緊急会議 3
兵士の報告を受け、会議は続行する。
「陛下御一家の暗殺未遂事件に監獄島での事件。コレらは偶然の一致とは思えません」
「ウム。監獄島もナチ帝国の仕業と見て間違えないだろうな」
「だとしたら、本命は監獄島の襲撃で、陛下御一家の襲撃はカモフラージュ?」
「もしそうだとしたら、ナチ帝国め嘗めたことをしてくれる。陛下御一家をダシにするとは万死に値する行為だ!!」
サンダーが激高する。
「もし言った事がそうだとしたら、ナチ帝国側は、陛下とその一家を暗殺が出来ればラッキー程度の作戦だったかもな?それにしても、こちら側にしたら、十二分な嫌がらせ行為だ」
サトルが口を挟む。
「確かにね。ま、コレから戦争を仕掛けようと画策そしている国だ。相手国に嫌がらせをするのは極当たり前だよ」
「そうだな。全てはこちら側から戦争を起こさせるように仕掛けて、他の国々に自分達の戦争を正当化をさせる行為だな」
「普通ならそうだよ。だが、ナチ帝国は軍事国だ。どの国々はナチ帝国から先に手を出しているだな。と、解っている筈だ。だから、最初に言ったように単なる嫌がらせだよ」
「そうですね。そんな理由を正当化するのは無理がありますよ」
冢宰も同意した。
「そうだな。戦争に向けて姉貴達が結界を張るんだナチ帝国の軍隊は易々と王国には侵入は出来ないだろう?」
「まあね」
サトルは聖の事を姉貴と言った。その事情を知らない人達が驚いていた。
「フレイム卿が姉?貴殿はフレイム卿の弟?」
水の当主、ウォータが質問をした。
「ああ、そうだよ。双子の弟だ」
「しかし、貴方は大道芸人ではなかったのか?以前、俺は、貴方の芸を見た事があるが?」
今度は水帝が訊ねた。
「本業は大道芸人さ。大道芸を見せながら各地を旅をしているよ。しかしな、ヒジリ・フレイム・ヤマセは俺の姉だよ」
「その通りだ。余もフレイムの弟サトルとの面識をすませてある」
国王がそう言えば、全員が全てに納得した。何故、部外者の男がこの会議室に居るのか?何故、陛下が会議が始まる前にその男に一切声を掛けなく話題にも触れなかったのか?が、たった今氷解した。
「そうでしたか」
「では?貴殿の身分は貴族?」
土の貴族、ソイルが訊ねた。
「イヤ、俺は貴族ではないよ。確かに姉貴は貴族だが、俺はただの旅芸人の一般人さ。俺自身貴族に成った認識はないし、陛下も俺を貴族とは認めてない筈だ」
「ウム。その通りだ。火の貴族と認めているのは、ヒジリ・フレイム・ヤマセのみだ。弟のサトルは火の貴族の一員とは認めておらぬし、貴族の身分を与えてもおらぬが、この者はフレイムの身内には変わりはない」
そう言った。しかし、サトルは国王から身分保証を公に得られた事に成る。身分は一般王国民だが、火の貴族、ヒジリ・フレイム・ヤマセの身内。もしサトルに何かしらの事件に巻き込まれた場合は貴族階級と同じ扱いになる。
「では、会議を再開致します。ナチ帝国が攻め込む可能性が高い地域はフレイム卿が治める火の領と次にソイル卿が治める土の領です。両名の当主は領の守りを固めるようにして下さい。そして、他の領の当主も同様でございます。ナチ帝国がどの領から攻め込むのかはまだ情報不足で分かりませんが、全領土での戦争になると私は思っております」
「ナチ帝国の軍勢を分散させて各地に軍勢を充てると考えているのか?」
サンダーが訊ねた。
「ハイ、ここに居られます神様や天使様のご意見を聴いて私はそう思いました。悪魔もしくは魔族が軍に居た場合は、味方の人間を喰ってしまうと、思いますので、人間と悪魔、魔族で軍を分散させて、各地へ派遣するのではないかと」
「なるほどな。悪魔、魔族が人間のいう事を聴くはずはなさそうだな?寧ろ、煩ければ殺すだろうな」
「ええ。ですから、分散させて侵攻する確率が高いかと。しかし、我々の軍はフレイム卿らが張る結界の内側でナチ帝国の軍兵を倒せば良いのです。わざわざ、結界の外で迎え撃つ事も結界の破壊工作を眺めている事もありますまい」
「確かにな。遠くでの攻撃なら魔導部隊や弓兵が活躍が出来そうだな?」
「もしくはワザと結界の破壊工作をさせて、疲弊した所を討つ手もあるな。ナチ帝国の軍兵共は自分達が勝つ為ならどんな卑怯な手でも平気で使うからな。ナチ帝国の戦い方はいつも穢すぎる」
と、結界を前提に作戦を立てていた。
「各当主は、領民達の生命を第一とし、敵国ナチ帝国との戦争に備えよ!!」
『はっ!!』
「そして、帝は各当主の元で戦って欲しい。分散は各自の判断に任せる」
国王はそう言って、議会を解散する。
各当主達は急いで領へ戻り戦争の準備に取り掛かったのだった。




