武道大会 14 〜本戦を混乱させる者達〜
「すまない!!」
水帝は戻った早々にメンバーに謝罪をした。
「あの闘いを見れば仕方ないわ」
「ああ。水帝の奥義をあっさりと斬り裂いて見せてしまったからな。ギブアップ宣言をするのも致し方ない」
「⋯⋯⋯」
炎帝と聖拳帝に慰められるも水帝は言葉が出なかった。
「水帝。私も負けた身で偉そうな事は言えませんが、創帝が何時も言っていましたが、私も水帝も身体を鍛えた方が良さそうです。最後はやはりスタミナが物をいいますそのスタミナないと、勝てるモノも勝てません」
「そうだな。今までの鍛え方が甘かった。今までは魔力量にモノを言わせて他者を圧倒が出来ていたが、魔力量だけでは勇者にはどうにもならなかった⋯⋯」
「私も同じですわ。勇者相手に魔力を使い果たしてもと闘いましたが⋯⋯⋯」
「今までの相手が弱かったから私達は昨年まで優勝が出来たのよ。今年は優勝どころか1回戦突破も危うい」
「⋯⋯⋯」
光帝と水帝は黙ってしまった。
「負けてしまったのは受け入れないとな」
「⋯⋯⋯」
その間、雷帝はずっと黙ったままだった。
「雷帝?」
炎帝がそんな雷帝の事を気に掛け話し掛けた。
「ん?ああ。すまん。立ち眩みがいきなり来てな⋯⋯⋯」
雷帝の言葉に覇気が感じられなかった。
「ちょっと?大丈夫なの?次は貴方の出番よ?まだ体調が思わしくないなら一回飛ばして聖拳帝にするけど?」
当初の作戦は頓挫している為、中堅に聖拳帝が出ても構わないので炎帝はそう言った。
「イヤ、大丈夫だ。予定通りに俺が行く」
「俺に代わった方が良いだろう?見てみろ」
「ん!?」
武舞台では、次鋒の舞が武舞台の四角に避雷針を建てていた。
「なっ!?」
雷帝が驚きの声を上げた。
「おそらく雷避けの柱だわね⋯⋯⋯」
「向こうも雷帝が出て来ると分かってて、早々に設置をしたのね」
「というか、審判団に説教されているな。創帝が共に審判団に謝っているぞ」
「創帝が実質のチームリーダーだからね。共に謝るのが普通ね」
「そうだわね⋯⋯⋯しかしねぇ?」
雷帝を除く、帝チームが舞の行動に呆れていた。
「とにかく、俺が⋯⋯出る!!」
「そう。判ったわ」
炎帝は雷帝を送り出したが、雷帝の身体の異変に気付いてはいなかった。
イヤ、雷帝本人も自身の身体の異変に気付いていなかった。そして、武舞台に立つ。
舞は既に中央にいた。雷帝が中央に着いた。この時、雷帝の表情が異常な形相をしていたが、仮面を付けているので、誰にも解らない。武舞台の中央に移動中、雷帝の身体に沸々と黒いモノが纏わり付き身体を支配されていた。
審判が始めの号令を掛けようとするが、審判の急に気を失い倒れそうになる。
「えっ!?ちょっと!?」
舞が慌てて、審判の身体を支えようとするが。
【グサッ!!】
雷帝が舞の腹を刺し、電撃を流し込んだ。
「えっ!?イヤーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!」
舞は悲鳴を上げて審判諸共倒れ込んだ。
「どいつもこいつもよぉ俺を馬鹿にしやがって!!うおおおおおおおおぉぉぉぉ!!!!!!!!」
雷帝が雄叫びを上げた。
観客達から一斉に悲鳴が上がり、会場は一瞬でパニック状態に。
この行為に聖が素早く動く。
「雷帝!!テメェ!!俺の妹に何しているんだ!!!!」
聖は我を忘れて雷帝を殴り倒し、雷帝は一発でノックアウトになる。
「舞!!しっかりしろ!!今、回復魔法を掛けてやるからな!!」
聖は雷帝の結末を見ずに舞を抱きかかえて回復魔法を施した。舞の傷口はみるみるのうちに塞がっていくと、舞の呼気が安定する。舞の状態を見てホッとする。
「姉貴!!舞!!」
サトルも遅れて武舞台にやって来た。そして、両チームと審判団全員が武舞台に集まって来た。観客もパニック状態の人達が多くが未だにザワザワしていた。警備の兵士達が観客達を落ち着かせるように静めている。
こうなれば、試合どころではなかった。
●○●
「お頭!!今だ!!」
「ああ。俺達は今から王族の一族を皆殺しするぞ!!テメェら行くぞ!!」
『おおっ!!』
この事態を引き起こした犯人達は1回戦を棄権したマボロシチームだった。
マボロシチームの正体は元ガギグゲ盗賊団で、ナチ帝国の闘鬼とその部下達によって壊滅させられた。生き残ったのは、頭、旧グランパニ公国に召喚された天川竜雅と幹部の3人のみだった。その5人は闘鬼に命を握られていた。そして、その5人にファーネリア王族の皆殺しをするように命令を下した。命令に逆らえばその命が無いが、王族殺しを行えば死罪となる。どっちにしろ、元盗賊団の命は最早無いに等しい。
盗賊団は死なば諸共で、王族達を道連れをと企てていた。




