緊急会議 2
会議は進み。ナチ帝国の対応策の話になる。
「陛下と御一家の暗殺を見れば、ナチ帝国は我が王国を本格的に攻め込むつもりです」
「そうだな。我が王国に戦争を仕掛けて来るな」
国王が言うと、場の空気がガラリと変わった。
「戦争ですか。人間との戦争は我々は参戦はしませんが、おそらく、ナチ帝国には人外が居ますからそうは言ってはいられませんね」
「ウム。闘鬼とか言う輩じゃな。アヤツは悪魔もしくは魔族じゃ。ナチ帝国の王族が悪魔と契約をしていれば、其奴だけでは済まされぬな」
「なっ!?」
事情を知らない人達が絶句をしていた。
「で、では、ナチ帝国はその闘鬼とか言う者を筆頭に、人外達を使ってこの王国に攻め込むと!?」
冢宰が声を震わせて言う。
「ウム。妾がその王ならばそうするぞえ。なんの為に悪魔と契約を結んだのかは不明じゃが、人間よりも悪魔もしくは魔族の方が戦闘力は圧倒的に上じゃ。使わぬ手はないじゃろうな」
「そうなれば、我々に勝ち目が無いぞ⋯⋯⋯」
「普通ならね」
聖が口を挟む。
「フレイム卿?打開策はあるのですか?」
「打開策はあるよ。まず王国全体に結界を張り、人外共や悪意を持つ人間達の侵入を防ぐのと、攻め込まれると思われる場所に砦を造り、防御を固めて、こちらも援軍を頼むしかないわ」
「え、援軍ですか?」
「誰に援軍を?」
「そりゃね〜」
聖はガブリエルを見る。
「神聖王様ですか。まあ、もし、この戦争に悪魔や魔族達が出てくれば、神聖王様も放置は出来ないでしょうね。それにこの戦争は人外対人外の戦争になるやかもしれませんね」
ガブリエルは聖の思いを汲み取りそう言った。
「そうじゃのう。悪魔・魔族共がこの戦争に参戦すれば、最早、国同士の戦争ではないわい。神魔戦争じゃな」
ヒルドも同意をする。
『⋯⋯⋯⋯⋯』
全員が黙ってしまった。しばらくして、席の近い者同士が話し合う。
「ナチ帝国はそこまでして我が王国に戦争を仕掛けてくるのか⋯⋯⋯」
「とても正気の沙汰とは思えないが⋯⋯⋯」
「しかし、その最悪を想定して対応策を練れなければなるまい。ナチ帝国との戦争は確実に起こるのだからな」
「その通りだ」
「ナチ帝国は、一線を踏み外して攻め込むとわね」
「過去にもナチ帝国との戦争は起こったが、悪魔、魔族を使って来る事はなかったが⋯⋯」
「ウム。皇帝が代替わりした所為かのう?先代よりも酷い治世と聞くが。フレイム卿や」
「なんでしょう?」
「王国全体に結界を張ると言うたが、どうやって王国全体の結界を張るつもりじゃ?」
「それは、ここに居る天使と神様で共同で結界を張りますよ」
「そうか⋯⋯」
全帝は心配そうな目線をルエルに送る。
「大丈夫ですよベルモット。私達はただ結界を張るだけですから」
「ウム⋯⋯」
「と言うか、ルエルさん?皆の前で全帝の正体をバラさないの」
聖は注意をした。
「あっ!?ご、ごめんなさい⋯⋯つい」
「まあ、ワシの正体は関係者なら誰でも判っておるわい」
全帝が開き直りともとれる発言を言うと、ほとんどの者達が苦笑いをしていた。誰もが最初から学園長のベルモットと判っていた。
「全帝殿?この天使様とのご関係は?」
冢宰が質問をした。
「この者はワシの元妻じゃよ」
「えっ!?つ、妻!?この天使様がですか?」
「そうじゃ。と言うても、元妻の転生体がこの天使ルエルじゃよ」
もうルエルとの関係を隠しても仕方ないと思ったのか、ベルモットはそう言った。
「て、転生体!?この天使様が!?全帝殿の、イヤ、ベルモット殿の御夫人」
知らない人達が驚いている。
「そうじゃよ。元妻は、事故で亡くなってしもうたが、こうして、天使に成って偶然にも再会したのじゃよ」
ベルモットは、ルエルを今度は優しい瞳で見つめていた。
「そんな事が⋯⋯」
「では、人間だった頃を覚えておられるのですか?」
「いいえ、私は覚えてはいません。天使に転生すると、人間だった頃の記憶は無くなってしまいますが、ベルモットは人間だった頃の私を覚えてくれていましたから」
ルエルの顔が赤くなっていた。
「そうでしたか」
「はい」
そこに、兵士が慌ただしく室内に飛び込んで来た。
「会議中大変申し訳ございませんが、一大事でございます!!先程、監獄島への魔法陣が使用が出来なくなり、非常用の魔法陣で交代要員達と共に監獄島へ行った所、看守の兵士達全員殺されておりました。そして、通常の魔法陣も何者かによって使用不可になっておりました。更に収監している囚人達全員が監獄島から姿を消し、現在囚人達の行方を捜索中ですが、囚人達の行方は掴めておりません」
と、兵士がそう報告をする。
『っ!?』
国王一家暗殺未遂事件と監獄島の事件があまりにもタイミングを良すぎる為、この場に居た全員が絶句をした。




