2人のマリアとクーデター17
~アトランティスの村~
「うーん………」
~マリアの夢の中~
「マリア!マリア!起きて!!」
「うーん………お姉ちゃん………スクランブルエッグを作って………私、お腹空いたよ~………うーん」
「ちょっと、夢の中でも寝ぼけないでよ」
マリアがうっすらと目を開ける。
「えっ…………私がいるわ………うん、コレは夢だわ。おやすみなさい」
「ちょっと!寝ないで!時間がないのよ!」
「なによ~うるさいな~貴女は誰よ?」
「私は、マリア。マリア・アトランティスよ。私は貴女の体の中にずっと居たのよ」
「えっ?私の体の中に?どうして?」
「貴女は覚えていないでしょうが、魔力の暴走をして、体が崩壊する直前だったのよ。それで、私が助けたのよ」
「えっ?魔力の暴走?ウソだわ。私、魔力量は多くないわ」
「それはそうよ。私が抑えていたからね?本来の魔力はとんでもない魔力を秘めているのよ」
「ウソだわ。私は、お姉ちゃんのような魔力量を持っていないわよ」
「お姉ちゃん?なに?さっきからお姉ちゃんって?」
「私の大好きなお姉ちゃんよ」
「………私には分からないわ。今までずっと貴女の中で眠りに就いていたから」
「私の中で眠っていた?」
「そうよ。私は貴女の魔力を抑えつつ二度と目覚めることがない眠りに就いていたのよ。ところが、特殊な道具で私は目覚めてしまったわ。そして、貴女の体を乗っ取って、このアトランティスに来たのよ」
「えっ?私の体を乗っ取った?…………あっ!?私、昨日の記憶がないわ………?」
「でしょうね?貴女の体を使って、貴女のお友達を吹き飛ばしてあげたわ。そして、このアトランティスに着いた途端に気を失ったのよ。おそらく、久しぶりに体を動かしたせいね?」
「友達………まさか、エリサを吹き飛ばしたの!?どうしてよ!エリサは私の親友なのよ!!」
「私を止めたから、邪魔だったから吹き飛ばしたのよ。まあ、死にはしないでしょうね」
「そんなことで?貴女はこれからどうするつもりよ!!」
「どうするつもりって、決まっているわ。今日から私が貴女になるのよ!体を完全に乗っ取って、魔力も解放するわ。で、邪魔な貴女は私の代わりに永遠に眠りに就いて欲しいのよ」
マリア・アトランティスの表情が悪に変わる。
「じょ、冗談じゃないわよ。この体は私の体よ!!貴女なんかにあげないわ!!」
マリア・マーカーは、マリア・アトランティスを睨みつけるが。
「クスクス。無理よ。今、この体の主導権は私にあるのよ?言ったでしょう?時間がないと?」
「ま、まさか?」
マリア・マーカーは自分自身の体の異変に気付く。
「そうよ。貴女はこれから永遠の眠りに就くのよ。最後に貴女と話せて良かったわ。じゃあね~♪」
マリア・マーカーの体がだんだんと透けていく。
「そ、そんな………い、イヤよ!!お姉ちゃん!!パパー!ママー!ついでに兄さん助けてー!!」
マリア・マーカーが消えた。
「兄さんがついで?クスクス。サヨウナラ、マリア・マーカー。今日から私がマリア・マーカーよ!だから、貴女は安心して眠りに就いていてね?」
マリア・アトランティスが目覚める。
「おおっ!!マリア女王様。おはようございます」
マリア・アトランティスが目覚めると族長が声を掛け、覗き込んだ。
「(この人の顔は起きがけには悪いわ)……………お腹………空いた………」
「はっ!直ぐに朝食の用意をします。オイ!」
「はっ!」
控えていた人物が出て行った。
「……………」
マリア・アトランティスは上半身を起こしてぼーっとしていた。
「マリア女王様。ご気分はいかがお過ごしでしょうか?」
族長は滅茶苦茶な言葉を言う。
「(ブルブル)あんた、さっきからうるさいわよ。さっさと出て行って」
「は、はっ!分かりました。では、朝食が出来次第、ワシ自らが持って来ましょう」
「貴方以外の人に持って寄越して!さっさと下がって!」
「(ムカッ)はっ!失礼した」
マリアは族長を下がらせた。
「(なによ?ご気分はいかがお過ごしでしょうか?って?なにその滅茶苦茶な言葉は?言うんだったら、ご気分はいかがですか?でしょう?ずっと眠っていた私でも分かるわ。あの人は敬語関係が苦手ね?それに、あの人が私を攫って来るように命じたのね?ハァー。私は利用されるのが嫌だったから、マリアに逃げ込んだのに。そのマリアは私と同じ顔だったわ…………私は悪役を演じないとね)」
コンコン。
「失礼します。マリア女王様。お食事でございます」
女性は食事を机に置いた。そして、下がる。
「そう。ありがとう」
マリアはその食事を食べたが。
「(ま、不味いわ!全く、味気なさすぎだわ……(チラッ)……でも、これても、精一杯のおもてなしでしょうね?初めての食べ物がこれか…………)…………」
マリアは我慢して食べた。
「………ごちそうさま」
「あっ。はい」
女性は食事を片付けに入る。
「貴女、名はなんて言うの?」
「は、はい………ラキと言います」
ラキは食器を片付けるのを辞めた。
ラキはマリアに声を掛けられて緊張していた。
「そう。じゃあ、ラキ。私はどうして連れて来られたの?」
「それは、貴女様が私達の女王様だからです」
「………私は貴女達の女王ではないのよ。私はもういない存在なのよ」
「え?そんな事はありません。現に私と話しているではないですか?私達は貴女様のご命令でしたら、どのようなご命令でも従います」
ラキはそう言って、土下座をした。
「………そう。私が貴女に死ねと命令しても、それを実行するの?」
「はい。それが女王様の真のご命令とならば、私は喜んで、この命を貴女様に捧げます」
「……下らないわ。もういいわ下がって」
「はい」
ラキは食器を片付け下がった。




