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2人のマリアとクーデター22

「あっああっ…………!!」


 族長はファルコンの魔力は感じる事は出来ないが、ファルコンの凄まじい闘気を感じてあの当時の恐怖を思い出したようだ。


「フン。こんな情けない男をアトランティス王は族長としておいていたとはな?そして、アトランティス王と王妃を、俺達、王国軍が惨殺しただとう?ふざけるなよ!!アトランティス王はな!!俺と1対1で戦い!そして、俺に勝ったんだぞ!!しかし、俺との戦いでアトランティス王は闘気術の使いすぎによって力尽きたんだ!俺は運良く生き残っただけだ!!」


『で、では?王妃様は?王妃様はどうして?』


「王妃はあの戦いを終わらす為に犠牲になった。もっと言えば、王が俺のトドメを刺すときに、自ら、割って入ってきたんだ!王も俺も王妃が居ることは知らなかった………」


『なっ!?王も王妃もお前達に惨殺されたのではなかったのか?』


「そうだ!俺達が無闇やたらと惨殺する訳が無いだろうが!ならば聞くが。お前達は、今、何故生き残っているんだ!!そこのクズが言うとおりならば、今頃、お前達も生き残ってはいない!俺達が王や王妃を惨殺するような残忍なら、民達も1人残らず皆殺しにするからだ!!当時、生き残った奴らなら解るだろう!!当時の俺達は、お前達との戦争だったにも関わらず、極力、お前達を殺していない筈だ!!」


『あっ!?』


 戦士達の殺気が消え失せた。


『族長!!あの男が言っている事は本当なのか!!』


『族長!!貴方は、アトランティス王が死ぬ間際に一族の事を頼まれたと言っていたが!!あの男とは全く話が違っているぞ!!』


 戦士達が族長に詰め寄る。王妃の殺気は、王妃達に敵意を見せない限り、対象者にはならない。だからこそ、戦士達は自由になれた。


「ああ、全く違っているぞ!!2人を看取ったのは俺だけだ。このカスはどこにも居なかったぞ!」


「………」


 リクは黙って俯いている。


「フン。生前アトランティス王に直接言われたんだ。そのワシが改変して大袈裟に言って何が悪い!!」


『なっ!?』


『ならば、族長、貴方がアトランティス王様の死亡に関して言っていた事は全て』


「ワシの作り話だ!」


 族長は自らの捏造を認めた。


 その言葉に戦士達は殺気立つ。


「いいか!よく聞け馬鹿者共!ワシがそうでも言わないと、先の戦で亡くなった、アトランティス王様と王妃様が浮かばれないのだ。そして、王国の野蛮人共を絶対の悪に印象付けないと、ワシらの生きる術が無くなっしまう!!分かったか!この馬鹿者共め!!この殺気をワシではなく、野蛮人共に向けて、マリア女王様に忠義立てをするのだ!!」


「貴様!どこまで腐っているんだ!許さん!その根性を叩き直してやる!!」


 ファルコンの怒りが頂点に達した。そして、戦士達も。


『族長、貴方はなんて事をしたんだ!あんたがこれが真実だと言うから。我々はあんたを信じていたが、あの時のその言葉もあの涙も全くのデタラメ!!それを悪気もなく今の今まで堂々と!!』


『しかも、アトランティス王様は死ぬ間際に自分の子供をそこの敵兵に預けて、我々にもう二度と戦をさせないようにしようと王の最後の努力を無にするなんて信じられない!!あんたはそれでも、アトランティス王様の側近だったのか!!』


『我らはもうあんたに着いていけない!そんなに戦をしたかったら、あんた1人で勝手にやれば良い!!』


『我々は一からやり直す。あんた抜きでな!!時間が掛かるかもしれないが、王国の人達にも詫びを入れ、やり直す!!我々だけでは既に生きていけない!!』


 戦士達は、その場を去って行く。


「馬鹿者共!戻れ!マリア女王様がどうなってもいいのか!!マリア女王様はお前達を許さんぞ!!」


『そのマリア女王様もあんたに呆れているさ』


 1人の戦士が振り向いて言う。


「なっ!?く、くそが!!」


 族長がどこかに逃げ出した。1人ではどうにもならない。


 族長が逃げ出したあと、リクが。


「やはり、父上の話は全て嘘だったのですね。私達が間違っていたのですね。ファルコンさん、リリカさん、ガイさん、ごめんなさい。私達は愚かにもあなた達の大事な娘マリアさんを勝手に攫ってしまいました」


 リクは、ファルコン達に向かって深々と頭を下げた。


「昨日、その言葉が聞きたかったわ。あなた達は最初から選択肢を間違っていたのだから」


「ああ、そうだな。何もかもが間違っていたのだからな」


「全くだぜ!オレの妹を返して貰うからな!!」


「はい!」


 リクは返事をする。

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