皇帝に!アトランティス神様を讃えお祀り上げますと誓います」
そう言って、族長は頭を下げる。下げた顔は笑いが止まらない。妄想では既に自分は帝国の皇帝に成っているからだ。アトランティス神がその妄想を現実の世界に実現してくれるだろうと、ニヤニヤとしていた。
「嘗て俺はな。この世界の世界神をやっていた事があってな」
「はあ?」
族長は神聖王の言葉が理解出来ないでいる。
「この世界を支配をする事は貴様なんぞ出来ない!貴様は生きたまま地獄に送ってやる!!」
「え」
族長は消えた。
おそらく、本人は何が起きたのか、訳も分かってもいないだろう。族長は、生きたまま地獄に送られた。
コレが、身の丈に合わない野望を持った男の哀れな最後だった。




