2人のマリアとクーデター18
~アトランティス。族長の家~
「クソがー!ワシはここの族長だぞ!」
バクバクムシャムシャ。
族長は、今のアトランティスでは貴重な焼いた肉の塊をかぶり付いていた。
「あの小娘めが!ワシを嘗め腐りおって!ここではワシの方が偉いんだぞ!!」
イヤ、誰がどう見ても、王族の方が偉いだろう?
自分の立場をわきまえていない族長だった。
「族長!!」
1人の部下が戸越に話し掛ける。
「どうした!!」
族長は食べながら言う。
「はっ!怪しい奴らを発見しました。7人です!!」
部下は気にすることもなく報告をした。
「フン!おおかたマリア女王様の奪還だろうが、そうは行かん!さっさと捕縛して、マリア女王様の御前で処刑をしろ!」
「はっ!しかし、見張りからはリク様も居るとの報告がありましたが?」
「なに?我が息子が生きているのか?あの野蛮人共め!何を考えている?」
「わ、分かりません………」
「まあ良い!我が息子に聴けば良いことだ。しっかりと生け捕りにするんだぞ!!ワシはこ……ゴボン!マリア女王様に報告しに行く。いけ!」
「はっ!」
部下は去っていった。
「フン!アトランティス神が降臨したら、小娘も理由を付けて処刑にしてやるわい!!このアトランティスはワシのモノだからな!!」
~マリア・アトランティスの屋敷~
「うーん?これはどうやって着るの?」
マリアは見られない服と睨めっこしていた。
「仕方ないわね?ねー!誰いない?」
「はい、只今。……………失礼しますマリア女王様」
ラキが入って来た。
「ああ、ラキ。これはどうやって着るの?」
「はい、私がお手伝いいたしますよ」
「そう。じゃあ、頼むわ」
「はい、私はマリア女王様の着付けをするのなんて光栄です」
「そう………」
「出来ました。マリア女王様。お似合いですよ」
「なあに?この服は?上が白で、下が赤って?」
マリアは着た服を見て言う。
ここアトランティスは鏡はない。
「この衣装は神子と言って、代々、アトランティスの女王様の正式な衣装です」
「へぇー?神子ね?」
マリアは再度衣装を見回す。
「(中々、良い素材で出来ているわね?)」
そこに族長がノックもせずに戸を開けてやってくる。
「マリア女王様。大変です!!賊が我が領内に侵入しましたが、安心して下さい!我が精鋭達が賊を全滅させますので!!オイ!貴様も最前線で戦ってマリア女王様に忠義を見せろ!!ワシはマリア女王様をお守りする!!」
最低限のマナーでさえ知らない族長はラキにそう言い放ったが。
「ラキはここに居て。そして、貴方が最前線で戦いなさい!!これは私の命令」
マリアがそう言い放った。
「(全く!ふざけるなって!どうして、ラキみたいなガリガリの女性を最前線で戦わせないといけないの?戦うのなら、肌艶が良いお前でしょう!!)」
族長の振る舞いにマリアも怒っていた。しかし、族長は引かない。
「な、何故です?ワシもマリア女王様のお近くで!!」
「(ハァー)貴方は族長。族長が最前線に出れば、味方の士気も上がる。更に、敵の前で私の名前を貴方が言えば味方は爆上がり(これで引っかかったらバカよね?)」
しかし、族長は単細胞だった。自分自身の利益しか考えていなかった。
「な、なるほど!分かりました!直ちに出陣をします!」
族長は挨拶もせずに部屋を出て行った。
ラキは族長の行動を見てあ然としていた。
「アッハハハ!バカな奴!最前線に出れば、敵に標的にされる事を判っていないのかしら?あの族長が今回の頭でしょう?」
「えっ?で、では?族長は……?」
「大丈夫でしょう?腐っても族長は族長でしょう。簡単にはやられないわ。それよりも、そこに隠れている子供達、出て来なさい」
「えっ?あっ!?あなた達」
子供達5人が物陰から出て来た。
「ラキお姉ちゃん。ごめんなさい」
「ボクたちどうしても女王様を見たかったの」
「ラキお姉ちゃん、お腹空いたよー。何かない?」
「が、我慢しなさい。あなた達は先ほど食べたでしょう?」
「あれじゃあ足りない」
「もっと食べたい」
「女王様?何かないの?」
「あなた達!失礼でしょう?マリア女王様すみません」
ラキが謝る。
「良いわ。しかし、あなた達は食料が不足しているのね?」
「はい、私達は満足に食べられないのです…………私達、一般の大人は1日一食で、子供達は、二食です………私が今日、食べられるのは、夜です………」
「そんなに酷かったの?(私が食べたご飯も本当は誰かが食べていたものだったのかしら?)」
「はい………」
ラキは俯いていた。
「女王様。何か食べ物ないの?」
「私達、お腹が空いたよー」
「ご、ごめんなさい……私も何も食べ物を持っていないのよ……」
そこに。
「わっ!いてて………全く、母さんは乱暴過ぎる!」
神聖王妃の転移魔法で出て来た聖。
「だ、誰?」
「ん?初めましてかな?私は聖。マリア・マーカーの姉をやっている」
「あ、貴女が?(この女強いわ)」
「や、野蛮人!!マリア女王様!!皆!!離れて!!イヤー!!」
ラキは闘気術を使い、聖に攻撃を仕掛けるが、聖は片手で、ラキの攻撃を楽々と捌いた。
「なっ!?そ、そんなバカな……」
「貴女、闘気術の無駄使いよ。辞めなさい!死にたくないでしょう?」
「くっ!」
「ラキ!辞めなさい!どうやってもこの人には勝てませんよ」
「で、でも、そうしたら、私達はこの野蛮人に殺されてしまいますよ!!」
「大丈夫です。この人に殺気はありません。それに、私達を殺すなら、一瞬のウチに殺していますよ。その位の力量を持っています」
「お腹空いたよー」
「ご飯食べたいー」
子供達が騒ぐ。
「あ、あなた達!少し空気を読みなさい(グゥー)あっ!////」
「なるほどね?お腹が空いていたのか?なら、はい、どうぞ」
聖は空間から食べ物と飲み物を出した。
「わーっ!!」
「お、美味しそう」
「食べていいの?」
「ま、待ちなさい!野蛮人の食事は私達よりも酷いと言われているわ!」
「あっそう?せっかく、出したのに要らないと?なら、片付けるよ」
「待って!子供達にラキ!この食事を食べなさい!これは私の命令」
「はい!」
「いただきまーす」
子供達は食べ出した。
「美味しい!」
「こんな食事は初めて!」
子供達が美味しそうに食べていた。
「さあ、ラキも食べなさい。貴女が一番食べないとね?」
「は、はい」
ラキも食べ出した。
「お礼は言っておくわ。ありがとう」
「良いのよ。それよりも、マリアは食べないの?」
「私は…………」




